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遠近法で描く中国 -2nd Season-

片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を。 

著者:川上徹也
発行:あさ出版 / 2012年11月 / 単行本
ジャンル:エッセイ

震災は、色々なものを破壊します。
人の心にも、大きな傷を残すことがあります。
この本に描かれているのは、本屋さんであったストーリィの数々です。
本が好きな人にはもちろん、あまり好きでない人にも、すっと心の中に入っていく、何かが感じられる、そんなお話ばかりです。

漫画雑誌、随分と読まなくなって久しいのですが、震災の起きた街に届いた、たった1冊の少年向け漫画週刊誌の話が、第一のストーリィです。
たかが漫画、されど漫画。

この本を読んであなたが流した涙は、どんな涙でしょう。
嬉しい、哀しい、あるいは懐かしい、もっと違う、感情かもしれません。
きっと読み終えた翌日には、本屋さんに足を運んでいるでしょう。
そう、あなたの街の、本屋さんへ。

気になった箇所のご紹介です。
「人は何かしら商品を買ったり、サービスを受けたりする時、無意識のうちに「だいたいこんなものかな」という期待値を設定します。
 その期待値より低ければ不満に思い、期待値よりはるかに低ければ、クレームをつけたくなります。
 期待値どおりであれば、満足はします。しかし満足したからといって、何か特別な想いが湧くわけではありません。
 人の心が動くのは、期待値よりも商品やサービスが少しでも上回った時です。」(241頁)


本屋さんで本当にあった心温まる物語 (心温まる物語シリーズ)/あさ出版
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監督:九把刀(ギデンス・コー)
原題:那些年,我們一起追的女孩
英題:You Are The Apple Of My Eye
製作:2011年、台湾
原作:九把刀(ギデンス・コー)
主演:柯震東(クー・チェンドン)、陳妍希(ミシェル・チェン)

台湾映画は、基本的に話題になりにくいイメージがあります。
気候もあるのかもしれませんが、少し湿気のある雰囲気の作品が多いですね。
個人的に好きな監督は、アン・リー(李安)氏の作品です。
最近では、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012)で話題でした。
(観てませんが・・・)
好きな氏の作品は、『恋人たちの食卓(飲食男女)』(1994)です。

さて、本題のこの映画ですが、台湾中西部・彰化という町が舞台です。
近代的な台北などではなく、普通の、台湾で暮らす街の人々が描かれています。
主人公を含む高校生男女を中心とした、青春恋愛映画です。
彼らを中心とした、その後10年の物語です。

監督の自伝的小説が元となっていて、舞台は1994年からスタートします。
この年代にある程度の年齢に達していた、現在Around 40世代には、相当楽しめるかと思います(特に男性)。
例えば、夜の学校に幽霊が出る、という話題ではそれが『幽玄道士』の「キョンシー」だったり。
当時の台湾の健全な男子は、日本のアダルトビデオに「お世話」になっていたり、とか。
こういった小ネタ満載の作品です。
少々アダルトというか、下品な話題もあるにはあるのですが、カラッと爽やかに描いていますので、単純に笑いに変えてくれるのでは、と感じます。

印象に残った箇所は、物語の中盤でさらっと台湾中部大地震(1999/09/21)に触れられていたり、
高校の卒業式で「蛍の光」が流れていたことです。

この地震は台湾中部を震源とし、午前2時過ぎに発生していて、劇中でも、夜中に電波環境の悪い中、携帯電話を空にかざしながら、無事を確認しあう、男女の会話が描かれます。
「蛍の光」という曲は、元はスコットランドの民謡(Auld Lang Syne)ですが、明治以降に日本に輸入され、主に別れの歌、特に卒業式で唱われることが多くなりました。
ご存知のとおり、先の大戦中、台湾は「日本」であり、「蛍の光」も台湾へ教育の一環として導入され、今の受け継がれているのだろうか、などとも考えられます。
もちろん、劇中の蛍の光は、中国語でした。

日本での公開がこの秋で、各地で劇場公開されました。
私は10月に、京都で観てきました。

90年代の古き良き香港映画の王道テイストを継承した上で、現代風要素も交えた、爽やかな恋愛作品となっています。
大絶賛お薦め映画です、是非。

Youtube予告編はコチラ
予告編


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副題:病院に笑いを届ける道化師 / Hospital Clown
著者:大棟耕介(道化師)
発行:サンクチュアリ出版 / 2007年3月 / 単行本
ジャンル:道化師、笑顔

