安倍の施政方針演説を読む(3) | 長谷川哲の言いたい放題

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日々思うがことを思うがままに書き連ねていくつもりです。


※参照安倍の施政方針演説を読む(1)
※※参照安倍の施政方針演説を読む(2)



以下、適宜、安倍の施政方針演説 より引用。  



安倍は、一億総活躍の国創りの総論部分でこう述べる。

 《障害や難病のある方も、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる社会を創る。
 一億総活躍の「未来」を切り拓くことができれば、少子高齢化という課題も必ずや克服できるはずです。
 しかし、家庭環境や事情は、人それぞれ異なります。何かをやりたいと願っても、画一的な労働制度、保育や介護との両立など様々な「壁」が立ちはだかります。こうした「壁」を一つひとつ取り除く。これが、一億総活躍の国創りであります。》

そもそも、総活躍しなきゃならんのかい?精神障害に続いて、左足を切断した私は、肉体的にも障害者となったが、たとえば歩道の段差など、身近な小さな壁を取り除いてもらわなければ、活躍はおろか、日常生活を普通に過ごすことさえ厳しいのですがねえ。それに、お年寄りとか、もう日本の復興や発展に粉骨砕身頑張ってきたんだから、これ以上活躍なんざ期待せずに、のんびりさせてあげてはいかがだろうか?死ぬまで「活躍」を強制するなんざ、おぞましいぞ。(と言いつつ、日本共産党の不破哲三さんには、健康に留意しながら、無理のない範囲で、いつまでも頑張ってほしいなあと思っているがな。)

働き方改革について、種々の改善策を述べたあと、安倍はこう結論づける。
 
 《抽象的なスローガンを叫ぶだけでは、世の中は変わりません。重要なことは、何が不合理な待遇差なのか、時間外労働の限度は何時間なのか、具体的に定めることです。言葉だけのパフォーマンスではなく、しっかりと結果を生み出す働き方改革を、皆さん、共に、進めていこうではありませんか。》

えっと、かつては自民党も含め、最賃1000円以上という具体的な数字を公約に掲げて選挙をたたかったにも関わらず、未だ達成されてないのはなぜですか?これほど、数値として具体化されたものはないのですがねえ。(^^ゞ

安倍が「天に唾する愚か者」に見えるのは私だけでしょうかねえ。

女性の活躍について、安倍は、《リカレント教育を受け、再就職を果たし》、《役職にも就き、仕事に大変やりがいを感じている》方の言葉をひいたあと、《子育てや介護など多様な経験を持つ人たちの存在は、企業にとって大きなメリットを生み出すはず》と、企業メリットの視点から女性の活躍を論じるという、ある意味自民党という政党の特質にそった発言をしています。自民党は国民の味方じゃなくて企業の味方やというこっちゃな。

 《「百三万円の壁」を打ち破ります。パートで働く皆さんが、就業調整を意識せずに働くことができるよう、配偶者特別控除の収入制限を大幅に引き上げます。》

子育ての保障は?「就業調整を意識せずに働くことができる」には、当然、長時間労働になるわけで、家事や子育ての負担が圧倒的に女性にかかっている現実を前に、絵空事にしか見えないのだがな。

 《出産などを機に離職した皆さんの再就職、学び直しへの支援を抜本的に拡充します。復職に積極的な企業を支援する助成金を創設します。雇用保険法を改正し、教育訓練給付の給付率、上限額を引き上げます。子どもを託児所に預けながら職業訓練が受けられる、また、土日・夜間にも必要な講座を受講できるなど、きめ細かく、再就職支援の充実を図ります。》あくまで企業目線で、安価な労働力確保のためにする施策に私には見える

 安倍は「保育や介護と、仕事の両立を図る。」として、育休給付の支給期間の延長やら、子育て世帯に対する住宅ローン金利を引き下げ、三世代の近居や同居の支援やらを提言。そして、《「待機児童ゼロ」、「介護離職ゼロ」。その大きな目標に向かって、保育、介護の受け皿整備を加速します。国家戦略特区で実施してきた都市公園に保育園や介護施設の建設を認める規制緩和を全国展開します。》と述べているが、要するに規制緩和の中には基準緩和が含まれ、実態に合わない大規模保育園への集約と詰め込みをするというふうにしか読めん。

安倍は介護職や保育士の待遇改善を自画自賛したあと、こう述べる。
 
   《これにより、政権交代後、合計で十%の改善が実現いたします。他方で、あの三年三か月、保育士の方々の処遇は、改善するどころか、引き下げられていた。重要なことは、言葉を重ねることではありません。責任を持って財源を確保し、結果を出すことであります。安倍内閣は、言葉ではなく結果で、国民の負託に応えてまいります。》

民主党政権を、所信表明演説でdisる資格があるのかねえ。1970年代には、保育士の待遇改善どころか、保育園の新設・増設にすら反対してきたのが自民党であり、自民党の政治家なんだが。

 《最低賃金が大きく上昇を続ける中、失業給付について、若い世代への支給期間を延長するなど改善を実施します。》

「最低賃金が大きく上昇」?最低賃金1000円まで、遅々として進まないレベルなんだが、それのどこが「大きく上昇」なんだろう?

