MET オペラ ムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフ》 | 翡翠のブログ

翡翠のブログ

日々の徒然をつづっています。コメントは承認後公開させていただきます。

初めてMETライブビューイングのオペラを観てきました。前から、ちらりとは知っていたのですが、映画館で観るオペラというのが3700円というのが、結構高いなあと思っていました。舞台で生のオペラよりはお値打ちですけれど通常の映画は1500円くらいなので。しかしSNSでMETのオペラ、いいとの情報を見て、ちょうど観てみたいプログラムもあり思い切って行ってみました。結果、すごく良かったです!

 

今回観たのは、ムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフ》

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演出:スティーヴン・ワズワース
出演:ルネ・パーペ、デイヴィッド・バット・フィリップ、マクシム・パステル、アイン・アンガー
上映時間:2時間31分(休憩なし)
MET上演日:2021年10月9日
言語:ロシア語

 

まず、ムソルグスキーというのに惹かれ。亀井先生の著書「チャイコフスキーがなぜか好き」ではないですが、チャイコフスキーもムソルグスキーもショスタコーヴィチも、何か惹かれるのです。


さらにWebサイトの画像を見て、これは私の好みそうな感じで期待できそうと。ストーリも歴史もので固そう、重そうなのがまた好みと、慌てて前売りチケットを購入。ただMET、なかなか観に行くのに敷居が高い。上演は1日1回真昼間のみ、作品の上映期間は1週間のみ、間に週末が1回しかない。きつ!週末に予定が合わなかったら、平日休むしかない。予定のやりくりがきつい!

 

しかし観に行ったかいがありました。期待通り、最近のモダンシンプルな演出ではなく、豪華な衣装、豪華なセットで、これぞオペラ!という感じ。最初の群衆の合唱も、その後の戴冠式の場面も良かった。特に戴冠式は、物語のクライマックスという感じで盛り上がりました。でも、実際にはそこから悲劇の結末に向かうのですよね。バスのルネ・パーペ演じる新皇帝ボリス・ゴドゥノフは渋くて素敵、罪の意識に恐れおののき追い詰められるボリスがすごく良かった。

 

サイトのストーリー紹介より

「16世紀末のロシア。民衆が新皇帝ボリス・ゴドゥノフに歓呼している。だがボリスの帝位は、正統な後継者である皇子ドミトリーを暗殺して手に入れたものだった。暗殺を目撃した修道僧ピーメンから事実を聞いた修道僧グリゴリーは殺された皇子になりすまし、ボリスへの反乱を扇動する。 ドミトリーが生きていた!との報に怯えるボリスは、ピーメンからドミトリー殺害の様子を聞かされて狂乱する。息子を後継者に指名し、息絶えるボリス。偽ドミトリー軍はモスクワに迫り…。」

 

世界史は全ての国、全ての時代でうといので、調べたところ史実に基づくストーリーではあるけれど、現代では、おそらくボリスはドミトリーを暗殺してはいない、ドミトリーは事故で亡くなったとの見解が主流のようですが、物語の中では罪の意識に苦しみ、恐れ、神に祈る。帝位についてからは民衆を思い、善政をしこうとするも天災が続き、偽ドミトリーが迫り追い詰められる。映画なので顔の表情がよく見え、汗の流れるボリスの様子が、一層それらしい。

 

息子のフョードルも可愛いらしくてすごく良いし、勉学に励む息子をと、婚約者を失った娘クセニヤを可愛がる親子の情感の様子もすごく良かった。最後に息子に良き皇帝であるよう教え諭し、姉を守れと言い残して、息子と娘に看取られ亡くなるところも良かった。

実際の史実では、シュイスキーの裏切りの元、偽ドミトリーの侵攻によって息子のフョードルは捕まって若くして処刑され、姉クセニヤは偽ドミトリーに慰み物にされたあげく修道院に入れられたらしい。それを知って観ると、ショイスキーと偽ドミトリー(=修道僧グリゴリー)に一層、憎々しさを感じながらオペラを楽しめるという。

 

今まで、自分の中のオペラベストは「トゥーランドット」「アイーダ」だったのですが、そこに「ボリス・ゴドゥノフ」が加わった感じ。ベスト1かも。ただ、アリアの耳に残るベスト1は「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」かなあ、やっぱり。あと、紫禁城での「トゥーランドット」公演は豪華さでもマイベストだし。でも、オペラで時々感じていた納得のいかなさ、突っ込みもなく、物語的にはこれがマイベストと思います。また観たい、機会があれば繰り返し観たい超好みのオペラでした。

 

MET、良いなあ、都合がなんとかなったら、また観に行きたい。