パレルモ・マッシモ劇場 プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」 | 翡翠のブログ

翡翠のブログ

日々の徒然をつづっています。コメントは承認後公開させていただきます。

今日は、パレルモ・マッシモ劇場 プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」を観に、愛知県芸術劇場へ。

 

指揮: フランチェスコ・イヴァン・チャンパ
演出: マリオ・ポンティッジャ
管弦楽・合唱: パレルモ・マッシモ劇場管弦楽団・合唱団

 

ミミ: アンジェラ・ゲオルギュー
ロドルフォ: アゼル・ザダ イヴァン・マグリ  ダヴィデ・トゥスカーノ
ムゼッタ: ジェシカ・ヌッチョ
マルチェッロ: フランチェスコ・ヴルタッジョ


パレルモ・マッシモ劇場は、2017年の第40回名古屋国際音楽祭で同じくプッチーニの作品、歌劇「トスカ」を観たことがあります。そのときには舞台装置や衣装が、これぞオペラという感じでとても華やかで、うっとりポーッと感動して終わったとの感想でした。今回のラ・ボエームは貧乏芸術家たちを描いていることから衣装はそこまで派手華やかではないですが、それでも舞台装置や衣装、小物は劇らしい観て楽しめるものでした。

 

今回、出演者の交代があり、すでに4月の時点で「ロドルフォ役で出演を予定しておりました、アゼル・ザダが自身の事情により来日できなくなりました。代わりましてイヴァン・マグリが出演いたします。」とはサイトに告知されていました。

ところがびわ湖ホール公演を観に行かれたブログ友さんのブログで、ロドルフォ役が交代になったイヴァン・マグリもまた健康上の理由で出演できなくなり、笛田博昭に変更になったとありました。なか一日しか琵琶湖公演と愛知公演は空いていないので、おそらく愛知公演もまた変更になるかもと思っていましたら、やはり愛知公演も交代で、ダヴィデ・トゥスカーノという方に変更でした。

大元の方も変更となった方々も、どなたも皆存じあげない方なのですが、とりあえず容姿もロドルフォとして遜色なく、歌もまたよく通り、ソロもミミやマルチェッロとの二重奏も心地よく聴けました。

 

「ラ・ボエーム」は2016年の第39回名古屋国際音楽祭でイタリア・スポレート歌劇場の公演、2021年に藤原歌劇団の公演を舞台で観ているので、あまりオペラを観る機会のない東海圏では比較的生で観た経験の多い演目です。手元にコヴェント・ガーデン王立歌劇場の公演のDVDも持っていますし、YouTubeでも観たこともあるし。

ただ、すごく好きかと言われると、プッチーニでは『トスカ』や『トゥーランドット』の方が好きかな。プッチーニの三大オペラは「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」らしいですが。特に「ラ・ボエーム」は世界中で上映回数も多いとも聞くのですが、どうもストーリー的にミミに感情移入できないです。最初にすぐ恋に落ち、すぐに「愛している」とまでは、オペラあるあるとしても。前に観た時の感想でも思ったのですが、今回も3幕でマルチェッロに相談に行く場面で、恋人の友人に恋人との関係を相談に行く行為が既に好みでない、気持ち悪い行為と思いますし、ロドルフォと別れた後のミミが子爵をパトロンにして生きているところも、病が悪化して死期が迫って子爵の元から逃げ、ロドルフォに会いに来るところも、毎回居心地悪く思いながら観ています。

似ているところのある「椿姫」の場合は、貴族の息子と娼婦という絶対に越えられない身分の壁があり、アルフレードの父からの懇願もあって、アルフレードのために身をひいた、そして最後に死ぬことによって、やっとヴィオレッタは身分を越えてアルフレードの記憶に留まることを望めたということがあったと、色々解説を読んだり観返したりしてわかってきたのですが、ミミのそれはよくわからない。せめて、ロドルフォのために別れることを選んだとしたら、故郷に帰ることにしたとでも嘘をつき、実は水仕事やら体に負担のかかる仕事をしていて、結果、病が悪化しました、最後にロドルフォに会いたい・・・なら、理解でき、ぐっと感情移入できたのに。ヴィオレッタのように元々高級娼婦だったというわけでないのに、別れてパトロンに世話になる部分が全然ついていけないのは、当時の文化への理解が足りないのだろうか?と、毎回、観るたびに心の中で文句を言っている私です。

とはいえ、この部分、イタリア・スポレート歌劇場の「ラ・ボエーム」を観た時のプログラム解説に、「原作のミミはオペラの様な清純なイメージではない。原作には、二人の出会いの場面も、最後にミミが看取られながら亡くなる場面もない。原作のミミは病のせいではなく、貧しさに耐え切れなくてロドルフォから子爵に心変わりする。その後、子爵と破局し、ロドリフォに会いに行くも病のため、会えないまま孤独に死ぬ」とあり、原作とプッチーニの改変が混じり合っていることで、私の「別れて子爵のとこに身を寄せて、戻ってきて純愛?」という違和感の元になっているのかも。でもプッチーニ、これで本当に良いと思ったのか?とも思います。

 

しかし、その辺りの展開は目をつぶり、字幕を追いすぎないようにして、歌と音楽と演技を追うと、さすがプッチーニ、良かった。

特に悲劇じゃないところ、1幕と4幕のロドルフォたち男友達らが、わちゃわちゃやっているところは、すごく面白く楽しい。また、ロドルフォとマルチェッロとの二重奏も、とても良かった。

音楽も歌にからむように、かけあうように奏でられるホルンやハープやトライアングルの音、テノールとバリトンに重なるチェロとヴァイオリンも、とても良く聴こえて良かった。音楽解説は藤原歌劇団の公演のプログラムが充実していて易しくわかりやすく、音楽を楽しむ手助けになりました。あと、今回物語より歌と音楽に重点をおいたところ、なんとなく、マゼッタの歌が蝶々夫人に似ているところがあるようにも感じました。なかなか、オペラを聴く面白さも楽しかったです。