
スズが小屋から出ると眩しい太陽の光が目に入った。
「今日もいい天気だね」
「あぁ、暑いから畑仕事もこまめに休憩を取るんだよ。じゃあ、またね」
トウマは出入り口の前で小さく手を振った。
スズも手を振って、振り返り小走りで家の方に向かったが、すぐに立ち止まり肩を落とした。
「どうしたの?まだ調子悪い?」
「あの・・・もう少しで降臨日だよね?」
スズは、うつむいたまま言い出し難そうに言った。
「そうだね、毎年この時期にはこの村に遺族の人たちが集まってくる。去年の降臨日から一年以上、いつ降臨日がきてもおかしくない」
トウマはスズの気持ちを汲んで、真剣な表情で答えた。
「お父さん来るかな?」
スズは自分の一番聞きたかった事を、トウマの目を見て聞いた。
「ギンジさんか・・・本当は来ないほうがいいんだよ?」
スズの質問には答えることが出来なかった。
実際に、誰が降臨し、誰が降臨しないのか。
また、それはいつになるのか・・・トウマ自身にもはっきりとは判らなかった。
だから、スズには判っている事だけを伝えた。
「そうだよね!ハハッ」
そう言うと、スズは走って家に帰って行った。
それを見届けてトウマは遠くの見張り台の方を見つめた。
見張り台ではこの時期、霊が降魔として現れる場所。
即ち、人々にとっては聖地であり、トウマのような破魔人にとっては戦場となる‘降臨場’と呼ばれる場所を村の住民が交代で見張っていた。