南向きの全面ガラス張りの窓辺。
視界の上半分は雲のない冬の空が広がり、時々飛行機が小さく右下から左上に通る。
歩道のない道幅の狭い旧道が目の前にあり、往来には右から左に、左から右に、休日の乗用車が走っている。路面とタイヤの擦れる音、小気味よいエンジン音。
時々歩いている人の姿も見える。どこに行くんだろうか。
「ご自由にお飲み物を」
ドリンクディスペンサーから甘味のない熱いコーヒーを選んだ。
香り立つ白い湯気がふわりと漂い、すっとした苦みが鼻腔から頭の上に抜ける。
そして、窓越しに陽の当たる一番端のその席に、わたしは座った。
いつも持ち歩いているリュックから取り出したのは、黄色のノートとボールペン。
コーヒーを飲みながら、少し思案し、最初の言葉を書き記した。
「箱を持たない自由時間」
海に行ったり、わたしにしてはずいぶん車をに走らせていたからね。
今日はディーラーで車の点検中。
この小一時間の空気を、スマホやパソコンを使わず、ブログをアナログで書いてみたくてノートとペンで書いている。文才がないなぁ。ちょっと苦笑いをしてペンを置く。
何もしない、ゆっくりする。空気や音を感じるわたしがいる。
窓越しに陽の当たる机に斜めの光が射し込んで、ノートとペンの間に細い影が映る。
ノートの上にペン先のシルエットとわたしの指が影絵のように映り、小さい時に障子に向かって「きつね」の形や「とんび」の形を作ったことを思い出したりした。
外にある店の旗が風に揺れている。冬の太陽の暖かさはじんわりとしていて、冷えていたわたしの足先を温めてくれる。
さわさわとした音を感じる。窓を通した往来の車の走る音、室内にはほどよく軽い音量のジャズが流れ、何人かの人が話す声が心地よく、音符と絡み合っている。
ノートに少しずつ言葉を描く。ああ、いいね、こうゆう時間。
刺激の少ない時間を過ごしたくて「箱」スマホやパソコンや、デジタルカメラも。
一週間、ほとんど使わないですごした。
ふと生まれる「なにもしない」時間を味わい、自由でリラックスしていた。