春雷 41 | 背徳的✳︎感情論。













そこから神宮の態度は一変していた。


それまでは生徒らしく勉強や部活の話が主だったのに、急に距離を詰めようとするように食事や遊びに誘うメッセージが多くなった。

大野先生は、それを断り嗜めるメッセージを繰り返し送っていた。その度に神宮は『二宮先輩とは行ったくせに』と拗ねたスタンプで締めていた。

だから、大野先生もそこまで深刻に捉えていなかったのかも知れない。でもブロックしなかったのは俺との写真を握られているせいだ。


そして10月のある日付で神宮の態度がまた変わる。


『昼休み、二宮先輩とイチャついてたね』


『今までは大目に見てあげてたけど、これからはどうしようかな』


『先生、もっと危機感持った方がいいよ』


そんな言葉のあと、写真が添付される。

それは秋の日差しが眩しい中庭で俺と大野先生が並んで飯を食っているところだった。


あの時も、アイツ、大野先生のことを見てたのか


ゾッとして背中に震えが走る。


俺が大野先生のコンビニの袋を覗いているところ。

玉子焼きを大野先生に食べさせているところ。

2人して俯いているところ。

立ち上がった俺が、大野先生の頬に触れているところ。

そこから大野先生に顔を近づける様子まで何枚かに渡って写っていた。

けれど幸いカメラの位置からは俺の後頭部が手前にあり、キスをしている場面は写っていなかった。


『俺はいつだって大野先生のこと見てんだよ?』


『二宮先輩は今、クラスの女子とイイ感じなのにさ、大野先生にまで手を出すとかナイよね』


『ねぇ先生、俺がこの写真、SNSにアップしたらどうなると思う?』


『それとも学校の裏サイトに貼っちゃおうかなw


神宮の煽りの言葉が続き、


《やめろ、何でこんなマネをするんだ》


やっとって感じで大野先生のメッセージが入る。


『何でって、分かるでしょ?』


《分かるワケないだろ。どう言うつもりなんだ、目的を言え》


『あのね先生、俺、先生を初めて見たとき思ったんだ。コレは俺のだって』


《どう言う意味だよ》


『俺もさぁ、自分でどう言う意味か分かんなかったの。分かんないのに身体が勝手に先生を追いかけてた。でさ、先生と二宮先輩がイチャついてるのを見てる内に思い出したんだ』


《何を》


『先生も、ホントは薄々気付いてるんでしょ?』


『俺が誰なのか』







「ねぇ、神宮くんは何を言ってるの?」

そこまで読んで、小林先生が眉間にシワを寄せて俺に視線を向けた。

俺の頭の中では色々なことが音を立てて繋がり、一つのパズルが完成されていた。

けれど今それを先生に話している時間はない。

「あとで全部話します。とにかく今は、大野先生を見つけなきゃ」

俺は早口に言い、小林先生の手からマウスを取って先に進んだ。

二宮くんはもう分かってるんだね」

先生はそう呟いてパソコンの正面を俺に譲って椅子を動かした。







神宮の問いに対して大野先生の応えはなく、それからまた数日何もない日が続いた。

そして日付は昨日になる。


『二宮先輩、クラスの女の子に熱烈アタックされてるみたいだよ。知ってた?』


『先生が冷たくしてるから、その子と付き合っちゃうかもね』


『先輩が女の子と付き合っちゃったら、先生泣いちゃう?』


『ねぇ、自分が冷たくしてれば、俺が先輩に何もしないとでも思ってる?』


《何が言いたい? 言っておくけど俺と二宮は何の関係もない》


『関係ないワケないでしょ』


《何の関係もない》


『じゃああの写真、学校に送っちゃおうかな。関係ないで済むかな』


《勝手にしろ。そんな脅しには乗らない》


『先生はそれで良くても、二宮先輩はどうなるかなぁ』


《やめろ、二宮を巻き込むな。何が目的なんだよ》


『目的? そんなの決まってるでしょ』


『でもそうだな、泳がせておくのも そろそろ飽きて来た。二宮先輩は全然分かってないみたいだし』


『先生が二宮先輩に泣きつくかと思ったんだけどな。あの頃みたいに』


『まぁいいや。俺の目的は先生を俺のモノにする事だよ。前と同じ様に、二宮先輩よりも先に』


『あとさ、あの人との勝負に一回も勝ててないのが心残りなんだよね。ボロボロに負かして、目の前で先生は俺のモンだって見せつけたいんだよなぁ』


『そんなワケだから、先生、先輩に俺と剣で勝負するように伝えてよ。理由が分かってなくても、どうでもいいからさ』


《そんな勝負に二宮が乗るわけないだろ》


『断る選択肢はないんだよ、先生』


『ねぇ分かってる? 俺はあの写真をネタに先生を脅してるの。あの写真を拡散させたら、先輩は学校に居られなくなると思わない?』


『二宮先輩が大事なら俺の言うこと聞いてね。ってその大事な二宮先輩を俺がボコボコにすんだけどw


《二宮はお前なんかに負けないよ。お前よりずっと強い》


『いいね。でも俺が勝ったら先生は俺に あんなことやこんなこと、されちゃうからね』


『文化祭のあと、格技室に二宮先輩を連れて来てね。来ないとどうなるか分かるよねw



大野先生と神宮のLINEはそこで終わっていた。

















つづく




月魚





今週も読んで頂いてありがとうございます😊








前記事と前々記事にコメント沢山頂きまして

ありがとうございました!


しかしながら、ごめんなさい

今回はコメント返信

出来ておりません💦

下手にネタバレしてしまいそうで…

ご了承くださいお願い





えぇっと

嫌なシーンが続いておりますが


✨物語の中でくらいはハッピーエンド✨


それが私のモットーですので

安心して読んで頂けたらと思いますちゅー


(これもひとつのネタバレですね( ̄▽ ̄;))




あと何話続くか分かりませんが


最後までどうぞお付き合い下さい❤️