『コヒア アラビカ』と昭和ノスタルジー | ダンス・ダンス・ダンス

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『音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ』

〜村上春樹〜『ダンス・ダンス・ダンス』より

赤坂にある『コヒア アラビカ』という喫茶店でこのブログを書いています。

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店内には僕以外、誰もお客さんがいません。寂しげなピアノ・ソロが流れていて、僕に背中を向けて座っているご主人のお陰で解放的な時間を過ごしています♫

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今日はとてもいい天気で、初夏を感じる強い日差しが東京に降り注いでいます。今日は母の日です。大学時代には忘れがちだった母の日も、年齢とともに何気なく意識するようになって、父が亡くなってからは毎年、鉢植えの紫陽花を贈るようになりました。言葉にしたり、肩を揉んだりは、恥ずかしくて、花をプレゼントするくらいしか出来てないけど、、、。

毎年、母の日になると想い出す失敗談があります。
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広島勤務時代(1998年頃)にコンビニチェーンの『ポプラ』のギフト事業の立ち上げに携わった事があります。コピーライターやイラストライターを含めたカタログ作成チーム編成をして、物流センターを立ち上げ、伝票の回収システムを構築し、お客様センターは?、商品選定は?、、、等々、、、まだ20代だった僕は、何日も徹夜を繰り返しました。当時は百貨店の包装紙に特別な重みがあって、コンビニでギフトを買う習慣が定着するには相当時間がかかるような気がしました。カタログ作成を凸版印刷、ギフトセンターを日本通運に決めて、システムやコストの了解をポプラから得て、僕はカタログの中に仮想モールをつくるイメージで、商品選定をすることにしました。老舗の肉屋さんや魚屋さんやフルーツパーラーがカタログの中にある感じです。
博多『てら岡』、京橋『千疋屋』、人形町『今半』、広島『かなわ』、『バッケンモーツァルト』など沢山の仕入先を訪問し、コンセプトを伝え、商品掲載の了解をもらいました。そして結果的に、このカタログは日本食糧新聞社の金賞を受賞しました。インターネットの楽天市場などはない時代、珍しかったのかもしれません。
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浅草に帰ってきました。今日は下谷神社のお神輿だったらしく、またまた伊藤忠の石原さんに遭遇。よく会うなぁ。。。^^;
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歳暮ギフトがなんとか成功に終わると、次は母の日ギフトをやりたいとの打診がありました。母の日はマーケット規模が小さいので、費用対効果で割に合わないと意見しましたが、結局やることになり。。。日比谷花壇のフラワーギフト以外に、イギリスのマザーリングサンデーを紹介することにしました。『母の日』に手作りケーキを作って、お母さんにプレゼントしようよ!という企画です。
料理家の方に典型的なシムネルケーキのレシピを作ってもらって、デコレーションを含め、小麦粉やドライフルーツ、スパイスのオリジナルセットを商品化しました。趣旨がわかりにくいと思ったのでカタログの表紙やポスターの告知をして、全国約700店のポプラで販売を開始。


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シムネルケーキ (英語Simnel cake)はイギリスレント(四旬節)期間の中ごろ(マザリングサンデイなど)やイースター(復活祭)に供されるケーキである。ドライフルーツを沢山入れて円形に焼きそれを各自用に切って食べるクリスマスケーキと似ているが、通常上部にイエスの十二弟子のうちユダを除いた十一弟子を象徴する11個の突起(団子)を配置するのが特徴である。

~Wikipediaより~

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で、、、肝心の売上結果ですが

→売上数、1個。。。。


企画倒れ、自分史上、最大の大コケでした。ガクッとする以前に目が点になって、!(◎_◎;)、、、最終的に笑ってしまうくらいの大失敗っ。

週末ケーキを焼く習慣も、母の日が復活祭から逆算した前週の日曜日だという社会通念もない中で、、、よく考えると売れなくて当然なんですが、若気の至りって、こういうことなのかもしれません。。。

逆に買ってくれた人が一人いた事に感謝しています  m(._.*)mペコッ

そして、毎年、母の日になると例のシムネルケーキセットの事を思い出します。

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昨年末から東京五大煮込みの店を廻っていましたが、先週ようやく全店制覇することが出来ました (^_^)v

今日はその五大煮込みの話。

思った以上に時間がかかってしまったのは、最後の一店の門前仲町の『大坂屋』が昨年末から半年くらい長期休養していたせいです。それが風の噂で5月1日に復活するらしいと聞いて訪問、その時の常連さんとの会話で木場の『河本』の煮込みを食べずして煮込みを語ることなかれ、と言われている事をきき、GW明けに『河本』を訪問、晴れて煮込みを語ることが出来るようになった次第です。


