そしてうちと彼女の母のなう | Moratoriumer´

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今日も波に揺られて海を漂う。

彼女の母はまだ知らない。

うちはあきの彼女だということを。

でもすでに3回はお会いした。

たった3回だけれど

話しやすくおちゃめな言動に

うちは気を遣うこともなく

あきが席を外したときにも

二人の会話を楽しんだ。

あるとき

あきとあきのお母さんと一緒にご飯に行った。

可もなく不可もなく

とにかく無害な自分でいた。

特に会話を切り出すこともなく

かといって話に加わらないわけでもない。

うちがいることであきとあきのお母さんの時間を

邪魔したくはなかったし台無しにしたくもなかった。

だからただただ

おいしいご飯と

そこにいられる幸せを感じていた。

あとで聞いたことだけど

そのときのうちは全く波を打つことがなかった

とあきはいう。

心臓でさえ波を描くのに。

まるで空気みたいだったと。

言われてみればそうだったのかもしれない。

よく心がけている。

あきの知り合いに会った時の

自分の立ち位置を。

まずはあきとの距離。

そして自分の立場。

そこから導き出された言動への配慮。

でも簡単な話

その場からさりげなく姿を消すのが一番早い。

そうすればあきはうちを変に意識することもなく

紹介したい相手に紹介したいように話してくれるだろうし

また相手からしても

あきに聞きたいことや話したいことが言えるだろうと

そう思うからチャンスがあればうちは姿を消す。

それができないときは

あきのお母さんといるときのように

空気のようになる。

相手からは認識されにくい空気だけれど

それを良いことにうちは密かに感覚を研ぎ澄まし

あきのお母さんとあきを観察していた。

あきのお母さんにうちはどう映っているのだろうかとか

あきはお母さんにうちをどう映そうとしているのだろうとか

まーでもそれは実はどーでもよくて

あきとあきのお母さんの心の奥底の真意を

少しでも感じようとした。

互いに思い合っているのに

何かがずれているようで

でもそれは望んでいるからされているようで

それで二人の関係が築かれてきたのなら

そこを一致させる必要はないんじゃないかなんて

3回しか会ったことのないうちはそんなことを

一人もぐもぐと考えていた。

あきとあきのお母さんの関係に

うちが加わるつもりはない。

うちはうちで

あきのお母さんと関係が築けられれば

と願う。

あきのお母さんは

どこかうちのお母さんと似ている。

包容力

気遣いの仕方

そればかりでなく

娘との距離感

娘を思う心

でもそれらをわかりやすく表面に出すことはせず

あるいは簡単に言葉にすることをしない。

ほんの二言三言だった。

あきが席を外したとき

あきのお母さんがあきのことを話したときがあった。

母の愛を感じた。

あきがお母さんの話をすることは何度もあった。

娘が母を想う真っ直ぐな心を感じた。

だからもう少し

あきのお母さんと話をしてみたいと思う。

お母さん自身の話を聞きたいと願う。

あきの彼女としてとか

あきの友達としてとか

どんな立場でもなく

一人の人間として。

うちに話してくれるかはわからないけれど

それがずっと未来でも構わないから

いつかあきのお母さんの

心に触れたいと思った。

そんな片想いなう。