能楽キャラバン 嵐山 船弁慶 | 翡翠のブログ

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昨日に続いて、今日は「能楽キャラバン!名古屋公演」を観に行ってきました。会場は今日は名古屋能楽堂です。今年の能、3舞舞台目。

 

 

◆能 金春流「嵐山 白頭 働キ入り」
シテ 尉・蔵王権現:金春穂高
前ツレ 姥:湯本哲明

後ツレ 勝手明神:金春飛翔

後ツレ 木守明神:金春嘉織
ワキ 勅使:飯冨雅介
ワキツレ 従者:椙元正樹・佐々木賀治
アイ 末社の神:井上蒼大
笛 平野史夏
小鼓 船戸昭弘
大鼓 河村眞之介
大鼓 加藤洋輝
後見 金春憲和・横山紳一・井上貴覚
台後見 中村昌弘
地謡 金春康之・高橋忍・佐藤俊之・山井綱雄・廣瀬雅弘・酒井賢一・中田能光・田中直樹

 

〇桜の名所吉野山より桜を移した京都の嵐山。花を守る老夫婦が、桜の木を守護する木守と勝手の神のことや、嵐山の桜の謂れを語り、自らがこの二神であると言って立ち去ります。夜になると二神が現れて舞を舞い、さらには蔵王権現が現れて威光をみせ、栄え行く世のめでたさを讃えましたというお話。

 

昨日観た「田村」「西行桜」に続いて、桜を謡う演目で春めいてます。舞台に一畳台が運ばれ、両端に2本の桜の作り物があしらわれて目にも一足早く桜の季節をイメージしやすい。前場で花守の老夫婦が登場し嵐山の桜の謂れを語って、後場で真の姿、勝手明神と木守明神で現れて舞うという流れは「高砂」などと同じ流れと思ったのですが、明神はツレで、そこからさらに後シテで蔵王権現が現れ、明神の二人の男神、女神も、赤と青の着物がきらびやかで華があって見とれる舞だったのに、そこにさらに吉野山の本尊がやって来るという一層豪華な演目でした。西行桜が、しみじみとした静謐な桜の花見としたら、こちらはもっと華やかな花見の宴席で舞って喜ばれそう。

謡の詞章に「嵐の山(嵐山)」という地名、言葉が出てくるので、訪れたことのある嵐山の風景、嵐山の桜を思い浮かべながら楽しみましたが、プログラムの解説によれば、「吉野の千本桜に言及することで、嵐山の風景に吉野山の花盛りをダブルイメージさせることに成功している。嵐山のはずなのに、知らないうちに吉野を思い描いている」とあり、なるほど!そうなのか、と。吉野山の桜はテレビなど映像でしか見たことがまだありません。行ってみたい。

 

◆狂言 和泉流「伯母ケ酒」
シテ 井上松次郎
アド 今枝郁雄
後見 佐藤友彦

 

◆能 金春流「船弁慶 遊女ノ舞 替ノ出」
前シテ 静御前:本田芳樹
後シテ 平知盛の霊:本田布由樹
子方 源義経:中村優人
ワキ 武蔵坊弁慶:橋本宰
ワキツレ 従者:橋本叡・高安受壽
アイ 船頭:鹿島俊裕
小鼓 後藤嘉津幸
大鼓 河村裕一郎
太鼓 加藤洋輝
後見 本田光洋・髙橋忍・中村昌弘
地謡 金春安明・辻井八郎・山井綱雄・井上貴覚・鬼頭尚久・小島芳樹・前田登・矢代隆夫

 

〇兄の頼朝と不仲になった源義経一行は、西国へ落ち延びるため、船出する。一緒に連れて行くことができないと言われ静御前は泣く泣く別れる。船出後、海がどんどん荒れ、平知盛の怨霊が現れ薙刀を振りかざして義経一行に襲いかかる。義経が亡霊と切り結び、弁慶に調伏され亡霊は消えていくという話。

 

前半後半で、舞台の雰囲気も場面も舞もがらりと変わるので、そこが面白い演目。特に後半の知盛が薙刀を振り回し、義経と切り結ぶ場面が面白く楽しく、以前から好きな演目です。これまで舞台では、辰巳満次郎さんがシテのサラマンカ能で観ました。また動画やテレビでも観たことがあり、NHKの古典芸能の番組、古典芸能への招待では、今回と同じく金春流で、能「船弁慶 遊女ノ舞 替ノ出」で観ましたが、子方の源義経を演じていたのが、今回と同じ中村優人さんで、その放送より今回は大きくなっていたような。子方が登場すると、「ああ、これで能楽の将来も安心」と思えて、一層、嬉しく応援する気持ちになります。今回も観て楽しかったし勇ましくて良かった。

船弁慶はシテが前半は静御前の美しさと悲しさを、後半は知盛の霊の荒々しさを舞うという、なかなか気持ちの切り替えが大変そうな演目とも思います。しかし今回は、前シテ、後シテは別の方でした。金春流がそうなのか、でも上にあげた放送では同じだったので、今回だけの演出なのかもしれません。

 

今回のプログラムには、名古屋と金春流の深い関係なども書かれていて読んで面白かった。名古屋には名古屋能楽堂があって、本当、ありがたい。やっぱり舞台があると公演数も多いし。地下鉄の駅からもう少し近いとより助かるのですが。将来のことを考えると。


ところで、今回は面白いサービスが利用できました。あらすじ、見どころなどは予習してから観に行ったのですが、今回は、それ以外にも頼りになるガイドがありました。
今回の公演は能楽鑑賞字幕サービス「能サポ」対応で、アプリ「G-marc」(ジーマークですね)を入れると、詞章〈台詞〉」と解説〈場面解説〉が自分のスマホやタブレットで上演中に見られるというサービスでした。「嵐山」と「船弁慶」で実際に使ってみたところ、自動的に舞台と連動して表示され、情報量は多すぎず、パッと見られる程度で、すごく良かった。謡本や字幕にばかり集中して舞台を観るのがおろそかになっては本末転倒だけれど、この程度なら舞台も、しっかり見つつ、セリフもわかり、理解ができて眠さも防げる(笑)。さらにセリフだけでなく囃子の解説もあって、これが〇〇の囃子で、〇〇の場面で使われるなど解説が出て勉強になりました。同様なサービスではイヤホンガイドが一般的ですが、私は耳の調子が最近、イマイチ良くない(老化か・・・)ので、イヤホンをつけると、せっかくの舞台のセリフや囃子が、ますます聞こえなく。そのため、最近は能も歌舞伎もイヤホンガイドは使わないで、事前の予習をがんばるようにしていたので、耳の聞き取りがイマイチの身にはすごく助かる。最近、視力もイマイチで舞台周りの字幕が見えにくいので、オペラや文楽でも、やってくれないだろうか、ぜひ!ぜひ!