源氏物語の女7 浮舟 | 閑話休題

源氏物語の女7 浮舟

 「源氏物語」の最終章「橋姫」から「夢の浮橋」の十章は、「宇治十帖」と呼ばれ、舞台は京から宇治に移り、哀愁に満ちた巻末を盛り上げている。 光源氏が52歳で薨ぜられた後、後の舞台に華々しく登場するのは二世たちである。

    光源氏と正妻の葵の上の男   夕霧

    帝と明石中宮の男         匂宮

    柏木と女三宮の男         

 

 夕霧は幼馴染で幼心で愛し合った、左大臣ーもとの頭中将ーの娘、雲居雁との結婚が、父の抵抗もあり長引いたが、やうやく結婚出来て、7人もの子供を儲けたが、嫉妬深く、ついに実家に帰ってしまい、夕霧も女の実家に通うが、冷遇される始末。だが光源氏の遺した六条院の繁栄を、主人公として支える。

 

 一方、は14歳の時に出生の秘密に苦慮する。ある時薫は、先々帝桐壺院八の宮が、京を捨てて宇治に隠棲し、仏道に専念されているのを聞き、その世話をしている宇治山の阿闍梨ーあじゃりーを介して、薫は宇治の八の宮を訪ねる。八の宮も薫に好感を抱き、二人の娘ー大君・中君ーの将来を託した後、暫くして薨去されてしまう。薫は葬儀一式を取り仕切る。

 

 薫は特に大君に惹かれて、八の宮の一周忌に結婚を申し込むが、大君は中君が良いと奨めて、自分は結婚しないと宣言。その後匂宮にこの宇治の話をして宇治に案内し、中君を引き合わせると二人は結ばれ、のち中君を京の匂宮の二条院に移らせる。

 他方大君は病が嵩じ、遂に他界してしまう。薫は大君に先立たれ、中君も匂宮のものになったことを嘆く。それを愚痴っていると、八の宮の侍女弁尼から、亡くなった北の方の妹と八の宮との間に浮舟という娘がいることを教えられる。そして薫のことを浮舟に伝える。

 ところが早くも匂宮が浮舟のことを聞き伝えて、宇治に出向き、浮舟を抱いて舟に乗り、対岸で一夜を明かす。浮舟は薫とばかり思っていたのが、匂宮だったのに驚き、薫も浮舟を責める。わが身を果敢なんだ浮船は宇治川に入水する。宇治では大騒ぎの上葬儀を行い、四十九日の法要まで行う。

 

 ところが浮舟は少し下流の岸辺に流されて来たが、這い上がって失神状態になって樹の下で体を横たえている時、横川僧都と妹の小野の尼らに助けられて、京の北山の小野に伴われ、看護の末やっと意識を取り戻すが、素性は決して表わさない。そして僧都に懇願して尼になる。

薫は浮舟が生存していたことを知る。そして僧都の仲介で薫の使者、小君が訪ねるが、話もせず薫への返事も拒否する。

 

 今と違って京から宇治への道は、今も深草という地名が遺るように草深い山越えの難所で、普通は逢坂の関を越えて、山科から宇治に出る道が普通であったが、一刻も早く宇治に着きたい薫や匂宮は、この深草の道を選んだ。

 

 薫は自から遠い宇治まで通ったが、愛した大君から拒否され、紹介された中宮も匂宮に横取りされ、さらに最後に期待した浮舟も匂宮に奪い取られて、薫は恋の敗北者となる。結局薫の優柔不断の性格が、後手後手に回ってしまったのを、薫は最後に後悔する。