 《来年度予算では、政権交代前と比べ、国の税収は十五兆円増加し、新規の公債発行額は十兆円減らすことができました。こうしたアベノミクスの果実も活かし、「成長と分配の好循環」を創り上げてまいります。》

それなのに、社会保障予算は削り倒しているのは納得いかん。しかも、社会保障予算の不足を理由に消費税をあげているのに。

 《医療保険で、高齢者の皆さんが現役世代より優遇される特例に関し、一定の所得がある方については見直しを実施します。
 累次の改革が実を結び、かつて毎年一兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びは、今年度予算に続き来年度予算においても、五千億円以下に抑えることができました。引き続き、経済再生と財政再建、社会保障改革の三つを同時に実現しながら、一億総活躍の未来を切り拓いてまいります。》

イミフ。もはや理解不能。なら、「今後絶対消費税あげんなよ!」と言うてやる。

 《実践的な職業教育を行う専門職大学を創設します。選択肢を広げることで、これまでの単線的、画一的な教育制度を変革します。》それ、専門学校でよくね?

 《「邑(むら)に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん」
 明治日本が、学制を定め、国民教育の理想を掲げたのは、今から百四十年余り前のことでした。》

問題はその中身で、忠君愛国・富国強兵を思想面で作り上げるものだったのだから、現在の教育のあり方を述べるのに、不適切極まりない序論である。

 《高校生への奨学給付金を更に拡充します。本年春から、その成績にかかわらず、必要とする全ての学生が、無利子の奨学金を受けられるようにします。返還についても卒業後の所得に応じて変える制度を導入することで、負担を軽減します。》

いやいや。高校教育を準義務教育とし、入学を希望する学生は全入。その在学中の費用を憲法の義務教育規定を準用し、無償とすることか、憲法25条2項を踏まえれば当然ではないか?

 《更に、返還不要、給付型の奨学金制度を、新しく創設いたします。本年から、児童養護施設や里親の下で育った子どもたちなど、経済的に特に厳しい学生を対象に、先行的にスタートします。来年以降、一学年二万人規模で、月二万円から四万円の奨学金を給付します。
 幼児教育についても、所得の低い世帯では、第三子以降に加え、第二子も無償とするなど、無償化の範囲を更に拡大します。》

 この程度のことで、「全ての子どもたちが、家庭の経済事情にかかわらず、未来に希望を持ち、それぞれの夢に向かって頑張ることができる。」日本の未来を切り拓いていけるとは、私は全く思えないのだが。

 《子や孫のため、未来を拓く。(中略)未来は変えられる。全ては、私たちの行動にかかっています。》と、安倍は言うが、これまで見てきたように、安倍の方法論や方向性には、明るい未来が全く見えてこない。

 《ただ批判に明け暮れたり、言論の府である国会の中でプラカードを掲げても、何も生まれません。意見の違いはあっても、真摯かつ建設的な議論をたたかわせ、結果を出していこうではありませんか。》

安倍が「全知全能の神」なら、いざ知らず、過ちをおかす人なのですから、安倍が謙虚に他者の批判に耳を傾けることなしに、「真摯かつ建設的な議論」をたたかわせることなど不可能です。実際、安倍のほうこそ、質問内容とは無関係な内容を長々答弁し、質問者に対して真摯さの欠片もない非建設的な対応をしているではありませんか!

反対の言論を封殺するような議会運営に対し、プラカードなどで平和的に抗議するするのは当然です。それとも御党の先輩、故・浜田幸一氏のように、力づくで議会運営を妨害せよとでも言うのでしょうか?

 《自らの未来を、自らの手で切り拓く。その気概が、今こそ、求められています。
 憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。》

安倍は、現行憲法のどこがダメなのかを一切指摘せずに、「憲法審査会」つまり「改憲」を持ち出している。それはおかしいだろう。現行憲法の維持こそが、子や孫、未来を生きる世代のためにもっとも大切で、未来を切り拓く道具ではなかろうか?

 《未来を拓く。これは、国民の負託を受け、この議場にいる、全ての国会議員の責任であります。》

行政府の長である安倍が、立法府の役割を云々するのは、三権分立の否定で、現行憲法下では許されない暴言だと思う。

 《世界の真ん中で輝く日本を、一億総活躍の日本を、そして子どもたちの誰もが夢に向かって頑張ることができる、そういう日本の未来を、共に、ここから、切り拓いていこうではありませんか。》

アジアの片隅で、倹しく暮らす日本、活躍したくない人は活躍しなくていい、こどもたちに無理やり夢を植え付け遮二無二頑張ることを強制しない………そういう日本の未来を、安倍自公政権を倒して実現したいと、私は思うなあ。

こんなに、自己中で自己満で中身のない施政方針演説も、近年になく珍しい。

(おしまい)