遠近法で描く中国 -2nd Season- -26ページ目

遠近法で描く中国 -2nd Season-

片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を。 

著者:阿井景子
出版:集英社文庫 / 昭和60(1985)年 / 文庫本
ジャンル:小説、人物伝

坂本龍馬の妻、おりょうをテーマにした小説です。
彼女については、龍馬と鹿児島に旅行したことが、日本初の新婚旅行とされ、有名だと思います。
しかし、この作品には彼女の壮絶な人生が描かれています。
そしてその悲劇は、やはり龍馬暗殺から幕開けていくのです。

<目次>
序章 信楽寺
第一章 将作の死
第二章 恋
第三章 寺田屋
第四章 脅え
第五章 遭難
第六章 土佐へ
第七章 東京
第八章 松兵衛
第九章 深田
第十章 光枝
第十一章 疑惑
第十二章 青年
第十三章 雨
第十四章 別居
おりょう追跡 あとがきにかえて

解説


おりょうは、女性としての作法や感情表現において、大変不器用な女性として描かれます。
そのため、龍馬の死後、坂本家を頼ることもできず、流浪の身となります。
しかしこの時代に女性が一人でいきてゆくのは大変で、すぐに生活に困ることになります。
見かねた西郷隆盛が彼女を援助しますが、彼もまた、非業の死を遂げます。
その後、おりょうはある男性と再婚しますが、それは生きるための選択でしかありませんでした。
そして不幸にも、おりょうの実の妹である光枝が絡んだ、奇妙な関係が起きてしまいます。
ですが、彼女にとって龍馬が最愛の人であり、その早すぎる死が、彼女の人生を狂わせたのです。
一人の男性を愛しすぎた故に、そして彼が去ってしまったのもまた、突然すぎたのです。

龍馬の妻 (ちくま文庫)/阿井 景子

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著者:石井花子
出版:角川書店 / 平成15(2003)年 / 文庫本
ジャンル:人物伝、日本近代史

ゾルゲ事件について、まず押さえておきましょう。
「ゾルゲ事件は、リヒャルト・ゾルゲを頂点とするソ連のスパイ組織が日本国内で諜報活動および謀略活動を行っていたとして、1941年9月から1942年4月にかけて[1]その構成員が逮捕された事件。」(Wikipediaより)
リヒャルト・ゾルゲとは、ソ連人とされていますが、この作品の中ではドイツ人とされており、これは著者が聞き知った事項だと思われます。

<目次>

まえがき

第一章 人間ゾルゲ
第二章 愛のすべてを
第三章 死者は眠れない

解説

ゾルゲ及びゾルゲ事件については、多くの書物があり、映画化もされています。この作品は、ゾルゲの日本での愛人とされた石井花子氏が、ゾルゲとの出会い、交際、彼らの逮捕、そして処刑。その後、彼女の思想の変化も含めて、どのように生きたかが描かれています。

ゾルゲは彼女を守るため、彼自身の仕事や、関わった人たちと彼女との交流を最小限に止めます。そのため、ゾルゲや尾崎秀美などが検挙された際も、彼女は取り調べを受けますが、罪に問われないことになりました。そしてゾルゲの死後は、彼の墓をつくることや、彼の日本および、ソ連での地位を回復させることにその生涯を捧げます。
ついには、ソ連においてゾルゲの地位や功績が認められ、彼女自身もソ連からの招待を受けて渡航します。

第一章は、ゾルゲの話す拙い日本語と、それによる彼女との交流が、そのまま表現されており、非常に読みにくい状態が続きます。著者にとっては、これが大変重要で、伝えなければいけないことなのでしょうが、読者の立場からすると、正直苦痛でしかありません。
その部分を除けば、ゾルゲという人間の、他の文献などでは見えてこない部分が描かれていて、面白いと感じました。

人間ゾルゲ (角川文庫)/石井 花子

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著者:西木正明
出版:角川書店 / 昭和60(1985)年 / 文庫本
ジャンル:小説

第二次世界大戦後、北方領土近海で、根室やその周辺の漁師たちが、諜報船(レポ船)として、ソ連の諜報活動に協力していた事実を、フィクションで追った著者の壮大な作品です。

<目次>

1 イントロ=根室海峡の”影”たち
2 オケッチウシ
3 拿捕と収容所
4 ケラムイ浅瀬 -アナマ
5 ハバロフスク
6 根室
7 別海
8 横浜
9 志発(シボツ)水道
10 アナマ
11 千歳
12 野付(のつけ)
13 三角水域
14 アナマ=クラボーツク
15 東京
16 古釜布(フルカマップ)=ユジノクリルスク
17 エピローグ

解説

諜報船(レポ船)はWikipediaなどで詳しく解説されていますので、ぜひご参考に。
それまで自国の領域であり、当然自由に漁ができた海域が、戦後になったというだけで、ソ連の支配下に置かれ、漁ができなくなります。
根室地方の漁師は、ソ連の海上警備隊に拿捕される危険を覚悟で、北方領土海域に船をだします。
その中で、ソ連側に見込まれて、スパイ活動を行う漁師や船が現れます。
当然日本の公安・警察もその実態を知っており、検挙しようとしますが、自国の海域ではなくなっているので、手が出せないのです。
こういった背景で漁師たちはどのように生計を立てたのか。
とてもフィクションとは思えない筆さばきで、最後の一シーンまで描かれた本作品、北方領土の置かれた立場や歴史を知る上でも、お勧めです。

オホーツク諜報船 (角川文庫 (6121))/西木 正明

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