私の愛した詩人 4 上田敏 明治07~大正05
『海潮音』――海外象徴詩の訳詩集
落葉――ポールウェルレェヌ 山のあなた――カールブッセ 春の朝――ロバート・ブラウニング
秋の日の 山のあなたの空遠く 時は春
ヴィオロンの 「幸」住むと人のいふ 日は朝、
ためいきの 噫、われひとゝ尋ねゆきて 朝は七時
身にしみて 涙さしぐみ、かへり来ぬ。 片岡に露みちて
ひたぶるに 山のあなたになお遠く 揚げ雲雀なのりいで
うらがなし 「幸」住むと人のいふ 蝸牛枝に這ひ
神、空に知ろしめす
鐘のおとに すべて世は事もなし
胸ふたぎ
色かえて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもいでや
げにわれは
うらぶれて
こゝかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。
『海潮音』は明治38年に出版された。海外の象徴詩の訳詩集であるが、日本語訳が素晴らしく、新鮮で、強烈な印象を多くの人々に
与え、日本での象徴詩の夜明けを迎えた。