モザイク。 8 | 背徳的✳︎感情論。

その8

それぞれの朝→相葉くんち。














ガチャっと言う玄関ドアが開く音で目が覚めた。






薄暗い部屋の中で俺は瞬きして身体を起こす。


するっと毛布が滑って、裸の胸が露わになる。



って

俺ハダカ?


寝てる間にまた脱いじゃったのかな・・・


てか なんでソファーで寝てんだっけ


てか ここ


俺んちじゃない・・・




「あ、翔ちゃん起きた?」


リビングのドアが開いて、買い物袋を下げた雅紀が顔を出した。

彼は袋をキッチンのカウンターに置くと、

「俺腹減っちゃってさ、今コンビニに行っておにぎり買って来た」

翔ちゃんも食べるでしょ? って言いながら、彼は部屋のカーテンを開けた。


眩しいほどの光が差し込んで、明るく部屋の中を浮かび上がらせる。

それと同時に俺の記憶も鮮明に甦って、ここが雅紀の部屋だってことを思い出した。


そうだ・・・

俺、昨日、雅紀と・・・




「翔ちゃん? まだ眠いの? 今お茶入れるね」

雅紀がキッチンに入って、俺に背を向けながら言った。

「え? あ、うん。ありがと・・・」

応えてから、俺は床に脱ぎ散らかしたままの服を集めて、急いでそれを身に着けた。


何事もなかったかのように、鼻歌交じりに朝飯用意してる雅紀の背中を見てると、昨日のことに自信がなくなって来た。


でも確かに、彼に触れた感触が、まだこの手に残ってる。



「雅紀・・・あの、昨日は・・・」

「ん?なに?」

「いや、あの」

「翔ちゃん、よっぽど疲れてたんだね。急にバタっと寝ちゃってさ、朝まで起きないんだもん」

うひひひ って笑いながら、雅紀が俺の前のテーブルにおにぎりとお茶を並べた。

「ベッドに運ぼうと思ったけど、重くて諦めた」

また うひひ って笑って、それから「インスタントだけど」って味噌汁まで出してくれる。


二人で向かい合わせに座って、「いただきまーす」って言う雅紀にならって手を合わせた。

おにぎりの封を開けながら、

「疲れてるんなら、しっかり食べなきゃ」

雅紀が俺に笑いかける。

俺は頷いて、出してもらったお茶をごくっと飲み干した。


それからおにぎりに手を伸ばすけど、頭の中は、雅紀が昨日のコトどう思ってるのか気になって、食事どころじゃない。


「あの・・・相葉くん」

「ん? しょーちゃんも食べてよ?」

「うん、食べるよ、食べるけどさ」

「あに・・・もー はっきり言っへよ」

口いっぱいのおにぎりをもぐもぐしながら話すから、ろれつが回ってない。

俺は思わず笑って、彼にお茶を差し出した。


「あの・・・昨日のことだけど」

意を決して口火をきると、その一言だけで、雅紀が真っ赤になるのが分かった。

彼は慌てて口の中のものを飲み込んで、お茶でそれを流し込む。

「昨日のことは・・・えっと、あの、びっくりしたけど・・・」

ケホって咳き込んで、呟きながら彼は俺から視線を逸らせた。

「ごめん・・・俺」

「翔ちゃんがそんなに俺のコト好きだなんて知らなかったよ」

言葉を探す俺に、雅紀が視線を逸らせたままそう言ってちょっと笑って、

「しょーちゃんの勢いに流されちゃったなぁ」

恥ずかしそうに頭を掻いた。


「俺も・・・ちょっと感情に流された・・・でも、雅紀のコト、本気だから」

それだけははっきりさせたくて、俺は強い口調でそう言った。

その言葉に、彼はまた照れて、

「も~、それは昨日ので十分 分かったよ」

手の中に残ってたおにぎりを無理に口の中に押し込んだ。

口の端から飛び出したご飯粒を指で取りながら、さっきより一生懸命もぐもぐしてる。



「・・・分かった上で受け入れてくれたってこと?」


ご飯粒だらけの雅紀に真顔でそう尋ねると、彼の喉がごくんと鳴った。


「それは・・・だって・・・あんな顔の翔ちゃんに迫られたら、断れないよ」

雅紀が言葉を選びながら、俺の顔を見つめ返す。

「あんな顔って・・・?」

「・・・泣きそうな顔・・・してた」



それって同情?


