モザイク。 7 | 背徳的✳︎感情論。

その7

ニノちゃんの誤算。
















相葉くんちを後にして暇になった俺は、どうしようかなって、ちょっと考えて、リーダーんちに押しかけることにした。


友達が俺にくれたDVDは2枚あって、もう一枚もカバンに入れて来ていた。




まだ、一度も入ったことのないリーダーの部屋。

チャイムを鳴らすと、インターフォンから眠そうな声で「誰?」って聞こえてきた。

俺はモニターにアップになるように、カメラに目一杯顔を近づけて、「俺俺」ってピースした。




「にの? どーした、こんな時間に」

ドアを少し開けて、目をショボショボさせたリーダーが顔を出した。


「約束したDVD、持ってきた」

俺は当然のような顔でそう言って、口の端をつり上げた。

「約束って・・・そんな約束してねーわ」

リーダーが思わずって感じで笑った。

「したよ。約束」

「してねーって」

「もーいいじゃん。せっかく来たんだから、ちょっと入れてよ」

強引に扉を開こうとすると、
「ダメだって」
リーダーが閉めようとする。

「い・れ・ろ・よ!」
「帰れ…!」

力比べみたいな押し問答がしばらく続いた。

二人とも疲れちゃって、なんだか可笑しくなってきた。
いつの間にかドアのこっちと向こうで、どちらからともなく笑い出していた。



「・・・分かったよ」

笑っちゃったら力が抜けたのか、やっとリーダーが折れて、渋々俺を招き入れた。





初めて入るリーダーの部屋に、俺はちょっと興奮して、「へぇ~」とか言いながら、ぐるっと中を歩いた。

シンプルな家具で統一されてて、壁際の棚には彼の作品が並べられている。

「あ、DVDって言ったけど、コレ、Blu-rayだから」

興奮してることを隠すように、どうでもいいことを口にすると、

「どうでもいいって、そんなこと」

リーダーが笑って、缶ビールを俺に差し出した。


「あんま、その辺のもんに触んなよ? まだ乾いてないから」

棚の上のフィギュアに視線を送ってそう言って、リーダーが自分のビールを一口飲んだ。


「はいはい。あ、俺、車で来たから飲めない」

俺は受け取ったビールをテーブルに置いた。

「泊まってってもいいなら、飲むけど」

口の端をつり上げてリーダーを見ると、彼はソファーに座りながら、

「帰れ」

って短く言って笑った。




「で・・・・夜中にわざわざヒトんち来て・・・こんなDVD見るのかよ」

「いいじゃん。一緒に見よって約束したじゃん」

「だから、約束なんてしてねぇっつーの」

文句言いながらも、それを再生しなきゃ俺が帰らないって分かってるリーダーが、テレビの電源を入れた。


俺はいつもの癖で、リーダーの隣にぽすんと座った。


でも並んで座るって・・・よく考えたら、男同士でえっちなものを見る距離じゃないよね・・・


でも変に移動したら、なんか意識してると思われそうだし・・・


ちらりとリーダーの横顔を見ると、彼は別に平気な顔でリモコンを操作してる。

隣にいることが当たり前すぎて、こんな時でも違和感ないのかな。

そう思うと、ちょっと可笑しかった。








息を切らしながら、絡み合う男女。


画面いっぱいに広がるモザイク。


申し訳程度のストーリー設定は、突飛すぎて意味が分かんない。


なんだコレ・・・
さっき見たヤツと大して変んねーし、これの何が面白いんだろ。


開始早々から飽きちゃって、俺は画面から視線を外し、目をこすった。



隣のリーダーを窺うと、やっぱりつまんなそうな顔して画面を眺めてる。

全くもって無反応。



ホントに何にも感じないのかな・・・



俺は確かめたくなって、彼の脚に乗せてた手を滑らせ むぎゅ っと 彼 に触れた。


「ばっ、おまっ、何すんだよ!」

リーダーが慌てて俺の手を振り払う。


俺は声を立てて笑って、
「だって、興味ないフリしてんのかと思って」
言いながら、自分の手を握ったり開いたりして見せた。
「バカか・・・」
「リーダーって、ホントはそっち系?」
リーダーの言葉を遮って、俺は右手の甲を左頬にあて、口の端をつり上げた。

