METオペラ ローエングリン | 翡翠のブログ

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今日は、名古屋駅、ミッドランドスクエア シネマへ。

METライブビューイング ワーグナー ローエングリン

指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:フランソワ・ジラール

ピョートル・ベチャワ:ローエングリン(テノール)

タマラ・ウィルソン:エルザ(ソプラノ)

クリスティーン・ガーキー:オルトルート(ソプラノ)

エフゲニー・ニキティン:テルムラント(バスバリトン)

ギュンター・グロイスベック:ハインリヒ国王(バス)

 

現在、ワーグナー強化月間・・・というわけではないですが、加藤浩子「オペラの歴史」がワーグナーまで読み進んだところなので、ワーグナーの手元DVD等を再視聴中です。先日は、びわ湖ホールにも観に行けたし。ちょうど、ローエングリンも先日観たところです。

 

ローエングリンは、すごく好きです。上演時間3時間30分とワーグナーにしては短めだし(笑)(しかしMETの上演フィルムでは、インタビュー映像、2度の休憩が加わり、上映時間4時間56分の長丁場でした。11時開演、16時終演、長い、休憩があってもきつい長さ)、パパーンと登場するローエングリンとか華があるし、前奏曲や婚礼の合唱など耳馴染みのある曲もあるし、結末も悲劇ではあるけれど、ドラマチックでオペラを観た~という満足感があります。

 

今回のMETの版は新演出とありました。サイトに掲載されている音楽評論家 堀内修さんの新演出 みどころレポートには、「惑星の地下世界のようなブラバンド公国」「巨人族のような人々が住むブラバンドの地下世界」「別の惑星から降り立った清潔な白シャツの騎士が、見事に清潔な歌でエルザを救う」とあり、公演画像でも、背景には宇宙に浮かぶ惑星が描かれ、ローエングリンは現代の白シャツの衣装。

 

映画が始まって開幕の第1幕の前奏曲。すごくいい。家でDVDを観る際には全然良いスピーカーでないから、映画館だと音が、演奏が素晴らしい。やっぱりMETライブヴューイングいいわあと早速感動。

音楽も良いし、歌も良いし。音楽と歌と演技が、ぴったり合っているところがまたすごくいい。ローエングリンもエルザも、テルムラント伯もハインリヒ国王も皆いい。なかでもオルトルート、すごくいい。恐ろし気な声が、音楽が、演技の迫力が最高でした。

 

背景は公開されている空の穴から月が見える背景。その月が巡り、遂に赤く膨れ上がって爆発したかのように輝き遠ざかります。SFと思って観ると、何か最終戦争の最終兵器で月が破壊され、その結果、地球の気候も影響を受けて荒廃し、人類は地下世界で生き延びた・・・みたいなイメージ。

METライブヴューイングならではの休憩時の特典映像の演出:フランソワ・ジラールと美術・衣装のT・イップのインタビューによれば、実際、荒廃した未来の地球というイメージらしい。

 

演出で良かったのは背景に投影される宇宙的な映像もなのですが、衣装がすごく面白く。シンプルな黒のローブを国民らは全員そろってきているのですが、何枚かの色違いの布を重ねているようで、その布をパッと広げると衣装の色が黒から白、赤、緑と早変わりして、それが人々の立場や感情を表している感じで、かつ美しい。これもインタビューによれば、磁石を使うことでパッと早変わりしているそう、そして美しいドレープが出て、ライトの光を美しく反射するよう衣装はシルク製なのだそう。

 

一方、ローエングリンの衣装は白シャツ、黒ズボン。騎士だけれど鎧どころか剣も帯びていない。この衣装である理由としては、以前に公開されたオペラ「パルジファル」(ローエングリンの父親)の公演と同じ衣装というつながりと、超人であるローエングリンを身近な存在とすることだとか。この演出に関しては、でもやっぱり、せめて剣と角笛くらいは帯びて登場してほしかったと思いはしたのですが。

 

METラジオ解説者 W・バーガーのインタビュー解説でMETにおけるローエングリンの歴史の紹介があり、ローエングリンはMETで最も多く公演されているワーグナー作品で、かつMETの開始年にも公演されている作品であること、時代につれてその演出が、ドイツ賛歌的なファンタジーから、ドイツに寄りすぎない普遍的な演出に変わってきたとの歴史が語られ。今回の新演出では、さらに普遍的な現代にも相通じる、人と人として、その人のことを知らないまま愛せるか、背景を知らずに愛せるかといった新しいテーマが語られていると聞いて、だから、このローエングリンの衣装なのかなとも思ったのでした。

 

ところで結末部分で、「エルザは死んでしまうのかな、死ぬって変じゃないか?ローエングリンが残した角笛と剣はエルザの弟、白鳥の呪いを解かれて人の姿に戻り、ブラバントを今後治めるゴットフリートへの手助けのため残されたけれど、指輪は自分、ローエングリンを思い出してくれるようにと残したものというのであれば、エルザは苦しい生を抱えつつ、彼を思って生きるべきではないか?エルザの元に角笛と剣と指輪を残すところなども、ローエングリンが断ち切れないエルザへの愛が感じられるし・・・」と思って観ていると。

字幕に「指輪は、弟に私を思い出してもらうため。かって屈辱と苦しみから救った私を」と表示され。「え?」と。指輪は、弟に自分を思い出してもらうためのものなの?弟に自分を思い出してほしいの?弟の屈辱と苦しみから弟を救ったの?白鳥にされた苦しみ?確かに、「可愛い白鳥よ」って呼びかけていたけれど、と混乱。

 

帰宅後、手持ちのDVDの台本を取り出して確認。

「dies Horn,dies Schwert,den Ring sollst du ihm geben. この角笛と剣、指輪を弟君に渡してください」「doch bei dem Ringe soll er mein gedenken. しかし指輪は、彼が私を思い出すため」「der einstens dich aus Schmach und Not befreit. かってあなたを屈辱と苦しみから救った私を」。確かに指輪を弟に渡せと言っているし、彼、弟が私を指輪で思い出すように」と言っているな、救ったのは、あなた、エルザをのようだけれど。

・・・と、指輪を贈った相手は弟だったのか・・・と今更知ったのでした。