言いかけて、俺はその言葉を飲み込んだ。


同情だろうが、憐れみだろうが、そんなコトどうでもいいんだ。

俺が欲しいと思った時に、彼はそれを与えてくれたんだから。



「嬉しかった・・・雅紀が俺を受け入れてくれて」

素直な気持ちでそう言って、雅紀に向かって微笑んだあと、

「だから・・・俺を選んで欲しい・・・ニノじゃなくて」

俺の想いを彼に伝えた。


「ニノ? 昨日もそんなコト言ってたけど、なんでニノが出てくんの?」

雅紀がキョトンとした顔で俺を見る。

「なんでって、昨日だってニノと・・・ ニノとそう言う関係なんでしょ?」

「そう言うって?」

「そ、そう言うって・・・そう言う関係のことじゃん・・・」

「ん? なに?」

「だから! 昨日俺らがシた・・・みたいな・・・関係・・・」

言いながら恥ずかしくなって、俺はちょっと下を向いた。


「俺がニノと?」

まさか! って彼は完全否定して大笑いし始めた。


「しょーちゃん、なに言ってんの?」

うひひひひ っていつまでも可笑しそうに笑って俺を見るから、

「だって! 昨日俺がここに来た時、お前もうソノ気になってたろ? アレはニノが」

話してる俺を遮って、雅紀は更に声を大きくして笑った。

「ちょ、お前、俺の話を聞けよ!」

思わず声を荒げると、

「だって、しょーちゃん・・・うひひひひひ」

彼は笑いを止められなくて、苦しそうにお腹を抱えてる。

それからゆっくりテレビのところまで這って行って、立てかけてあった一枚のDVDを俺に見せた。

「昨日はコレ、見てたの」

うひひひひ 片言みたいに話してまた笑う。


そのDVDのパッケージには半裸の女性。

口に出すのも恥ずかしいような、ダッサいタイトルが太い字で書かれてる。


どっからどう見ても、アダルトな商品。


俺は呆然と口を開け、雅紀とパッケージを交互に見た。


「これ・・・見てたから?」

「そーだよ。まぁ、それくれたのニノだから、ニノのせいって言えばニノのせいだけど」

あーあ、ってようやく笑いを引っ込めて、彼は目じりに浮かんだ涙をぬぐった。

「だって、ニノが俺にわざわざ電話かけて来て・・・」


ニノが雅紀のコトめんどくさくなって、それで雅紀のことが好きだって言ってる俺に押し付けるために電話してきたんだと・・・



そこまで考えて、俺ははっとした。


「・・・ハメられた」


俺は天井を見上げて呟いた。




「翔ちゃん?」

「ハメられた。ぜってーハメられた。変だったんだ。昨日、HEYHEYの収録終わった時から、変に絡んできてさ・・・」

「? 翔ちゃん?」

「わざとらしく雅紀に・・・ もしかして、このDVDの話してた?」

「HEYHEYの後? そーだよ? ニノが貸してくれるって」

「それか!」

頭の中ですべてが合致した。

全部全部、あの時からニノにこうなるように仕向けられてたんだ。


「あいつ・・・!!」

俺は自分の髪をわしわしと掻きむしった。


「なんかよく分かんないけど・・・ニノに遊ばれたのは翔ちゃんの方みたいだね」


雅紀が笑って俺の肩を叩いた。











「あ、そーだ。今日翔ちゃんの誕生日だよね?」


ニノに怒るべきなのか、感謝すべきなのか、複雑な心境でヘコんでる俺に、雅紀が唐突に言った。


「オメデト~!」


昨日から色々ありすぎて、そんなことすっかり頭から抜け落ちていた。


「翔ちゃん、今年のプレゼント、なにが欲しい?」

またバラにする? って雅紀が笑いながら俺に顔を近づけた。

「プレゼント・・・?」

「うん。誕生日のプレゼント」

焦点の合わない俺に、雅紀が繰り返して笑う。


「・・・プレゼントなら、もう貰った」

独り言のように呟いて、俺は彼を見つめた。

雅紀が一瞬動きを止めて、また顔を赤らめる。


「来年も、再来年も、プレゼントはこれがいい」

そう言いながら、俺は雅紀の腕を掴んだ。


その手を掴んだまま、俺は雅紀の隣に移動して、顔を真っ赤にして視線を泳がせてる彼を正面から見つめる。


「雅紀が俺のコト好きになってくれるまで、いくらでも待つけど、でももしお前が許してくれるなら」

俺は反対の手で、彼の頬に触れた。

「こうやって触れたい・・・ できれば・・・カラダも・・・・」

ダメかな、って伺うように小声で言って、彼に少し顔を近づけた。




「誕生日にそんなこと言うのズルいよ・・・」


呟くようにそう言って、雅紀が上目づかいで俺を見る。

その顔が、もう俺を許してる、って思うのは俺の都合のいい勘違いかな。。。



「先のことは分かんないけど、でも今は」

雅紀が笑って俺の胸元を掴んで引き寄せ、

「誕生日おめでと、翔ちゃん・・・」

囁いて、俺に唇を重ねた。





こんな幸せな誕生日、初めてかも・・・



夢なら醒めませんように



俺は祈りながら、雅紀を力いっぱい抱きしめた。























つづく!









次回 大宮で やっとこ最終回!







HEY×3の次の日が翔ちゃんの誕生日だったっけ? なんて細かい疑問は持たないよーにお願いしますm(__)m(笑)








月魚