その5
ニノちゃんの勝算。
途切れる声。
激しく絡み合う男女。
艶めかしい呼吸。
画面の中で繰り広げられる、アダルトな世界。
俺はテレビの前のソファーに座ってる相葉くんの後ろの、キッチンカウンターの椅子に座って、それをぼんやりと眺めてた。
はっきり言って、俺、こう言うビデオ、
全然興味ないんだよね・・・
こんなさ、モザイクの向こうで揺れてるオンナになんて
ちっともソソられないよ
俺が独身だからって、勝手にこんなものを押しつけてくるんだもんな・・・
まぁいいよ。
今回はそれを有効に使わせてもらうから。
相葉くんちで晩飯をご馳走になった後、俺はいつもと同じようにゲームして、それからわざとらしく、思い出したようにこのDVDを彼に押し付け、「ついでだから一緒に見よう」って強引に彼に再生ボタンを押させた。
「なんで一緒に見るんだよ」
渋る相葉くんに、
「中学の頃とかさ、友達と見たろ? それを懐かしんで」
バカなことを真顔で言った。
「なんで今更そんなこと懐かしむんだよ・・・」
とかブツブツ文句言いながらも、彼はDVDに集中し始める。
まぁ、健全な男のコなら、そんなもんです(笑)
俺はキッチンカウンターに肘ついて顎を乗せ、見るとはなしに画面を見つめながら、時々壁の時計を見上げていた。
あるんだかないんだか分かんないストーリーが佳境に差し掛かった頃。
俺はケータイを取り出して、
「ちょ、ごめん。電話」
さもかかって来たかのように装いながら廊下に移動して、履歴の中から翔ちゃんに電話をかけた。
そろそろ仕事が終わってる頃だろう。
きっと悶々としてて、俺に八つ当たりしてくるはず(笑)
「もしもし? 翔ちゃん?」
『・・・なに?』
予想通り超不機嫌な声が返って来る。
その声に俺は思わず声を立てて笑ってしまった。
「・・・やっぱ相当疲れてんね」
『何の用? 切るぞ』
更に不機嫌になった翔ちゃんの声に、俺は慌てて「待って待って」って叫んだ。
『なんだよ? 俺、超機嫌悪いんだけど』
分かってます。
分かってますよ~。
俺がそうさせたんだから(笑)
「分かってます。分かってますけどね」
『なにが分かってるって言うんだよ?』
「ふふ・・・そんなことより! ちょっと相葉くんが大変なんですよ!」
ちょっとケンカ腰になる翔ちゃんをスカして、俺はわざとらしく大きな声を出した。
自分で思ったより大きな声が出ちゃって、俺はリビングの相葉くんを確認した。
大丈夫。
彼はDVDに夢中で気づいてない(笑)
『大変って・・・なに? どうした?』
明らかに翔ちゃんの声色が変わってる。
「ちょっと、電話じゃ・・・ お願い! 相葉くんちまで来て?」
『電話で言えないことってなんだよ!?』
「いいから早く! 翔さんにしか頼めないから」
それだけ言って、俺は彼の返事も聞かずに電話を切った。
「ゴメン、急用できた。俺帰るわ」
リビングに戻って、ソファーの相葉くんの背中に声をかけた。
彼はびっくりして振り向くと、
「えええ、コレ、どうすんだよ」
画面の中の、未だに猛烈に絡み合ってる男女を指さした。
「いい。あげるよ、ソレ」
俺は笑って、ひらひらと手を振った。
ドアから少しだけ顔を出して、
「ゆっくり楽しんで」
ニヤリと笑ってバタンと閉めた。
「え? え?」
ってちょっと動揺してる相葉くんを残して、俺は彼の部屋を後にした。
・・・玄関の鍵、開けっぱになるよね
相葉くん、DVDに夢中だから(笑)
でも大丈夫
翔ちゃんが来るからね
ふふ
楽しみだね
つづく!
次回は明日 0時(予定)です!
どうぞよろしく!
で、
これイケてる??(((^^;)(笑)