以前に何度か出て面白かったシャーロック・ホームズ読書会。ここ最近は仕事など予定が合わなくて参加できないでいたのですが、久しぶりに参加できました。
シャーロック・ホームズ最後の挨拶
私が読んだ各話の感想。
・ウィステリア荘
アフリカ系混血の使用人のイラストがちょっとひどくて、現代の目で見ると複雑。
「グロテスクなできごとから恐ろしい犯罪までは、ほんの一歩の差でしかない」
・ブルース=パーティントン設計図
ホームズの兄、マイクロフトが再登場する点でこの中で特に興味深かった一編。シリーズを読む前はホームズが敵のモリアーティ教授以外には比べるもののいない天才・超人として描かれていると思っていたので、ホームズが兄を自分以上の頭脳を持つと言わしめる存在が登場したのは意外だった。
ワトスンとの繋がりが描かれている点も好きなところ。「『ぼくも、君が最後の瞬間になってしりごみしたりしないと信じていたよ』そう言うホームズの目には、一瞬、わたしがこれまで見たことのない、やさしい感情がただよった」、本当に良き相棒だと思う。
ホームズ「ぼくがゲームをするのは、ゲームそのものの魅力のためだけです」
・悪魔の足
ホームズの危険すぎる毒ガス実験。「何か危ない症状が現れたら、実験はいつでも中止できる」って、いや、危なく死ぬところだったと思う。ワトスンがホームズを抱きかかえて庭に脱出していなかったら。脱出後のホームズのワトスンへの感謝と謝罪の言葉、それに対するワトスンの返しの部分は読んでいてとても良かったですが。
この話では、ホームズは犯人を見逃しているのですが、その時に語られるホームズの心情も良かった。ホームズは感情も愛情もある人間なんだと伝わって。「ぼくは今まで女性を愛した経験は一度もないのだが、仮にぼくが愛していて、しかも、愛するその女性があのような悲惨な目に遭わされたとしたら(略)同じ行動に出たかもしれないよ」
・赤い輪
ろうそくの光を使った暗号が登場。1回の光がA、20回でTといったようにアルファベットの何文字目かを数で表す方式のよう。効率は悪いですよね、この方式。ホームズの時代にはもうモールス符号があったと思うのですが。
・フラーンシス・カーファックスの失踪
ホームズが間に合うか?と駆けつけるところがドキドキして良い。しかし特注の大きな棺は誰が見ても結構目立つのではないだろうか。
・瀕死の探偵
今回一番面白く興味深く読んだ。もちろん途中から、これはホームズ仮病だよねというのはわかって読みますが。瀕死のはずなのに、すごいスピードでドアにダッシュするところなど、映画やドラマで観たらちょっと笑えるのではないだろうか。一方で、犯人のカルヴァートン・スミスがホームズに菌を送り付けるというのは面白い手口だった。それと、最後にワトスンに説明をするところ、近くに寄られたら君の眼はごまかせないと言うところは良い。それと上着を着せてもらうところも良いなあ。
・最後の挨拶
第一次世界大戦直前に引退後のホームズが活躍する話。ホームズがスパイの役をするところも、国家を背負った働きをするところも他の話よりスケールが大きくて面白い。雑誌に掲載されたのは1917年と第一次世界大戦のさなか。そのためか、ホームズの最後の言葉も戦争を強く感じさせる。
「ワトスン、東風が吹き出したよ」「ぼくたちのうち、どれくらいたくさんの人間が死んでしまうかわからない」「嵐がやんだ時には、きっと、輝かしい日の光の中に、この国はより清らかで、より優れた、それに、よりたくましい国に生まれ変わって、存在していることだろう」
・ボール箱 (河出文庫では「シャーロックホームズの思い出に収録)
セアラは確かにろくでもない女かもしれないが、全ての原因は犯人のジム・ブラウナー。色々理由を語っているけれど、アルコール依存のこの男が根本的に全て悪い。
ホームズの持っているストラディヴァリスは、質屋で、500ギニ―(1260万円)の値打ちがあるものを55シリング(66000円)で買った。
今回の読書会には、ホームズも翻訳されている大久保ゆう先生がゲストとして参加される予定だったのですが、この大雨による交通機関の停止によって残念ながら参加がとりやめとなりました。先生の翻訳されたホームズ、ネットで公開されているものから「瀕死の探偵」を読んだのですが、なかなか翻訳によりイメージが変わって、特に犯人のカルヴァートン・スミスのキャラクターが、手元の河出文庫のキャラとは全く異なって面白かったので、翻訳する際にその辺りのキャラ付けはどうやって選んでおられるの等、翻訳に関してお話うかがえたらと楽しみにしていたので残念でした。加えて、青空文庫のテキスト翻訳も長らくやってこられている方なので、著作権の保護期間50年の70年への延長問題などについてもお話ききたかったですし。デジタルデータと著作権について、保護と利用の共存についてもお話うかがいたく、色々先生の書かれ発表されたものを読んでいたのでした。
大久保先生のウェブサイト http://www.alz.jp/221b/holmes.html 。
読書会開催者の方から素敵な差し入れ。今作に登場するトスカワインから造られたトスカビネガー、デザートに合うということでアイスクリームにかけて皆で食べたのですが、これが甘酸っぱくてとってもリッチな味わいで美味しかったです。
もう一つ、主催者の方の奥様が作られたエッグカバー(エッグキャップ)、ホームズの鳥打帽のようなデザインで、とっても可愛い!
読書会修了後は、ホームズをモチーフにしたレストランにも行きました。ビア&レストラン シャーロックホームズ
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外観もそれらしい。
そして内装も。パイプやタイプライターが飾ってあったり、壁に作中と同様ホームズが銃で撃ったヴィクトリア女王のイニシャルが再現されていたり、ホームズファンに嬉しい感じ。
ランチ。付いてきた大きなパンは名物のホームズ・パン、美味しい。お茶やケーキも味わってみたいです。
楽しい読書会でした。いよいよ次回はシリーズ最終巻、シャーロック・ホームズの事件簿。とても楽しい会なので是非出たいのですが、開催予定日には仕事の予定で残念です。でも次巻も読もう。