ヴェルディ『オテロ』×シェイクスピア『オセロ』 | 翡翠のブログ

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オペラ ヴェルディ『オテロ』を観て、合わせてシェイクスピア『オセロ』も読むという読書鑑賞会。参加したかったのですが、別件が同日にあって参加できませんでした。しかし、両方観て読むって面白い企画だと思ったので、読み、観ました。

 

動画 ヴェルディ:オテロ (カラヤン, 1974年)

 

 

1974年 ミュンヘン, 1973年 ベルリン

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
演出:ヘルベルト・フォン・カラヤン
オテロ:ジョン・ヴィッカース
デズデモナ:ミレッラ・フレーニ
イヤーゴ:ピーター・グロソップ
エミリア:ステファニア・マラグー
カッシオ:アルド・ボッティオン
ロデリーゴ:ミシェル・セネシャル
モンターノ:マリオ・マッチ
ロドヴィーコ:ジョゼ・ヴァン・ダム
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団

 

オープニングの嵐の場面は映画調。カラヤンの演奏場面が一瞬写ったけれど、オペラ部分は舞台風ではなく、でも映画というほどでもなくテレビドラマっぽい。

動画は声も歌も良いし、演奏はカラヤン指揮にベルリン・フィルと言うことなしに素晴らしいのですが、残念ながら著作権の関係だとかで、部分的に無音の個所があり。それがオテロとデズデモーナの二重奏部分なので、聴けないのは惜しすぎる。

デズデモナ役は、以前観た蝶々夫人を演じ、先日観た動画ラ・ボエームでもミミを演じていたミレッラ・フレーニ。

あっという間にだまされ、妻を疑い破滅に進んでいくオテロの狂気の演技は良い。しかし悲劇の主人公たちは、皆、言葉が足らない。だからこそドラマになるのだけれど。

 

手元にあったオペラブックのDVDも再視聴。収録舞台はこちら。

 

ミラノ・スカラ座 2001年

指揮:リッカルド・ムーティ
演奏・合唱:スカラ座管弦楽団&合唱団
オテロ:プラシド・ドミンゴ
ヤーゴ:レオ・ヌッチ
カッシオ:チェーザレ・カターニ
ロデリーゴ:アントネッロ・チェロン
ロドヴィーコ:ジョヴァンニ・バッティスタ・パローディ
デズデーモナ:バルバラ・フリットリ
エミーリア:ロッサーナ・リナルディ
モンターノ:チェーザレ・ラーナ
伝令:エルネスト・パナリエッロ

 

こちらは最初の嵐と船の場面も完全に舞台公演。でも群衆、人が舞台いっぱいにいるので迫力は十分。劇場で観たらすごいだろうな。

 

オテロ(プラシド・ドミンゴ)とデズデーモナ(バルバラ・フリットリ)の二重唱、素晴らしいな。悪役のヤーゴ(レオ・ヌッチ)の悪っぷりも良いし、カッシオ(チェーザレ・カターニ)も若く魅力的で、オテロが策にはまって、妻デズデーモナが心変わりしたのではと疑心暗鬼にかられた気持ちが少しわかる。愚かな疑いなのだけれど。

 

最初の凱旋時も群衆が、三幕の最期、悲劇に向かう直前、勅使から勅印を受け取る時にも群衆が英雄万歳を叫んでいるのに、この変化。疑いに捕らわれ、苦しみあがくオテロの狂気の様も良いし、それを冷たく見下げるヤーゴもいい。最後に真実を知り、デスデーモナのところにいざり寄るところも。もちろん冷静に考えるとデズデーモナに非は一片も無く、勝手に疑われ殺されたひどい話なのだけれど、悲劇を楽しみに舞台に足を運んだら、気持ちよく泣けたと思います。いい舞台。オテロ役のドミンゴは年齢的なものもあり一連の公演では途中降板やキャンセルもあったそうで、解説を書いている方がちょうど観る予定であった回も代役であったそう。しかし、この動画では、素晴らしい歌と演技と思ったし、年齢的なやつれが、かえって最後の狂気と悲嘆にあっているようにも思いました。

今回観た動画と見比べて、どちらが良い悪いではないけれど、私の好みは手持ちのこのDVD版の方がオテロも、ヤーゴも好み。特にオテロの声も歌も破滅への狂気の演技もすごいなあと感じる。

 

シェイクスピア『オセロ』

 

読んだのは新潮文庫版のオセロー。

以前に購入し手元に持っていて、一度ざっと読んだことはありましたが、戯曲はどうもあまり読むのが好きでなく、味わうほどには読んでいなかったものですが。しかし、今回オペラを観たことによって、読みやすく、場面をイメージもしやすく思いました。
 
オペラ版とシェイクスピアの戯曲を比較すると、一幕、オセローとデズデモーナが知り合い、結婚を決めるまでの経緯がオペラには全くありません。そのため結婚に反対するデズデモーナの父親ブラバンショーも登場しません。オペラでは、開幕シーンは嵐の海からオテロの凱旋で、ビジュアル的にも心をつかむ場面ですし、オテロを英雄としてたたえる民衆の歌声も舞台に観客がグッと引き付けられ、入り込む演出と思います。
一方でシェイクスピアの戯曲版の二人のなれそめは、最初に読んだ時には冗長に感じたのですが、今回読んで、登場人物の肉付けというか、二人が愛し合うに至った背景、経過が読んでイメージとしてふくらむ。そして、それなのに話し合ったり、言葉を交わして疑いをときほずす機会を持たなかった残念さを一層感じるように思いました。
戯曲ではセリフ、会話が非常に多い。しゃべり倒す勢いで多いので、ここまでしゃべりまくるのに、肝心な会話はできないのだな、一度疑心暗鬼に陥ったら、こんなにもたやすくイアーゴの奸計にだまされてしまうのだ、とも一層思いました。
戯曲自体は、やはり今でも苦手感があるのですが、舞台を観たことで読みやすくなりました。今回観たのはオペラの舞台動画ですが、シェイクスピアの戯曲をそのまま舞台化した劇も観てみたいです。