源氏物語の女6  女三宮 | 閑話休題

源氏物語の女6  女三宮

 女三宮は朱雀院の皇女。帝はこの姫の婿選びに苦慮し、最後光源氏を選び六条院に降下、輿入れとなる。その三日後安堵した帝は退位し、出家されてしまわれる。源氏40歳、女三宮は20~21歳。紫の上とは身分の差があり、女三宮は正妻の地位に就く。

 

 初夜から三日間、女三宮に通った光源氏は、雛人形のような幼さに失望する。

 

   姫君のいとうつくしげにて、若く何心なき御ありさまなり。さばかりのほどになりたる人は、いとかくはおわせぬものを。いと御衣が

   ちに、身もなく、あえかなり

  女三宮はかわいらしい様子で、あどけなく無心なご様子で、この年ごろの女は、本当にこんなに幼稚ではないのに。まるでお召し物に

  埋まって、衣の中にお身体もないかと思われるほど、ほっそりしておられる。

 

 この女三宮を恋い慕う男がいた。かの内大臣ー昔の頭中将ーの長男、柏木で、降下される前から思い続けていたが、帝の御意が得られなかった。ある蹴鞠の会が六条院で催された時、風に吹かれて女三宮の住まわれている御簾が開き、可愛がっておられた猫が外に出て来た一瞬、柏木は女三宮を垣間見る。それ以来柏木は会う機会を狙う。そして女三宮の乳母の子、小侍従を介して女三宮に会い契る。その時女三宮は懐妊してしまう。生まれたのは男の子である。

 姫宮の懐妊を不審に思った光源氏は、女三宮の部屋で柏木の手紙を発見。懐妊した子の相手を柏木と知る。光源氏は女三宮との立場を考えて表沙汰にしないが、柏木は光源氏に疑われたのを煩悶し続けて病床に臥し、遂に若死にしてしまう。

  柏木の死を聞いた女三宮は泣く。柏木との逢瀬は周辺の女どもが逢引の機会を作ったもので、女三宮はむしろ被害者であったが、光源氏の正妻としての自覚の無さ、幼稚さが、事件が起こる背景にあったと言えよう。

 

 光源氏との関係も冷え込んで行き、女三宮は出家を願う。心配した父帝が下山して来て、父帝の手で得度する。この出家も六条御息所の死霊のせいだったと言う。源氏は別居のため元の邸三条宮を整備し、女三宮を移す。この宮で女三宮は念仏三昧、仏道に専念する。

この間に光源氏は他界する。のち三条宮は出火で焼け、再び六条邸に戻り、念仏の傍ら薫の成長を見守りながら暮らす。

 宮中の奥で可愛がられて育ち、年頃になっても世間知らずで幼さが抜けやらず、波乱の生涯に生きた女宮であった。