クラウンという馴染みない言葉は、
実は「道化師」のことでした。
ピエロ、とは違うクラウンが、
病院の子どもたちに笑顔を届ける、
そんな一人の男の生き方を綴った一冊です

<目次>

病院のピエロさん
もっとマジメにやりなさい
子どもの死
バルーンはおいといて
病院のできごと
道化師の苦悩
派手なメイク
クラウンK
いい握手
拍手をさせない
ある姉妹のこと
笑顔の連鎖
手紙
ぼくの存在
いたずら
遊んであげているの?遊ばれているの?
大切な瞬間
カメラ
魔法のプロ
おばあちゃん道化師の教え
呼吸合わせ
ルール
パッチ・アダムスとの出会い
パッチと海外へ
ロシアの病院にて
正しいやり方
24時間道化師
パッチが教えてくれたこと
道化師(クラウン)社長
笑いの力
小さな誕生会
クラウン
大棟耕介
ぼくの夢

気になった個所のご紹介です。

「ホスピタル・クラウン。病院をたずねて、闘病中の子どもたちを元気づける道化師のことをそう呼ぶ。欧米では80年代にはじまり、今は治療法のひとつとして認識されている。」(19頁)

「病院に行く前、じつは「子どもが待っている」という使命感よりも、「ああ、今日は体がダルいけど友だちが待っているから、行くか」という軽い気持ちで行くことが多くなった。」(21頁)

「こんなふうに病院をたずねるときは、なんでも子どもに教えてもらうようにしている。そうやって優位な立場にしてあげると、子どもはみるみる目を輝かせてくれる。子どもは病院でもっとも立場が弱く、毎日こうしなさい、こうしちゃダメって怒られたり命令されてばかりいる。その立場を一気に逆転させてしまうのが、ぼくたちのやり方だ。」(25頁)

「ぼくは病院でも、子どもたちに「またねー」と声をかける。お医者さんや看護師さんたちが縁起が悪いと、あえて使わないようにしている言葉だ。でも彼らは友だちだから、ぼくはまた会いたいと思う。」(28頁)

「道化師のスタイルは人それぞれだ。(中略) 基本的にはなんでもありなんだけど、忘れちゃいけないことがある。それは人が大好きで、自分が大好きであること。一番身近な人を愛せなければ、みんなを楽しませることなんてできない。」(48頁)
→身近な人=自分、ですね。

「出会った人たち全員と、ぼくはいい握手をしたい。相手にどう思われるかということよりも、自分にとってどれだけ気持ちいい握手ができたかどうか。それを評価の基準にしている。」(61頁)

「病院にいるお母さんたちはひどく疲れている。家と病院を毎日往復しているし、ずっと子どものそばについてなきゃいけない。なにより、子どもに対する罪悪感や不安で、心身ともに休まるときがない。そんなお母さんの状態を、小さい子どもは敏感に感じ取ってしまう。そのせいで母子はいっしょにふさぎこんでいることが多い。」(74頁)

「道化師は役に立つ存在だけど、かといって病気に対してなにかできるけじゃない。1分でも2分でも、子どもが病院にいることを忘れたり、病気であることを忘れてくれればいい。」(83頁)

「3時間くらい話しただろうか。パッチはぼくの質問ひとつひとつに丁寧に答えてくれた。中でも印象に残っているのは、「夢は道化師のいない世の中にすること」という言葉だった。道化師のような存在がいなくてもみんなが笑っていられるような社会にしたい、という意味だ。」(130頁)

「白色のメイクを施し、話をせず、ただ黙々とパントマイムをする、というもの悲しげなイメージのある「ピエロ」という言葉は、じつは海外ではほとんど使われていない。道化師にはひとりひとり名前があって、「ピエロ」とは無数にいる道化師のほんのひとりの役名にすぎない。」(185頁)

「たとえば道化師なら綱の上を上手に渡るよりも難易度の高い、「綱から見事に落ちてしまう役」を演じることができる。」(187頁)

多くの言葉は、いらないと思います。
どこの国の病院にも、病と闘っている子どもたちがいて、彼らを元気づけようとする道化師がいる。
そういう存在を知ること、がまず大事でしょう。

そして、今の世の中に氾濫する、人を傷つけて笑いをとることを業とする人をも気にかけながら、
今この瞬間、子どもへ笑いを届けている道化師へと思いを馳せましょう。


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