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遠近法で描く中国 -2nd Season-

片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を。 

著者:沢木耕太郎
出版:新潮社 / 1996年 / 文庫本
ジャンル:コラム、エッセイ

この作品は、1990年から朝日新聞に連載された沢木氏のコラムをまとめたものです。
私的に沢木作品というと、やはり、『深夜特急』シリーズでございます。
学生時代か、あるいは社会人になってすぐの頃に読んだ記憶があります。

このコラム集ですが、あとがきにて著者本人がこのように述べています。
「朝日新聞紙上で連載を開始するに際して、(中略)その欄を(中略)、コラムらしいコラムを試みる場にしてみようということだった。(中略)私がひそかに定義していたコラムらしいコラムとは、「発行体は外部にあり、書き手はその光を感知するにすぎない」ことを強く意識した文章というものだった。」(300頁)
しかし登場人物は、「彼(ら)」という第三者であったり、沢木氏ご本人であったりします。実際読んだ感想としては、中にはストーリィのようなもの、エッセイのようなものも含まれています。日本の新聞紙上においての、沢木氏のこのような試みはおそらく成功したのでしょう。読み手の感性に直球で飛び込んでくるコラムが、33篇収録されています。あのポップスの女王マドンナにまつわる話もあり、お勧めです。


彼らの流儀 (新潮文庫)/沢木 耕太郎
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副題:徳川慶喜
著者:司馬遼太郎
発行:文藝春秋 / 1997年 / 文庫本
ジャンル:歴史小説

徳川第15代将軍・徳川慶喜を題材にした歴史小説です。
98年のNHK大河ドラマ「徳川慶喜」の原作でもあります。
いささか改善されてはいますが、慶喜個人への評価は、決して高くないと思います。
ですが、あのタイミングで慶喜が大政奉還(1867年)を行わなければ、朝廷と幕府の戦いはもっと激しいものになっていたでしょう。

慶喜について本書では相当才覚のある人物として、描かれています。
しかし、彼は常に孤独な人でもありました。
それは彼の出自に拠るところが大きいのでしょうが、
幕末から明治における最重要人物の一人であったことには違いありません。

この本について述べますと、大変読みにくい印象を受けました。
司馬先生の作品としては、珍しく受けた感覚です。
そして、読み終えても、慶喜という人物を理解することはできませんでした。
司馬先生は坂本龍馬を主題にした『龍馬がゆく』の著者としても有名です。
その龍馬が、慶喜を評した言葉が印象的です。
ただ一人、この時代では龍馬のみが、慶喜その人を理解できたのでしょうか。

「大樹公(将軍)、今日の心中さこそと察し奉る。よくも断じ給へるものかな。よくも断じ給へるものかな。予、誓ってこの公のために一命を捨てん。」(279頁、解説より)


最後の将軍―徳川慶喜 (文春文庫)/司馬 遼太郎
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著者:アガサ・クリスティ
訳者:田中西二郎
発行:東京創元社 / 1976年(新版2004年) / 文庫本
ジャンル:推理小説

アガサ・クリスティ女史が生んだ名探偵、エルキュール・ポワロのデビュー作。
もちろん、女史の作家としての出世作品でもあります(1920年)。
そして23年後(1943年)に書かれるのが、ポワロ最後の事件『カーテン』。
カーテンの発表はさらにその32年後(1975年)です。
その翌年、女史はこの世を去ります。

こうしてみると、ポワロという人物は、アガサ女史の作家人生そのものであるといえます。
スタイルズ荘の事件では、作品自体に荒削りな部分が多くあり、ポワロの人格も、まだまだこれから創られるだろうなと想像できますので、その後の作品を出版年月に沿って読んでいくと、尚更楽しめると思います。

スタイルズの怪事件 (創元推理文庫)/東京創元社
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