もともと五大煮込みは太田和彦さんが『居酒屋大全』という書籍で提唱した五店舗です。どの店も昭和ノスタルジー溢れる名店ですが、


❶月島『岸田屋』

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この店は運悪く第一陣に漏れて、寒風の中、2時間半くらい待ちました。モツの脂が味噌だれに絡んでいるような濃厚さで、それをたっぷりのネギが中和してくれて、めちゃくちゃ美味しかったです♫
他に頼んだ煮魚や肉どうふも、美味しくて、こういうお店は近くにありそうで、でもここまで完成度の高い店はそうそうないような気がします♫

❷森下『山利喜』
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ここはワインに合う煮込みというキャッチコピーの店です。フランスパンを一緒に頼んでみました。飲み残したワインは持ち帰りも出来ます♫

❸北千住『大はし』
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醤油ベース?の肉豆腐が有名だそうです。普通に美味しくて、カウンターの雰囲気が昔ながらですごくいいです♫

★浅草『正ちゃん』
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ちょっとお店は汚いけど、肉豆腐だと浅草のホッピー通りにある『正ちゃん』が僕は好きです。ホッピーも焼酎をたっぷり入れてもらえます♫

❹立石『宇ち多゛』
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庶民派居酒屋の超人気店!!
安くて、美味しくて、独特のマナー?や緊張感のある店。煮込みは勿論、串焼きも美味しいです♫   最高っ!!

★木場『河本』
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宇ち多゛』と同じく雰囲気がレトロな木場の『河本』はお店を80歳オーバー?のマスミさんが仕切ってて、こちらも独特のペースと雰囲気があります。それは少し耳が遠くなったマスミさんのせいかもしれませんが、どちらの店にも共通しているのは、そこにいるお客さんはそのペースや雰囲気も好きだという事です♫

❺門前仲町『大坂屋』
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5月1日に復活して、すでに2回訪問してしまいました。。。^^;
ここのメニューは、シロ(小腸)、フワ(肺)、軟骨の三種類の煮込み(全部串に刺してます)と卵スープ、オニオンスライスだけです。狭い店内には2代目の写真が飾られていて、現在は3代目と4代目がお店を切り盛りされています。ここも歴史が古くて、今年は90周年だそうです。

常連A『いやー、ずっと休んでたから、この鍋のタレがどうなっちゃうのか、それが心配で心配で  笑!』
4代目『毎日、鍋には火を入れて、ずっと守ってたんですよ』
僕『半年待って、ようやく五大煮込み制覇出来ました。その間に食べログの登録、消えてましたよ』
4代目『ホント?  良かった~♫』
常連B『偉そうに素人に批評されたくないよな  笑!』

食べログをしている人の中には、自分がその店に行ったという記録目的より、一段上から、情報発信者的なスタンスで店と向かいあってる人も多い気がするし、それを嫌う店は多いかもしれない。。。
そう言えば、価値観の押し付けは『美味しんぼ』にも共通するかもね。。。^^;

で、5軒➕α の中で
僕が一番美味しくて雰囲気がいいと思ったのは『岸田屋』。でも、2度とあんなに待つのはゴメンだ (>人<;)
そして、一番好きな店は『宇ち多゛』。常連になって、色んな組み合わせだったり可能性を試したい!!
でも、一番居心地がいいのは『大坂屋』。結局、訪問回数が多くなるのは、ここかもしれない ☆彡
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そうやって昔ながらの居酒屋を巡って、気付いたことがある。お店の居心地の良さは、そこの料理や飲むお酒の銘柄に加えて、昔ながらの店内のインテリアや、お店のご主人の人柄、そして、そこに集まる人の飲み方に左右されるという事だ。グタグタになっている人がいなくて、みんながキレイなお酒を飲んでいる店はスマートで居心地がいい。昭和を感じる店内のインテリアは、以前だったら近づき難かったかもしれないけど、今は自分もこのカウンターでお酒を飲むのに相応しい年齢になったんだな、そうしみじみと感じる。
年老いていく自分は時に寂しくもあるけど、社会のわびさびを経験したチームに加わることは、大人の仲間入りなのかもしれない。自分の父や祖父が、同じように座っていたかもしれない居酒屋のカウンターに、戦後の雑踏や生命力の名残を感じて、それがとても心地よいと思った。

~同じく先週、八重洲『ふくべ』にて~
女将さん『この店も古いでしょ。もう維持するのに逆にお金がかかって大変なのよ。いっそ、新しくしてキレイにしたらとか、思って。。。』
僕『えーーっ!! ダメですよ!! この雰囲気が好きで来てるお客さん、多いと思いますよ』

昭和ノスタルジー、それは今の時代が嫌いとかではなくて、時代の繋がりに普遍性を感じていたいのかもしれない。昔から変わらない空間、それがこれからも続いていくことに安心感を覚えるのは、何故だろう。。。
ニーチェに訊いたら、それは『永遠回帰』だとか教えてくれるのかなぁ。

一切を新たに、そして永遠に、
万物を鎖でつながった、糸で貫かれた、
深い愛情に結ばれたものとして、
あなたがたはこの世を愛したのだ!
~ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』より~

LET IT BE ☆彡