伊勢(2)新春・斎宮奉納薪能 絵馬 | 翡翠のブログ

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今回の伊勢おでかけの主目的はこちら。

新春・斎宮奉納薪能 絵馬

4月から長期間、名古屋能楽堂が工事のため閉館してしまうのですが、せっかくなので災い転じて福となす?能を観に遠征もしようかと。で、第一弾として、能を観に伊勢に遠征しました。今年の能、5舞台目。

 

イベントの詳細(サイト説明から)

能の演目の1つ「絵馬」は、現在の三重県明和町斎宮にある竹神社に縁があります。旧暦の年末にあたる2月2日(金)に、新春の豊穣などを祈って伊勢神宮に仕えた皇女・斎王の住まわれた歴史と由緒ある、この地にて斎宮奉納薪能を執り行います。

 

【プログラム・演者】
17時30分~17時45分 演目解説・小島英明
17時45分~18時30分 能演目「絵馬」公演

 

『配役』
老翁・天照大神 観世喜正
姥       奥川恒成
天鈿女命    石井寛人
天手力男命   中所宜夫
臣下      橋本宰
笛       山村友子
小鼓      後藤嘉津幸
大鼓      河村眞之介
太鼓      加藤洋輝
後見      永島充・金子仁智翔
地謡      駒瀬直也・中森貫太・小島英明

 

「絵馬」のあらすじ

帝の勅使が伊勢神宮に遣わされ、斎宮に参拝し、節分(昔の大晦日)の夜、絵馬が掛けられる行事を見物しようと待っていると、夜更けに老翁と老媼が現れ、それぞれ白馬、黒馬の描かれた自分の絵馬をかけようと言い争うが、最後には両方を並べてかける。実は白馬、黒馬は翌年の晴れ、雨を占うもの。二人は自分たちは伊勢の二柱の神(伊勢二柱の神に仕える神)だと明かし消える。

夜明けに勅使の前に、男神(手力雄命)と女神(天鈿女神)が、そして天照大御神が現れ、神話の「天の岩戸隠れ」の様子を再現して見せ、国土安穏を寿いで舞を舞う。

 

能「絵馬」は、2021年正月特別公演に名古屋能楽堂で久田三津子さんのシテで観たことがあります。ただしその時には半能で後場のみでしたが、正月らしく華やかで、今年が良い一年になるよう寿ぎ、祈願するような舞台だったと感想メモにありました。

 

その「絵馬」を縁ある場所、伊勢の斎宮で観られるというのは嬉しく心に響くものがありました。

公演の前には解説もあり、今回、観客の中にインバインドの海外の方もいらしたようで、能楽師の日本語の解説を都度、大学の先生が英語で通訳しておられ、内容も簡潔でわかりやすく、英語でこう言うんだなというのもわかって面白かったです。

今回も半能とプログラムにありましたが、前場でワキの勅使と老翁・姥が登場して、2つの絵馬をかける場面もあり、後半だけでななかったような。とはいえ、1時間弱程度の時間でもあったので、完全に全てを演じるのではなく、どこか短縮はされていたのかもしれません。でも全体が観られて、わかりやすかったです。

 

加えて、今回の演出では、舞台装置、松の絵の鏡板も柱も橋掛がりもない公民館のステージのままのシンプルさでした。先日の大垣での能楽キャラバンが市民会館のステージ上に完全に能舞台を再現していたのに対して、やはり全ての地方公演が、あの舞台装置を用意できるわけではないのだなあと思って。さらに「絵馬」は作り物も舞台に登場して絵馬の納堂や雨の岩戸を表す演出が普通ですが、その作り物もなしでしたが、代わりにプロジェクションマッピングを使用する演出でした。

季節の花や光、雪らしい背景が映され、特に最後の岩戸から天照大御神が現れる場面では、光輝く様子が映され輝く中で舞を舞いました。もちろん、通常の演出では、観客の想像力で鏡板に景色や季節、場面を想像させるために、能楽師の方々はその想像を引き出すような動きや舞、セリフや謡で演じておられるのだと思いますし、もしかしがらプロジェクションマッピングでの投影は、その演技を観客が感じることを阻害することもないとは言い切れない気もしますが、一方で、あまり能に親しみがない、初めて観るなどの場合は、イメージしやすく共感しやすい、理解して楽しみやすい利点もあるように思いました。

 

公演を観るために訪れた斎宮駅前。駅は無人駅でした。

 

公演を観るにあたって訪れた演目「絵馬」とゆかりの竹神社。駅からすぐでした。

掲げられた案内に寄れば、元の参詣道の辻に絵馬堂があったが明治の終わりに廃され、竹神社に寄贈された絵馬が神宝となっているのだそう。

 

駅前の「いつきのみや歴史体験館」は残念ながら空調工事のため休館中。歴史ロマン広場から古代伊勢道を通って斎宮歴史博物館へ。

 

ここ、とても面白かったです。当時の斎宮が京都から伊勢に向かう群行の様子、斎宮の生活する部屋や食事などが模型でわかりやすく展示されており、斎宮に関する資料として「源氏物語」「伊勢物語」「徒然草」なども展示されているので、知っている章、文言に出会って嬉しく読んだり。斎宮跡の発掘調査で見つかったものも展示されていて、かっての斎宮が武士の時代に消えてしまい、発掘調査によって少しずつ当時の様子がわかっていることを知ったり。映像展示の動画は2本とも観ました。1本は発掘調査のドキュメンタリー、もう1本は良子(ながこ)内親王の1038年の斎王群行を同行した藤原資房(すけふさ)の日記をもとに再現した動画で、美しい衣装や道具、大変な行程の峠など、観てとても興味深く、そのあとで展示資料を観ると一層面白く観られました。超お勧めです。広場には梅が美しく咲いていました。

 

奈良時代の道の跡を利用した遊歩道

 

あちこちに古墳後、建物遺構跡、井戸跡など点在しています。

 

しかし寒い、寒風吹きすさぶ中、吹きっさらしで吹っ飛びそうで、またもやお茶休憩。斎庵(いつきあん)へ。

 

酒まんじゅう。ほんのり温めてもらえ美味しい。

 

しかし公演会場近くに夕飯を食べられそうな店がなく(昼に営業後、いったん閉まる店ばかりで、公演前に食べられない)、こちらで、本日二度目のぜんざいをいただきました。

 

さいくう平安の杜。史跡斎宮跡に三棟の平安時代の建物を復元しています。前回、昨年秋には、こちらの建物で野外薪能として「絵馬」を上演したそうで、すごくうらやましい、観たかった。

 

 

装束体験ができるらしく、今回は着る時間はなかったですが、ちょうどモデルの方が衣装を着けておられ、スタッフの方に写真を撮りますか?とお声がけいただき、一緒に写真を撮れました。斎宮歴史博物館で見た通りの美しい装いでした。

 

お能の鑑賞自体も面白かったですが、加えて能の物語の背景、舞台も訪れ親しむことができて、非常に楽しい体験でした。足を運んでみて良かったです。