安倍の施政方針演説を読む(2) | 長谷川哲の言いたい放題

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日々思うがことを思うがままに書き連ねていくつもりです。

※参照安倍の施政方針演説を読む(1)

以下、適宜、安倍の施政方針演説より引用

安倍は、ノーベル賞受賞者を持ちだし、こう言う。

 《「未来は『予言』できない。しかし、『創る』ことはできる。」
 ノーベル賞物理学者、デニス・ガボールの言葉です。》

そして、アベノミクスを自画自賛する。

 《五年前、日本には、根拠なき「未来の予言」があふれていました。「人口が減少する日本は、もう成長できない」、「日本は、黄昏(たそがれ)を迎えている」。不安を煽る悲観論が蔓延していました。
 まさにデフレマインド、「諦め」という名の「壁」が立ちはだかり、政権交代後も、「アベノミクスで成長なんかできない」。私たちの経済政策には、批判ばかりでありました。
 しかし、日本はまだまだ成長できる。その「未来を創る」ため、安倍内閣は、この四年間、三本の矢を放ち、「壁」への挑戦を続けてきました。》そして安倍はこう続ける。

 《その結果、名目GDPは四十四兆円増加。九%成長しました。中小・小規模事業者の倒産は二十六年ぶりの低水準となり、政権交代前と比べ三割減らすことに成功しました。》更に《長らく言葉すら忘れられていた「ベースアップ」が三年連続で実現》し、《史上初めて、四十七全ての都道府県で有効求人倍率が一倍を超》え、《全国津々浦々で、確実に「経済の好循環」が生まれています。》

果たして本当にそうか?倒産が減ったのは、もはや中小零細企業が倒産し尽し、倒産ではなく「廃業」という形で事業清算しているからではないのか?ベアが実現し、有効求人倍率が1を超えても、デパートや小売の不振が続いている現実は、「経済の好循環」が確実に「生まれていない」という何よりの証明ではないだろうか?だいたい、「有効求人倍率が1を超えた」ということは、単に求職者より求人数が多いというだけで、求職者が希望に見合う条件で就職できるということを意味しない。「職さえ選ばなきゃ仕事はある」ってだけだ。求職者の能力や適性は一切考慮されていない。

たとえば………だ。自動車運転免許を必要とする求人は、それがどんなに多くても、自動車運転免許を持たない求職者には、なんの意味もない。

 《格差を示す指標である相対的貧困率が足元で減少しています。特に子どもの相対的貧困率は二%減少し、七・九%。十五年前の調査開始以来一貫して増加していましたが、安倍内閣の下、初めて減少に転じました。》

こども食堂の増加、生活保護世帯の増加という現実を知っていれば、こんな厚顔無恥な言葉は出てこないハズだ。

 《「出来ない」と思われていたことが次々と実現できた。かつての悲観論は完全に間違っていた。そのことを、私たち自公政権は証明しました。
 この「経済の好循環」を更に前に進めていく。今後も、安定した政治基盤の下、力を合わせ、私たちの前に立ちはだかる「壁」を、次々と打ち破っていこうではありませんか。》

既に見てきたように、安倍が成果として縷縷述べたことはあまりに現実と乖離している。国民が「打ち破る」のは、安倍内閣そのものではないだろうか?

安倍は続いて中小零細企業対策について述べる。

 《景気回復の風を、更に、全国津々浦々、中小・小規模事業者の皆さんにお届けする。》というが、そもそも「景気回復の風」など、全く吹いていない。続いて安倍は、《五十年ぶりに、下請代金の支払いについて通達を見直しました。これまで下請事業者の資金繰りを苦しめてきた手形払いの慣行を断ち切り、現金払いを原則とします。近年の下請けいじめの実態を踏まえ、下請法の運用基準を十三年ぶりに抜本改定しました。今後、厳格に運用し、下請取引の条件改善を進めます。》正直、共産党がずいぶん前からこの下請けいじめを国会で追及してきたのを知っている私は、「遅過ぎるわ」と思う。今更恩着せがましく言うことかいな。

