破魔人 2 | 森ソース

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絵がからっきし下手な男が小説を書いてみました。

基本的には、短編が多くなると思います。


森ソース-hamabito01

スズが小屋から出ると眩しい太陽の光が目に入った。


「今日もいい天気だね」


「あぁ、暑いから畑仕事もこまめに休憩を取るんだよ。じゃあ、またね」


トウマは出入り口の前で小さく手を振った。


スズも手を振って、振り返り小走りで家の方に向かったが、すぐに立ち止まり肩を落とした。


「どうしたの?まだ調子悪い?」


「あの・・・もう少しで降臨日だよね?」


スズは、うつむいたまま言い出し難そうに言った。


「そうだね、毎年この時期にはこの村に遺族の人たちが集まってくる。去年の降臨日から一年以上、いつ降臨日がきてもおかしくない」


トウマはスズの気持ちを汲んで、真剣な表情で答えた。


「お父さん来るかな?」


スズは自分の一番聞きたかった事を、トウマの目を見て聞いた。


「ギンジさんか・・・本当は来ないほうがいいんだよ?」


スズの質問には答えることが出来なかった。


実際に、誰が降臨し、誰が降臨しないのか。


また、それはいつになるのか・・・トウマ自身にもはっきりとは判らなかった。


だから、スズには判っている事だけを伝えた。


「そうだよね!ハハッ」


そう言うと、スズは走って家に帰って行った。


それを見届けてトウマは遠くの見張り台の方を見つめた。


見張り台ではこの時期、霊が降魔として現れる場所。


即ち、人々にとっては聖地であり、トウマのような破魔人にとっては戦場となる‘降臨場’と呼ばれる場所を村の住民が交代で見張っていた。