触ってみた 彼 は、ホントに全然反応してなかった。


ま、俺もそうだけどね・・・



「んなワケないだろ」
リーダーが面倒臭そうにそう言って俺から顔を背けて、
「もういいだろ? 消すよ?」
独り言みたいに言って、俺が返事する前にテレビを消してしまった。

「ホントに興味ないんだね」
感慨深くそう言うと、
「最初からそう言ってんじゃん」
リーダーはリモコンをテーブルにカタンと置いた。

「まぁ・・・俺も正直、こんなのにはソソられないよ」
「自分だって そうなんじゃん」
俺の言葉にリーダーが笑った。

「だってさ、あんなオンナより、俺の方がよっぽど色っぽくない?」
冗談めかしてそう言って、目を細めてリーダーを見る。

彼はちょっと呆れた顔して身体を引いて、俺の事を上から下まで眺め、「ふっ」って鼻で笑って顔を背けた。


「なんで笑うんだよ」

俺はなんだか悔しくて、

「俺、リーダーなら簡単にオトす自信あるけど?」

真顔でそう言って、着ていたシャツのボタンを鳩尾が見えるくらいまで外して、彼の太ももに両手をついた。


リーダーがびくっとして俺を見る。


そんな彼を上目づかいで覗き込んで、胸元が見えるように、少し前に身体を傾けた。

薄く唇を開いて、誘うように息を吹きかけ、




「ほら、俺の方がソソられんだろ?」


口の端をつり上げた。









「・・・うん」


リーダーが小さく頷いて、ちょっと笑った。

それと同時に、彼の手が俺の首に回され顔が近づく。




あっと思ったときにはもう、彼の唇が俺の唇と重なっていた。



熱い舌が俺の中に入って来て初めて、俺はリーダーにキスされてるんだって理解した。


抵抗する間もなく、俺に絡みつくその舌は、少し苦いビールの味がした。






「ちょ・・・っ リーダー・・・冗談・・・」


我に返って、慌ててリーダーの胸を押して彼を俺から引き離した。


「冗談、キツ過ぎ・・・」


リーダーは何も言わずに、熱っぽい目で俺を見つめてる。



なんだよ

早く冗談だって笑ってよ・・・




冗談で終わらせたい俺に、目を細めたリーダーの顔がまた近づく。

「やめ・・・」

彼の胸を押す手を掴まれ、そのままソファーに組み敷かれた。

「にの・・・」

熱い息が俺に落ちてくる。

「・・・冗談・・・でしょ?」

俺は真上にあるリーダーの顔を見つめた。



「ごめん・・・だって俺、にのにオトされちゃったもん・・・」



ふふ って笑って、ゆっくりと唇が重なった・・・



 

  

 

 


たっぷりの唾液を乗せて、入り込んでくる彼の舌が、俺にそれを強引に飲み込ませる。

 

苦しくて、目を閉じた。

 

なのに、

イヤじゃない・・・

 

むしろ、

甘い・・・・

 

 

素肌に触れる、彼の手の温もりに、俺の口からは ため息が勝手に零れる。


繰り返されるキスが心地よくて、バカみたいにカラダが痺れてく。



リーダーの綺麗な手が、俺の胸からお腹、脚へ滑って、疼き出してる オレ を撫でた。

「ん・・・っ」

びくんとカラダが跳ねて、俺は力の入らなくなってしまった手で、もう一度彼の胸を押した。

「リーダー・・・あの・・・本気なの・・・?」

問いかける俺に、彼は微笑んで、

「にのが俺をオトしたんだから・・・にのが責任取ってよ」

囁くようにそう言って、また唇を重ねてくる。



彼の本気が、俺の太ももに当たってる・・・


俺を求めて熱くなってる。



そしてそれを、受け入れてもいいって、思ってしまってる自分がいる。





「リーダー・・・俺のコト好き・・・?」




「うん・・・ 大好き・・・」






子供みたいに 「好き」 を繰り返すリーダーに、俺はまた目を閉じて深呼吸した。




俺も大好きだよ、リーダー

でも


こう言う『好き』とは

ちょっと違うと

思ってた・・・




でも・・・



目を開けると、切なそうに潤んだ瞳に心が震えた。


熱いため息がこぼれる。






俺は彼の頬に両手で触れて、ゆっくりと自分から唇を重ねた。


























つづく!






月魚