未完の始まり:未来のヴンダーカンマー 豊田市美術館 | 翡翠のブログ

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昨日は、豊田市美術館に行きました。

展覧会 未完の始まり:未来のヴンダーカンマー

出品作家:リゥ・チュアン、タウス・マハチェヴァ、ガブリエル・リコ、田村友一郎、ヤン・ヴォー

 

展覧会のタイトルになっている「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」というのは、世界中から絵画や彫刻、動物の剥製や植物標本、地図や天球儀、東洋の陶磁器など、あらゆる美しいもの、珍しいものが集められた、美術館や博物館の原型とされる部屋のことなのだそう。

展覧会サイトの趣旨解説によれば、この展覧会は「グローバル化が進み、加速度的に世界が均質化していくなかで、今改めて文化や伝統とはなにか、また他文化や他民族とどう出会うかが問われています。」「本展では、文化表象の実践の場としてのミュージアムの未来の可能性を探ります。」と述べられていました。

 

現代アートは、いつもなかなか難しく、よくわからないのですが、以前に観に行った英国博物館展など、博物館展示は私も次男坊も好きなので、今回トライしてみました。結果、なかなか面白く楽しめました。動画が多く、その動画も面白かったですし、平面、立体物オブジェクト、動画が互いに相互作用しているのが面白かったです。


面白く印象深かったモノたち

・ガブリエル・リコ「ピタゴラスからペンローズへ(野ウサギ)」

ウサギのはく製がナイフを抱えているところが、ドキリと。

 

・ガブリエル・リコ「イエスの星占い(ダン、リチャード&ヨセフ)」

鹿のはく製の前の壁に光る円があることで、見つめているようにも、輪に飛び込もうとしているようにも見えました。

 

・ガブリエル・リコ「ふたつめの原因はひとつめを説明するためのものである(パラモ山、オーク)」

ウィチョル族の伝統的な手法で刺繍されているのだそう。鹿の作品の隣に展示されていることで、互いの関係性が感じられました。写真の鹿は、たくさんの鹿の刺繍の中の一部です。

 

タウス・マハチェヴァ「セレンディピティの採掘」

参加型のアート。ネックレスと複数のチャームが展示されていて、観覧車はチャームを選んでネックレスに付け、自分が身に着けることもでき、隣には鏡も展示されていました。それだけでも面白かったのですが、チャームに結構スピリチュアルな説明が展示されていて、「いやー、それはないのでは?」と思いつつも選んだチャームの説明を読んだり、参加型のアイディアが面白かったです。

 

田村友一郎「TiOS 2024年」

猿人ルーシーの骨を模したチタン製の骨をキーアイテムに、ジョン・レノンの生成AIナレーションによる動画(17分44秒)、樹脂製のバンカー(砂)、チタン製のゴルフドライバー、ライ麦畑でつかまえてのペーパーバック、iPhoneを組み合わせて作った照明、などが部屋の中に配置されて、一部屋全体で一つの作品。動画のナレーションが詩的で、面白くてじっくり観てしまいました。アイテムが動画の中に登場しているのも、動画とモノの相乗効果で面白かった。

 

リゥ・チュアン「リチウムの湖とポリフォニーの島Ⅱ 2023年」

55分45秒という長い動画なのですが、これも面白く、じっくり腰をすえて観てしまいました。急速に発展している中国をテーマにしているそうですが、オープニングの骨(たぶん、ルーシーの骨)が空に飛ばされ回転する場面は、アーサークラーク「2001年宇宙の旅」の映画のオープニングが思い起こされてました。その後、それぞれ宇宙ステーションと衛星に切り替わるのも似ていて、おそらく2001年のオマージュだろうと思います。さらに、そこから劉慈欣「三体」に言及され、「智子(チシ)」が女性の姿で登場していたし、暗黒森林のテーマでもある、地球が、地球人が自らの居場所を発信することの危険性、高等生物が出会い生存競争をしないでいられない恐れ、不安へのスティーヴン・ホーキング博士の言及から、地上で歌を歌う生物は人間だけ、その他の生き物は水中と空中に生きるモノだけが歌うとつなげていくところが、文化にもつながって、とても面白かった。これは、正直、もう一回転観たいくらいでした。

 

合わせてコレクション展の方でも、ヨーゼフ・ボイスの作品や、

 

村上隆の作品は、様々な動物、爬虫類の革で作ったランドセルが並び、ランドセルが元々戦時下で荷物を運びやすいよう作られたことから、可愛いと戦争、ブランドなどをからめたメッセージを持つ作品らしかったのですが、正直、単純に可愛く、エレガントでカッコよく、エルメスなどで作っていそうにも見えました。正直なところ、欲しかった。

 

誕生日ランチも兼ねて、ル・ミュゼ(味遊是)でランチ。

 

肉のランチのメインが、蝦夷鹿肉のミートローフ、赤ワインソースなのは、展示作品の鹿とのコラボの狙いなのかもしれません。美味しかったです。

 

魚のコースのメインは、白身魚のテリーヌ アメリケーヌソース(オマール海老の出汁のソース)。

 

追加でデザートセットも付けました。

「未完のはじまり:未来のヴンダーカンマー」展特別デザート リチウム・マイン (Lithium Mine)。レアチーズケーキの上にはカラフルなメレンゲの飾り。中にはオレンジパッションのジュレ、下にパッションマンゴーのソース、皿の隣の茶色い粉はヘーゼルナッツのパウダーで、これも付けて、付け方、混ぜ方で複雑な味が楽しめました。

奥に映っているのは、次男坊のデザート、ガトーショコラ。

 

食後に、もう一度観たいものをざっと見直してから、外を少し散歩して、茶室「童子苑」へ。

 

 

抹茶とお菓子は「干し柿」という名でした。

 

観て面白く、美味しいものも味わって楽しい展覧会でした。寒かったですが天気も良く、青空に豊田市美術館、本当に美しく映えます。