それでは、早速今年最初のお題に行ってみましょう。本日付日経新聞朝刊15面、「会社研究 富士フィルム 2度目の変身、医療に軸足」という記事から思うところを書いていきます。
記事の内容ですが、投資家に評価が高い富士フィルムの2000年以降の経営について分析しています。ご存知の方の多いと思いますが、同社は写真フィルム製造事業から転換し、子会社の富士ゼロックスを中心とした事務機部門、および高機能材料・ライフサイエンス部門と中心とした事業構成に生まれ変わったことで評価の高い企業です。記事によれば株価は昨年1年間で37%上昇し、今期の連結営業利益は過去最高に迫る勢いとのことです。
それでは、いつものように財務分析してみましょう。2015年度の中間決算における損益計算書、貸借対照表を、2001年度のものと比べてみます。
損益計算書
| 単位:百万円 | 2015年度 | 2001年度 |
| 売上高 | 1,226,064 | 1,171,631 |
| 売上原価 | 745,439 | 674,343 |
| 売上総利益 | 480,625 | 497,288 |
| 販管費 | 399,954 | 408,239 |
| 営業利益 | 80,671 | 89,049 |
| 経常利益 | 84,599 | 89,664 |
| 純利益 | 46,946 | 46,414 |
| 売上原価率 | 60.8% | 57.6% |
| 売上総利益率 | 39.2% | 42.4% |
| 販管費率 | 32.6% | 34.8% |
| 営業利益率 | 6.6% | 7.6% |
| 経常利益率 | 6.9% | 7.7% |
| 純利益率 | 3.8% | 4.0% |
| 経営レバレッジ | 5.96 | 5.58 |
貸借対照表
| 単位:百万円 | 2015年度 | 2001年度 |
| 総資産 | 3,421,546 | 2,829,994 |
| 流動資産 | 1,795,084 | 1,376,014 |
| 固定資産 | 1,626,462 | 1,453,980 |
| (うち有形固定資産) | 527,418 | 701,854 |
| 流動負債 | 574,633 | 702,145 |
| 固定負債 | 458,890 | 346,890 |
| 純資産 | 2,388,023 | 1,656,152 |
| 流動比率 | 312.4% | 196.0% |
| 自己資本比率 | 69.8% | 58.5% |
| ROA | 2.5% | 3.2% |
| ROE | 2.0% | 2.8% |
| 有形固定資産回転率 | 2.32 | 1.67 |
| 総資産回転率 | 0.36 | 0.41 |
| 財務レバレッジ | 143.3% | 170.9% |
損益計算書の数字を見ると、利益率は横ばいか微減、という評価になると思います。つまり、事業ポートフォリオの組み換えに成功したこの15年間で、富士フィルムは全社利益を飛躍的に向上させたわけではない、ということです。
それでは、なぜ富士フィルムは投資家のウケが良いのでしょうか?
その秘密は貸借対照表に隠されています。15年前に比べ流動資産が増え、流動比率が飛躍的に向上しているのが分かりますね。これは、事務機事業が中心になることでコピー機のリース料など日銭を稼げるビジネスモデルに転換できたためキャッシュフローが潤沢になり、投資家にとってのリターンである配当の原資が確保しやすくなったことを表します。
つまり、投資家の気持ちとしては、「富士フィルムの株を買えば、いっぱい配当してくれそうだ」となるわけです。これが同社が株式市場で人気がある直接の理由です。決して、「業績が良い」ことだけが人気の理由ではありません。
芸能人やスポーツ選手なら、その人のイメージが人気度を左右するでしょうが、こと株式市場においては、人気のバロメーターはイメージよりも実利、ということですね。
それでは、また!!
※本稿のデータ出所
http://www.fujifilmholdings.com/ja/investors/pdf/financialresults/ff_fr_2015q2_allj.pdf
http://www.fujifilmholdings.com/ja/investors/pdf/financialresults/ff_fr_2001q2_allj.pdf