あとは税額控除やら設備投資減税など、旧態依然とした中小零細対策。これで実効性があるとは到底思えない。

安倍は地方創生について岡山の味野商店街を引き合いに出し、次のように語る。

 《一日平均、二十人。人影が消え、シャッター通りとなった岡山の味野(あじの)商店街は、その「壁」に挑戦しました。
 地場の繊維産業を核に、商店街、自治体、商工会議所が一体で、「児島ジーンズストリート」を立ち上げました。三十店を超えるジーンズ店が軒を並べ、ジーンズ柄で構内がラッピングされた駅からは、ジーンズバスやジーンズタクシーが走ります。
 まさに「ジーンズの聖地」。今や、年間十五万人を超える観光客が集まる商店街へ生まれ変わりました。評判は海外にも広がり、アジアからの外国人観光客も増えています。
 地方には、それぞれの魅力、観光資源、ふるさと名物があります。それを最大限活かすことで、過疎化という「壁」も必ずや打ち破ることができるはずです。
 自分たちの未来を、自らの創意工夫と努力で切り拓く。地方の意欲的なチャレンジを、自由度の高い「地方創生交付金」によって、後押しします。
 地方の発意による、地方のための分権改革を進めます。空き家や遊休地の活用に関する制限を緩和し、自治体による有効利用を可能とします。
 故郷(ふるさと)への情熱を持って、地方創生にチャレンジする。そうした地方の皆さんを、安倍内閣は、全力で応援します。》

要するに、「未来は自らの創意工夫と努力で切り拓け。国は知らん。金だけは出す。」ということだわな。竹下内閣時代の「ふるさと創生」とそっくりたし、戦時標語の「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」とか言うのを思い出してしまう。だいたい地域の活性化が観光客頼みでよいのだろうか?
近年の「爆買い」インバウンドブームが下火になりつつある現在、地元経済を温める施策こそが必要ではないだろうか?

安倍は、観光立国について、次のように述べている。

 《一千万人の「壁」。政権交代前、外国人観光客は、年間八百万人余りで頭打ちとなっていました。
 安倍内閣は、その「壁」を、僅か一年で突破しました。四年連続で過去最高を更新し、昨年は、三倍の二千四百万人を超えました。
 日本を訪れる外国クルーズ船は、僅か三年で四倍に増加。秋田港で竿燈(かんとう)まつり、青森港でねぶた祭、徳島小松島港で阿波おどり、各地自慢の祭りを巡る外国のクルーズツアーが企画されるなど、地方に大きなチャンスが生まれています。
 民間資金を活用し、国際クルーズ拠点の整備を加速します。港湾法を改正し、投資を行う事業者に、岸壁の優先使用などを認める新しい仕組みを創設します。》

安倍、地理を知らないのかな?

日本には、長野、岐阜、山梨、埼玉、栃木、群馬、滋賀といった、海のない県が少なからずある。この施策では、それらの県は安倍の観光立国政策から埒外に置かれてしまうのだが、それで良いのか?

それに、クルーズ船を受け入れるとなると、港湾だけでなく、税関や入管なんかも必要になるんだが、そんなことする財源はあるのだろうか?結局のところ、大型クルーズ船など年数回しか入港しない、巨大なゴーストタウンみたいなインフラが増えるだけではなかろうか?

 《沖縄はアジアとの架け橋。我が国の観光や物流のゲートウェイです。新石垣空港では、昨年、香港からの定期便の運航が始まり、外国人観光客の増加に沸いています。機材の大型化に対応するための施設整備を支援します。》というなら、なおのこと「基地のない沖縄」の実現は、焦眉の課題だと思うのだが、安倍は普天間の辺野古移設を強行しているのだから、ふざけている。

 《全国の地方空港で、国際定期便の就航を支援するため、着陸料の割引、入国管理等のインフラ整備を行います。羽田、成田両空港の二〇二〇年四万回の容量拡大に向け、羽田空港では新しい国際線ターミナルビルの建設に着手します。》つまり、大型公共事業を大盤振る舞いするわけねorz

 《いわゆる「民泊」の成長を促すため、規制を改革します。衛生管理などを条件に、旅館業法の適用を除外することで、民泊サービスの拡大を図ります。》
今でさえ「民泊」を巡って、色々な問題が出てきているのに、なぜ、「民泊」を推進するのか?結局オリンピック特需だけではホテルも増床に二の足を踏むから、「民泊」に肩代わりさせよって話にしか聞こえんなあ。

