痛すぎてどうにもならなくなって、結局家に戻った。

その後彼とはあまり会話をしなかったのを覚えてる。

どうして何も話してくれないのか、それとも私が話しづらい雰囲気を作ってるのか、

どうにも居た堪れない気持ちになりながら床に着いた。


そんな状態のまま4日くらい過ぎた頃。突然の出血とお腹の激痛。

生理の血なんか比にならないくらいの量の出血が襲ってきた。

痛くて痛くてどうにもならず、会社を早退して病院で診察を受けた。


…お腹の中の赤ちゃんが流れ始めている。

だけど、できらずにお腹の中で残ってる状態なんですよね、今これは。


そんなしんどくてうつろな私にそう説明された。つまり流産なんだと。

虚ろながらもその言葉だけははっきり聞こえた。しかし、その事実は認識しきれずにいた。


彼に連絡したが当然仕事中で電話に出てもらえなかった。

仕事終わった頃に電話をくれたがこっちは手術中で出れなかった。

終わって落ち着いた頃、迎えを呼びたいから電話したいと看護婦さんに伝え、彼に電話をした。


彼は慌てて飛んできてくれた。

そして車の中では無言だったが、家についた瞬間、泣きながらゴメンと何回も繰り返した。

私もこればっかりはどうにもならなかったのかもしれないと諦めがついてたので、

もうええよと泣いてる彼を抱きしめて慰めた。


「また頑張ったらええやん。今日いなくなっちゃった子はきっと天国で幸せになってくれるよ。」


じゃないと天国で赤ちゃんが悲しんじゃうもんね。

パパもママも元気でいてくれなきゃイヤだって言われちゃうよなんて勝手な解釈で彼を慰めた。


結婚って、きっとこうしていろんな壁を乗り越えていくもんなんだろうって思った。

だけどまだ温和に終わらないなんて考えもしなかった。

数日後、部屋の掃除をしている時に見つけたものは、ヘルスの割引券だった。

行った事ある方ならご存知かと思うが、

割引券の裏には大概の女の子が名前とメッセージを書いてくれる。

私が見つけたものはご丁寧に行った日付まで明記されてた。


その日付は、もう行かないと約束してくれた日より後だった。

後というか直後というのが正解だっただろうか。

しかも日付は別で、もう3枚でてきた。それぞれ別のオンナの子のものだったが。


見つけちゃいけないものを見つけちゃった。

でも今は仕方ないのかな、すぐ止めろって言ったって止めれないよね、

じゃあこれは見なかったことにして彼には内緒にしておこう、そう決めたのに涙が止まらなかった。


数時間後、彼が帰ってきた。

笑顔で「おかえり~」と言って迎え入れてあげようと決めてたはずなのに、

実際は顔を見たら涙があふれ出てしまった。

それでも怒っちゃダメ、笑ってすまそうと思ったのに、

彼の「どうしたの?」の問いかけに私は笑顔でいれなかった。


「どうした・・・?」

「…ごめん、見つけちゃったの、掃除してたら」

「…割引券?」

「うん、ごめん…」泣き過ぎてそれ以上言葉が出なかった。

怒りをぶつけたい気持ちと、笑顔で許さなきゃって気持ちがぶつかり合ってた。

「…ごめん」とだけ言ってそのまま黙って下を向いてた彼に、私はついに我慢できなくなってしまった。


「うそつき!!めっちゃうそつきやんか!!」

思わず口から本音が出てしまい、どうしようもなくなった私は家を飛び出してしまった。

でも行くあてがなく、とりあえずバスに乗ろうと思ってバス停まで走っていった。

追いかけてくる彼に追いつかれないように一生懸命走ってたら、

私は歩道から足を踏み外し、思い切り転んでしまった。

思い切りお腹を打ち、次の瞬間、激痛が走った。

今思えば風俗の世界に飛び込むのに迷いはあまりなかった。


当時の彼氏と上手くいってなくて買い物でストレス発散、

んで、クレジットカードの請求額が大変な事になった、なんてありがちな話。

ちなみに当時の彼氏はなぜか私がしたいといってもあまり応じてくれなかった。

週に1度、あるかないかくらい。


理由は簡単で、彼は風俗が大好きだった。いわゆる「ヘルス」に行ってた。

なんで私がいるのにお金払ってまで抜きに行くのか理由がわかんなかった。

彼に聞いたら「いつも同じおかずじゃ飽きるだろ。それにお店は可愛い子多いし」と言われた。


悲しかった。

自分の顔についてのコンプレックスはそれこそ保育園時代からある。

私の核心というか本気の爆弾部分でもある。

それを信用してる彼氏にそんな風に思われてるとわかったらやりきれなくなった。


案の定、仕事にも影響を及ぼし始めた。

家に帰っても彼の顔を見ても落ち着かなくなった。常にイライラしてた。

仕事場でも家でも、落ち着く場所がなくなってた。安らぐ時がなかった。

そしてついに仕事でやらかしてはいけない失態を犯してしまった。

…会社にも行きづらくなり、休みがちになった。休めば休むほど行きづらくなるのに。


そんな様子を見た彼はさすがに参ったらしく、

「もう2度とお店には行かない。約束するから結婚しよう。」と言ってくれ、結婚する事にした。

もう2年同棲してたのでお互いの両親も知っており、

子供できたら籍入れるわーくらいの事は言ってあった。

ので、子供も作ろうと決め、そしてその願いどおり私は妊娠した。

ちょうどその頃から私の気持ちも落ち着き始め、会社も順調に行っていた。

そして子供ができたから、8ヶ月くらいまでは働きますと会社にも宣言してた。


これでやっと幸せになれるって安心してた。

でも現実はそんなんじゃなかった。

お客さんに恋をするなんて考えた事もなかった。


ソープ嬢になって6年。

仕事は嫌いじゃないけど、どこか後ろめたさがあるのも事実だ。


仕事とはいえ初対面の男性とセックスができるオンナ。

お金さえもらえばセックスできるオンナ。

後ろめたくなるなという方が無理だ。

しかし好きで選んでやってる仕事だからちゃんとやってるつもりだ。


しかし、そんな仕事を好き好んでやってるんだから、幸せになれるはずもないと思ってた。

お金もらって初対面の人と簡単にセックスしてしまうようなオンナを、

今までに何人の男とセックスしたかわかんないような女を誰が彼女にしようか、

嫁になんて考えてくれるわけないと思ってた。

だから一生独身でいるつもりでこの仕事をし、少しでも多くの貯金をし、将来に備えようと考えてた。


それだけじゃなく、過去の恋愛もいろいろあり、もう正直恋愛はうんざりやと思ってた。


そんな私がある人と出会い、考え方や気持ちを覆された。

しかもそのある人がお客さんだなんて全く考えてもみなかった。


私を幸せにしてくれる彼の事や仕事の事など、いろいろ書いていきます。