『出身地でわかる中国人』(評価★★★★☆) | 遠近法で描く中国 -2nd Season-

遠近法で描く中国 -2nd Season-

片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を。 

著者:宮崎正弘
発行:PHP研究所(PHP新書) / 2006年
ジャンル:世界再発見

筆者の宮崎氏はチャイナ・ウォッチャーとして著名で、この本の執筆においても中国大陸全33省を踏破し、取材されたとのことです。
宮崎氏の著作は数冊読んでいますが、中国=人を知るに当たってはこれが最適の1冊かもしれません。


[目次]

序章 「北京愛国」「上海出国」「広東売国」

第1章 北京とその周辺の人びと ①京津冀経済圏
北京市 / 天津市 / 河北省 / 山東省 / 山西省 / 河南省

第2章 なぜか嫌われる「上海閥」 ②長江デルタ経済圏
上海市 / 浙江省 / 江蘇省 / 安徽省

第3章 広東人の挨拶は「儲かりまっか」 ③珠江デルタ経済圏
広東省 / 江西省 / 広西チワン族自治区 / 海南省 / 香港 / マカオ

第4章 中国のユダヤ人=温州人

第5章 福建人と台湾人 ④福建省経済圏
福建省 / 台湾

第6章 東北三省と内蒙古の人びと ⑤旧満州経済圏
黒竜江省 / 吉林省 / 遼寧省 / 内蒙古自治区

第7章 西北から東南の地方人
湖南省 / 湖北省 / 四川省 / 重慶市 / 雲南省 / 貴州省 / 陝西省 / 甘粛省

第8章 孫子、孔子の末裔と朝鮮族
山東省の人と儒教の精神 / 中国東北部における朝鮮族

第9章 イスラム教徒とチベット族
寧夏回族自治区 / 新疆ウイグル自治区 / 青海省 / チベット自治区 / 多民族国家中国の未来

第10章 海外華僑、華人、新移民の世界地図

第11章 新漢族と新人類



印象に残った箇所の紹介です。
「中国人の歴史認識には、次にいつ戦乱が起きるかもわからず、一ヶ所に落ち着いて製造業を営むという日本流の考え方はない。」(123頁)
→重要です。中国に進出している各製造業のトップはこのことを理解できているのでしょうか。工員が定着しないと、もし嘆かれているなら、まずこのことを理解できなければいけません。

「アモイの沖合に浮かぶコロンス島には英雄・鄭成功記念館があり、大きな銅像もそびえる。その真ん前が台湾の金門島だ。鄭成功は日本人との間の混血児だが、中国ではそのことを一言も語っていない。しかし、対面の台湾台南市にある鄭成功神社にはちゃんと系図一覧があり、鄭成功は日本人の「田川氏」との婚姻によると明示されている。台湾と中国の歴史認識はこれほど違う。」(157頁)
→ぜひ一度この目で確かめたいです。鄭成功に関する小説を過去に読んだ経験がありますので、とても興味があります。

「これら長江文明遺跡に共通するのは、城砦で市街区を囲む古代城壁国家の跡地であることだ。漢族とは縁もゆかりもない異民族が、太陽を神と仰ぎ、鳥を予言者か霊媒として神聖化して、財宝および絵文字などの文型、黄金のマスクやらが神木などが出てきた。」(211頁)
→遺跡巡りの旅も面白いかもしれません。興味のある方はウィキペディアでも「長江文明遺跡」で詳細を調べることができます。

「さて鄭和は明朝の永楽帝の命で、大艦隊を7回率いた。鄭和は雲南省出身のイスラム教徒で、本名は馬三保。姓の馬はマホメッドに由来するイスラム教徒がご先祖の場合が多い(北方系は明らかに騎馬民族の末裔)。延べ1400余隻の艦船が30年近い間に東アフリカをふくむ30カ国を訪問し、航海距離は10余万キロに達した。のちにジェノバで鄭和の海図を入手したコロンブスが、スペイン国王に航海時代の到来を進言した。」(218頁)
→鄭和がイスラム教徒であることは初めて知りました。ぼくは世界史で何を学んできたのでしょう。大航海の歴史はこうして継がれていったのですね。

「戦後、韓国の奇妙なナショナリズムは漢字の廃止に動き、いまや若者の多くはハングルしか読めない。漢字で書けるのは自分の名前だけである。つまり潜在意識のおいて、彼らは反中華なのだ。(中略) 幕末の日本では国学、水戸学、朱子学が入り乱れた。遷都に際しては京を「東」に移した意味の「東京」とした。中華思想からみると、南京、北京、西京(西安)と同列だから、東夷としてふさわしい都市名となる。つまり中国人の潜在意識において「東京」は中華皇帝に臣下の礼をとるべきであり、朝貢国であることになるのだ。」(247頁)
→中国の政権トップには、このような意識はあるのでしょうね。問題は維新の国造りをした人たちが知っていたのかということと、我々現在の日本人が意識できているかということなのです。

「中国では最東端の黒竜江省はウスリー川に沿ってハバロフスクの対岸が撫遠、経度は福岡とおなじ。最西端は新疆ウイグル自治区のタシュクルガン付近で、隣はパキスタンのフンザ山脈。そこから遥か南方は緯度でいうとニューデリー。つまり時差は3時間以上なければならない。それなのにどこへいっても時間は統一された北京時間だから、東では太陽が煌々と照りつけても新疆ウイグル自治区では夜が明けていない。」(286頁)
→著者はこれが「中華思想」からくる統一思想なのか、と説きます。時差の問題は中国に住む外国人なら皆感じることだと思います。


宮崎氏の著作の特徴は文体だと感じます。統一感のない話し言葉のような文体、体言止め使用はスピード感を与えます。
この本一冊をとってもわかることですが、参考文献の紹介が巻末に記されていません。
基本的には自分の足で情報を集める人なのでしょうし、早稲田大学英文科中退という経歴から、英語圏の情報を得意とされていることが、氏のメルマガからも見てとれます。
読者が氏の著作を手にされるとき、内容の真偽がどこまでなのかを決めることを、自己の責任において行われることをお勧めします。
ぼくはこの人は著作家ではなく、雑誌のライターもしくは、講演家というタイプの人ではないかと感じます。


出身地でわかる中国人 (PHP新書)/宮崎 正弘

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