 《あらゆる政策を総動員して、次なる四千万人の高みを目指し、観光立国を推し進めてまいります。》やめときな。人口の半数近い観光客なんか迎えたら、既存のインフラがパンクして市民生活、国民の暮らしが破壊されると思うぞ。

続いて農政について安倍は述べている。

 《地方経済の核である農業では、高齢化という「壁」が立ちはだかってきました。平均年齢は六十六歳を超えています。
 しかし、攻めの農政の下、四十代以下の新規就農者は二年連続で増加し、足元では、統計開始以来最多の二万三千人を超えました。生産農業所得も、直近で年間三兆三千億円、過去十一年で最も高い水準まで伸びています。》

過去11年間に限って、都合の良い数字を抜き出したニオイがプンプンするな。

 《更なる弾みをつけるため、八本に及ぶ農政改革関連法案を、今国会に提出し、改革を一気に加速します。
 農業版の「競争力強化法」を制定します。肥料や飼料を一円でも安く仕入れ、農産物を一円でも高く買ってもらう。そうした農家の皆さんの努力を後押しするため、生産資材や流通の分野で、事業再編、新規参入を促します。委託販売から買取販売への転換など、農家のための全農改革を進めます。数値目標の達成状況を始め、その進捗をしっかりと管理してまいります。》

安い肥料や飼料に安全性などの問題はないのか?間に関わる流通業者などの事業や暮らしを圧迫したりはしないのだろうか?

 《農政改革を同時並行で一気呵(か)成に進め、若者が農林水産業に自分たちの夢や未来を託することができる「農政新時代」を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。》

一気呵成にやって、失敗したら取り返しがつかないぞ。一方で農業を根底から破壊するTPPを推し進めながら、いったい何がしたいのか、ホンマにわからない。「言葉遊び」は、いい加減にしてほしい。

 《安倍内閣は、三本目の矢を、次々と打ち続けます。》

次々打ち続けるなら「三本目」とは言わんわなあ、普通は。

 《ビッグデータを活用し、世界に先駆けた、新しい創薬や治療法の開発を加速します。》

患者の個人情報を勝手に利用すんなよ。

 《人工知能を活用した自動運転。その未来に向かって、本年、各地で実証実験が計画されています。国家戦略特区などを活用して、自動運転の早期実用化に向けた民間の挑戦を後押しします。》

やめてくれ。悪魔の技術やわ。システムが暴走したら「走る棺桶」と化すがな。

 《民間の視点に立った行政改革も進めます。長年手つかずであった各種の政府統計について、一体的かつ抜本的な改革を行います。》

個人情報を民間管理にしたら、情報ダダ漏れになるおそれがあるやん。
 
その後も、安倍の迷言は続く。

    《金型工場の二代目、渡邉光貴(こうき)さんが、強い決意を私に語ってくれました。
 「南相馬が『ロボットの町』と言われるよう、若い力で頑張る。」》

その前に除染だわな。

 《原発事故により大きな被害を受けた浜通り地域は、今、世界最先端の技術が生まれる場所になろうとしています。
 福島復興特措法を改正し、イノベーション・コースト構想を推し進めます。官民合同チームの体制を強化し、生業(なりわい)の復興を加速します。》

だから、除染しろってばさ。

 《今年度中に、帰還困難区域を除き、除染が完了します。廃炉、賠償等を安定的に実施することと併せ、二〇二〇年には身近な場所から仮置き場をなくせるよう、中間貯蔵施設の建設を急ぎます。帰還困難区域でも、復興拠点を設け、五年を目途に避難指示解除を目指し、国の負担により除染やインフラ整備を一体的に進めます。
 東北三県では、来年春までに、九十五%を超える災害公営住宅が完成し、高台移転も九割で工事が完了する見込みです。農業、水産業、観光業など、生業(なりわい)の復興を力強く支援します。》

なんの具体性もない空文にしか読めないのだがな。

 《熊本地震以来通行止めとなっていた、俵山トンネルを含む熊本高森線が先月開通し、日本が誇る観光地・阿蘇へのアクセスが大きく改善しました。今後、熊本空港ターミナルビルの再建、更には「復興のシンボル」である熊本城天守閣の早期復旧を、国として全力で支援してまいります。》

非現住建築物の熊本城なんか、どうでもよろしい。今を生きる市民の暮らしが最優先ではないのか?

長くなるので、また、ここで一旦切ります。

安倍の施政方針演説を読む(3)へ続く。