その6
翔ちゃんの誤解。
俺は息を切らせたまま、雅紀の部屋のチャイムを鳴らした。
でも、何度鳴らしても出てくる気配がない。
なんだよ
なにがあったんだよ・・・
「雅紀!」
俺は焦って、ドアをガンガン叩きながら、彼を呼んだ。
なんで出て来ねーんだよ!
焦りから、無駄だと分かっていてもドアノブをガチャガチャ鳴らす。
次の瞬間、
ガチャ
軽い音を立てて、意外にも、あっさりドアは開いてしまった・・・・
「雅紀!」
俺は大声で呼びながら、勢いよくリビングの扉を開けた。
「しょ、しょーちゃん!?」
雅紀が驚いて飛び上がり、それから慌ててテレビを消した。
「なんで、しょーちゃんがここにいんの? てか どうやって入ったの?」
雅紀が真っ赤な顔して俺を見た。
「そんなことより、大丈夫なのか?!」
掴みかかるように彼に近づくと、雅紀は「わっ」って一歩下がった。
「どうし・・・・」
言いかけて、言葉を失った。
彼のズボンの前が、明らかに誇張されてて・・・
身体から力が抜けるのを感じた。
雅紀は俺の視線の先に気づいて、思わずって感じで両手で前を隠す。
「なに・・・してた? ニノと・・・・」
冷静に話そうと、思えば思うほど頭に血が上ってく。
「ニノと? なにって・・・なんもしてないよ・・・アイツ、帰っちゃったし」
俺を置いて、って最後にボソッと呟くのを俺は聞き逃さなかった。
「ニノに・・・遊ばれてんの?」
逆上する頭からそんな言葉が口をついて出た。
「は? なに言ってんの? しょーちゃん・・・」
「お前こそ、なにしてんだよ」
「だから、別になんもしてないって!」
俺の責めるような口調に煽られてんのか、雅紀の声も高くなる。
「ヒトんちに勝手に上がって来て、なにワケの分かんないこと言ってんだよ」
雅紀が俺からまた一歩離れながらそう言った。
「お前が大変だって言うから・・・走って来たんだぞ」
「誰がそんなこと言ったんだよ?」
「誰って・・・」
俺はまた かっと頭に血が上ってくのを感じた。
「お前はニノに遊ばれてんだよ」
俺は彼の腕をギュッと掴んだ。
「は? なに言って・・・」
雅紀が俺を振りほどこうと身を捩るから、俺は更に力を込めて彼を捕まえ、
「こんな状態でほっとかれて・・・」
反対の手を彼の脚の間へ滑らせた。
「ちょ、なにすんだよ・・・!」
抵抗する雅紀を、俺は力いっぱい押して、無理やりソファーの上に組み敷いた。
「俺なら・・・・絶対そんなことしない」
「しょーちゃん・・・?」
彼の、びっくりして見開かれた瞳に俺が映った。
なにやってんだ俺・・・・・
でも、俺の口から出た言葉は・・・
「好きなんだ・・・お前が」
何も考えられなくなった頭でそう囁いて、俺は雅紀に強く唇を重ねていた。
「ん…!」
口を塞がれて雅紀がもがく。
でももう、自分を止められない。
頭に血が上りすぎて・・・
「俺が・・・してあげる」
俺は左腕で雅紀の肩を押さえ込み、右手をまた彼の脚の間に滑らせた。
雅紀のカラダがびくんと跳ねる。
「しょーちゃ…!」
声を張り上げようとする彼の唇を強引にふさぎながら、熱くなってる 彼 を確認するように手のひらで包み込んで指先を順番に動かした。
「ぅあ…っ」
呻く雅紀。
その荒い息も、潤み出した瞳も、もう俺を煽る材料でしかない。
悔しくて
でも触れたくて
伝えたくなる
「好き・・・なんだ」
智くんにもチョッカイかけてるニノなんかより
ずっと本気で
「だから・・・」
切なくて、喉がつまった。
言葉の代わりに唇を重ね、触れたままの 彼 をゆっくり撫でた。
雅紀のカラダから力を抜ける。
彼は赤くなった目で俺を見つめて息をつき、ふっと目を細めた。
それから無言でポンポンって、俺の頭に触れた。
「雅紀・・・」
頭の中で、最後の糸がプツンと切れる音がした。
考えることを止め、俺は雅紀に、深く深く唇を重ねた。
つづく!