今日も早速お題に行ってみましょう。本日付日経新聞朝刊1面「任天堂とDeNA提携」、ならびに11面「任天堂、スマホ開拓へ転換」という記事から思うところを書いていきます。
記事の内容ですが、ゲーム大手の任天堂とDeNAが業務・資本提携することで合意したと伝えています。双方が約220億円ずつを出資して相手の株を持ち合い、任天堂はゲームの開発を主導、DeNAは顧客の利用状況の分析などを手掛ける役割分担になりそうです。
ゲーム業界、特に任天堂の経営については、このブログでも何度か取り上げてきましたが、今一度、任天堂・DeNA両社の財務資料から今回の提携が意味するものを考えてみたいと思います。
直近の2014年度第3四半期決算短信を、5年前のものと比べてみます。まず貸借対照表から。
| 任天堂 | ||
| 単位:百万円 | 2014年度 | 2009年度 |
| 総資産 | 1,480,986 | 1,795,920 |
| 流動資産 | 1,200,814 | 1,632,003 |
| 固定資産 | 280,171 | 163,917 |
| (うち有形固定資産) | 94,011 | 78,653 |
| 流動負債 | 239,127 | 476,128 |
| 固定負債 | 39,571 | 16,963 |
| 純資産 | 1,202,287 | 1,302,828 |
| DeNA | ||
| 単位:百万円 | 2014年度 | 2009年度 |
| 総資産 | 217,616 | 42,599 |
| 流動資産 | 120,155 | 35,702 |
| 固定資産 | 97,461 | 6,897 |
| (うち有形固定資産) | 3,028 | 904 |
| 流動負債 | 59,432 | 10,942 |
| 固定負債 | 1,203 | 60 |
| 純資産 | 156,981 | 31,596 |
DeNAの資産の増え方を見ると、同社の急成長ぶりがお分かりいただけると思います。一方、任天堂は5年前から総資産を3千億円も減らしており、純資産も1千億円減少させています。これは赤字決算が続き、本業による資産形成ができていないことを示しています。また、流動負債がほぼ半減していますが、減っているのは主に支払手形・買掛金です。「負債が減る」と言えば良いことのように聞こえますが、この場合は商売が不調で取引先とのやり取りが不活発になっているという証拠で、決して良いことではありません。
次に損益計算書を見てみましょう。
| 任天堂 | ||
| 単位:百万円 | 2014年度 | 2009年度 |
| 売上高 | 442,920 | 1,182,177 |
| 売上原価 | 269,976 | 715,575 |
| 売上総利益 | 172,944 | 466,602 |
| 販管費 | 141,339 | 169,945 |
| 営業利益 | 31,604 | 296,656 |
| 経常利益 | 92,356 | 314,511 |
| 純利益 | 59,515 | 192,601 |
| 売上原価率 | 61.0% | 60.5% |
| 売上総利益率 | 39.0% | 39.5% |
| 販管費率 | 31.9% | 14.4% |
| 営業利益率 | 7.1% | 25.1% |
| 経常利益率 | 20.9% | 26.6% |
| 純利益率 | 13.4% | 16.3% |
| DeNA | ||
| 単位:百万円 | 2014年度 | 2009年度 |
| 売上高 | 106,275 | 29,031 |
| 売上原価 | 41,898 | 7,570 |
| 売上総利益 | 64,377 | 21,461 |
| 販管費 | 42,990 | 10,015 |
| 営業利益 | 20,147 | 11,446 |
| 経常利益 | 22,389 | 11,656 |
| 純利益 | 13,314 | 6,486 |
| 売上原価率 | 39.4% | 26.1% |
| 売上総利益率 | 60.6% | 73.9% |
| 販管費率 | 40.5% | 34.5% |
| 営業利益率 | 19.0% | 39.4% |
| 経常利益率 | 21.1% | 40.2% |
| 純利益率 | 12.5% | 22.3% |
何と言っても目につくのは、任天堂の売上高の落ち込みです。今の売上高は5年前の半分以下、下落率は約63%に上ります。しかし、人件費や広告宣伝費が占める販管費は約17%しか圧縮できておらず、結果として営業利益率を大幅に下げる要因となっています。ちなみに、営業利益より経常利益や純利益の方が大きくなっている理由は、円安による為替差益と株の売却益があったからで、ある意味任天堂はアベノミクスの恩恵を最も受けた企業、と言えるかもしれません。
一方、順調に業績を伸ばしているように見えるDeNAにも、気になるところがあります。それは、売上原価率が13ポイント高くなっている点です。これは、ゲーム開発にかけた経費に対して、十分な売上が上がっていないことを示します。今日の記事にもある通り、「パズドラ」や「モンスト」のようなヒット作がないことが同社の悩みなのです。
今回の提携は、とにかく販売機会を増やして売上を上げたい任天堂と、強力なゲームタイトルを持ちたいDeNAの思惑が一致した、それなりに合理的な経営判断だと思います。しかし、これまで以上に流行り廃りの激しいスマホゲーム市場で生き残るためには、ネームバリューや規模の大きさに頼るのではなく、スピード感やクリエイティブ・マインドを醸成する社内組織の構築がカギになっていくのではないでしょうか。
それでは、また!!
※本稿のデータ出所
http://www.nintendo.co.jp/ir/library/earnings/index.html
http://dena.com/jp/ir/library/brief.html