コスチュームジュエリー 美の変革者たち | 翡翠のブログ

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昨日は名フィル定演の前に美術展も愛知県美術館で観て来ました。

 

コスチュームジュエリー 美の変革者たち

 

東京で公開されている展示会の様子をSNSで聴いて、名古屋に巡回してくれるのを楽しみにしていました。加えて昨日は出品されるジュエリーを収集され図録を書かれた小瀧千佐子さんによる記念講演会「コスチュームジュエリー 美の変革者たち―シャネル、ディオール、スキャパレッリ」もあったので、そちらも楽しく聴講しました。図録にサインもいただけ、着けていったブローチに「素敵ね、何のモチーフ?」(美術展の後に名フィル定演に行くことから、チェロのブローチを着けて行きました)と声をかけ、褒めていただけ、嬉しかったです。

 

コスチュームジュエリーというのは、金やプラチナなどの貴金属やダイヤ、ルビーなどの宝石(貴石)を使わないジュエリーとのこと。素材は、メタル、ガラス、エナメル、ビーズなどを中心に、銀、半貴石、プラスチックなど多岐に渡るようです。

素材自体の市場価値が抑えられることから、着ける人や服を引き立てるアイテムという点に機能が集約されること、素材の色や形を求める通りに作ることができ、デザイナーが求めるデザイン通りのものが作れることに特徴があるようです。図録では「貴金属の価値観からの解放」「宝石を際立たせるためのデザインからの解放」により、「思い通りに作品を表現することが可能になったとありました。

 

あらかじめ図録を読み込んで予習のうえ美術展に行ったのですが、観たかったものを細部まで、じっくり観ることができました。

 

ポール・ポワレ(デザイン)、マドレーヌ・パニゾン(制作)のマスクとブレスレット「深海」。特にマスク、大きさ1mmのコンテリエビーズがびっしりと縫い留められ刺繍されているのは「タコ」なのだそう。

 

 

 

コスチュームジュエリーは、服飾と同様に3つのグループに分けられるのだそう。第一が一人一人に合わせて1点物でデザインされ作られるオートクチュールの服に合わせるためのオートクチュールのジュエリー。第二がそれよりは多い何点かが作られるプレタポルテの服に合わせるためのジュエリー。第三が多くの人が購入し着るように作られる既製服に合わせて購入されるジュエリー、デパートなどで販売されるアクセサリー。ただ、アクセサリーであっても、デザイナーが表現したいことがしっかり込められているものは、販売形式によらず、ただのアクセサリーではなくコスチュームジュエリーと言えると思うと小瀧さんが言っておられました。

 

会場には、代表的なオートクチュールのコスチュームジュエリーとして、シャネルとスキャパレッリが比較展示されていました。

この二人の特徴として、スキャパレッリは裕福な知識階級の家庭に生まれ、自分を「芸術家」と考えていた。作られるジュエリーは「『シュールレアリスム』の影響を受けたデザインで」、「鋭い感性と想像力に満ちて」いるとありました。展示されているアイテムは、メタルによる葉、バッタ、テントウムシ、リスやクマ、サーカスのピエロや馬や象など、とてもユニークなものでした。

 

 

戦後、アメリカで作られた作品は、もう少し商業的で豪華な感じに変わりますが、ガラスのグラデーションある色が綺麗でした。

 

一方、シャネルは貧しい家庭に生まれ、孤児院に置き去りにされて修道院で働きながら育ち、洋服の仕立て屋で働きながら上級階級への憧れと野心を持ってました。自分は「芸術家ではなく職人」と言っていたそうです。作られた作品は、「古代の遺跡、美術品から影響を受け」「力強さと繊細さを併せ持つスタイルは一貫」していたとありました。細い真鍮の枠の中に溶けたガラスを流し込む「パート・ド・ヴェール・エナメル」の技法で作られた葉が美しいです。

 

 

愛知会場の特徴として、各ブランドの衣装もまた展示されていました、シャネルのドレスやスーツも展示され、憧れのシャネルスーツを、そばでじっくり拝見し、この衣装に、どのジュエリーが合うかしらと想像できました。

 

 

こちらのブローチ、「楽園の鳥」は、アメリカで作られたシャネルのライセンス商品だそうですが欲しいです。

 

戦後にフェミニンで優美なスタイルを作ったクリスチャン・ディオールのコーナーは、ドレスもジュエリーも優雅で美しかったです。

クリスチャン・ディオール(デザイン)、メゾン・グリポワ(制作)のネックレス「葉と藤の花」。

 

白鳥。会場には香水「ミス・ディオール」のボトルなども展示されていました。

 

スミレ

 

1907年にドイツで設立されたコスチュームジュエリーメーカー、ヘンケル&グロッセの「つばめ」。メタルのツバメが可愛い。

 

イヴ・サンローランのブローチ兼ペンダントは、シェル(貝)、ロッククリスタル(水晶)、コーラル(珊瑚)、アメジスト(紫水晶)、ジェイド(軟玉翡翠)、メタルでできていて、会場の中では珍しく、ガラスやビーズ等の工業製品でなく「本物」の材料を使っていたもの。正直、私は自然に水晶の中で成長した鉱物の結晶や、貝の中に生まれた真珠に憧れとロマンを感じる方なので、コスチュームジュエリーの意味と美しさは理解しながらも、自然素材にホッともしました。

 

ジパンシィ。このデザインの模造パールが模造トルコ石のものを、ジャクリーン・ケネディが身に着けた写真が展示されていました。

 

コッポラ・トッポ社のリダ・コッポラのネックレス「翼」。真鍮の板にびっしりビーズがセットされています。

 

図録の表紙にもなっているリダ・コッポラのビブネックレス。実物は、もっとライトにきらめいていました。小瀧さんはコッポラの製品がお好きだそうで、講演時にもグレーのビーズが何連にもなった美しい素敵なネックレスをしておられました。

 

メゾン・クリポワ。ニナ・リッチのために作られたイヤリング。

 

ケネス・ジェイ・レーン。ジャクリーン・オナシスが、ギリシャの大富豪オナシスから再婚時に贈られたヴァン・クリフ&アーペルのネックレスを銀行に保管し、レプリカ制作を依頼され、その際に、コスチュームジュエリーのコレクションとして発売許可がもらえるなら無償で制作すると提案し、その許可の元で作成されたネックレスなのだそう。すごくゴージャス、コスチュームジュエリーであっても、とても私には着けこなせないゴージャスさです。

 

観ても観ても、観きれない、圧倒されるようなコレクションでした。正直なところ、観ながら、もし半貴石や淡水パールで良いので自然素材で作られたものがあったら、自分はどちらが欲しいだろうか?と考えながら鑑賞していました。確かに、本物を持ちたいとして一粒ダイヤや一粒真珠のペンダントや指輪を着けるより、オペラを観に行くとかであれば、コスチュームジュエリー、イミテーションジュエリーであっても豪華な華やかさが似合う場面があるとも思いましたし、それも楽しそうとも思いました。同時に自然の中で生まれた結晶としての宝石、真珠、工業製品でない、それらへの愛着も私としては感じるとも思ったのでした。