今日は、「爆クラ アースダイバー vol.3 トンネルのクラシック 〜暗闇で聴く打楽器、声楽、器楽、そしてオーケストラの音」という、ちょっと変わった演奏会に行って来ました。
愛知県春日井市に残る旧国鉄中央線・愛岐トンネル群の中で演奏すると言う面白い趣向です。1900年から1966年まで利用されていた、旧国鉄中央(西)線の廃線跡に残された愛岐トンネル群のうち、3号〜6号(定光寺駅〜県境)の4つのトンネル空間を使う演奏会です。このトンネル群は紅葉の時期には一般公開もされるそう。
爆クラアースダイバーというのは、サウンドアーティストの湯山玲子さんとサウンドシステムの石黒謙さんらが、クラシック音楽を自然や建築物などの「環境」のなかで、温度や匂い、風や自然光の中で聴く=体感するというサウンドアートプロジェクトなのだそうです。
JR中央本線の定光寺駅で下車。
定光寺は無人駅です。青空に河と山、綺麗な景色。
そこから小径を300mほど歩き、愛岐トンネルの入口ゲートへ。
開始前にトンネル前で湯山玲子(サウンド・アーティスト)さん挨拶。
3号トンネル
「打楽器と声の闇」 即興演奏
肉声で歌のような声と打楽器。トンネルの壁に影が映って、確かに原始の洞くつで、こうやって音楽は始まったのかなと思われた。かなり宗教儀式っぽい。
池上英樹(打楽器・マリンバ・パフォーマンス)
白井剛史/プリミ恥部(ボイス&身体パフォーマンス)
竹林を通って次のトンネルへ。
4号トンネル
「合唱の闇」 12人の女声アンサンブル
名古屋芸大・女声アンサンブル Marimo座
尊きイエスよ
よき羊飼いは蘇られた
2人のセラフィン、互いに呼び交わしたり
マリアは天に昇りたもう
讃えよ、シオン
トンネルの中での合唱は結構綺麗に聴こえて、昔々の暗い灯りでの教会ミサを想像しました。
椅子付きVIP席で申し込んだので椅子があって楽なのですが、3号トンネルから椅子を運ぶシステムだったので、その椅子を運びこむより先に一般席の人が自分の持ち込みの椅子で先に入ったようで、椅子席から演奏者はほぼ見えず。さらに到着して椅子に座った時には、定刻スタートの合唱演奏が既に2曲歌い終わっていました。そのため、5曲歌った後、もう一度1曲目が歌われました。
演奏後、次のトンネルに移動するときに、合唱の方々とキャンドルの前を通り、こういう状況で歌っていたのね、と。写真は地面に並べられたキャンドル。
次のトンネルへ。ここは少し遠目で、しばらく歩きます。道も石が多く、石の上に歩いた拍子に足を取られたり、少し足首をねじったりするので、スニーカーで行って良かった。もう少しホールド感のある靴でも良かったくらい。それにしても景色が良いです。
来週くらいから紅葉時期の一般開放かな?まだ紅葉は少し早い感じでしたが、ところどころ色づいている樹もあり。
5号トンネル
「フルートとギターの闇」
泉真由(フルート)
松田弦(ギター)
ピアノ協奏曲「夢」ドビュッシー
「海へ」より<白鯨> 武満徹
ルーマニア民族舞踏 バルトーク
フルートとギターのデュオというのは、とても心地よかった。トンネルに音色も雰囲気もあって、ちょっとしたライブハウスのようでした。
5号トンネルは、あらかじめVIP席椅子が配置されていたため、観やすい席でした。代わりに次の6号トンネルへは各自で椅子を運んでくださいとのこと。5号と6号の間は、すぐそこなので、あっという間。6号トンネルの前の広場ではワインなども販売されていました。
6号トンネル
最後のトンネルは長め。「声楽、交響曲と管弦楽の闇」
入り口近くの前方は外の光も入りますが、奥の方はくの字になっていることもあって暗い。
前半は無伴奏のソプラノ。
林正子(ソプラノ)
「2つのヘブライの歌」より
第1曲「頌栄(カディッシュ)の祈り」、
第2曲「永遠の謎(エターナル・エニグマ)」ラヴェル
プログラムには、この曲が書かれていましたが、2曲目は歌劇「カヴァッレリア・ルスティカーナ」より<間奏曲>のように思えたのですが。トンネルの中に美しく響いて、素晴らしい歌声でした。
最後は、トンネルの奥部でDJ。オーディオシステムによるオーケストラ再現。
石黒謙(サウンドシステム/アコースティックリバイヴ)
湯山玲子(サウンド・アーティスト)
トンネルの中でのクラシックなんて、一体どんな風に聴こえるのだろう?コンサートホールとかは、反響、反射も考えて、良い音、響きになるよう設計するわけですがトンネルではそんなことしていないだろうし、爆クラ?爆音?等、思っていたのですが、思っていた以上に音が良く楽しめました。
ただトンネルの中は結構寒かった。特にラストの長い6号トンネルは、奥の方から冷たい風が吹いてくる感じで特に寒く、私は演奏開始時から、ヒートテック、長袖タートル、長袖Vネックのニット2枚重ね、ダウンコート、ネックウォーマー、毛糸帽子、ストールをひざ掛け代わりという防寒体制。一緒に行った子どもも演奏途中で持って行った防寒具を総動員していました。
演奏会後、トンネルの外に出ると16時くらいでしたが、少しずつ陽がくれかけていました。駅に向かって戻っていると、道の横の川の水面に山の景色は鏡のように映って、とっても綺麗でした。
いつもになく混雑しているのかもしれない定光寺駅。電車は、走ってきたのは、この駅では停まらず通り過ぎた特急です。
なかなかない面白い音楽体験でした。昔ながらの教会やミサで音楽を聴いたような、光と影と音の不思議な音世界でした。加えて周囲の景色もとても良く、足を伸ばして良かった一日でした。もう少し後の紅葉の季節には、もっと景色や良いだろうと思います。
今回のイベントは、時々参加している猫町倶楽部が協力しているそうで、読書会に参加したおりにチラシを見て参加したのでした。私は家族と一緒で、かつ、歩く自信もなく椅子付きVIP席を申し込んだくらいなので、観客として参加したのですが、普段よく一緒になる読書会メンバーが観客としても、スタッフ協力側としてもたくさん居て、会えたのも楽しかった。運営側は、なかなか大変なことがたくさんだったと思うのですが、おかげで楽しませていただき感謝です。