公益資本主義と株主至上主義、そして昭和の修正資本主義 | 門前小僧、習わぬ今日を読む

門前小僧、習わぬ今日を読む

反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮財政。
アイコン,ロゴ画面はイラストレーターtakaさんより。
takaさんの詳細情報はブログ画面にて。

さて皆さん、公益資本主義という言葉をご存知でしょうか?

 

以前、当ブログでは、

ステークホルダー資本主義として取り上げました。

 

 

まぁこれと大体同じです。

 

 

 

 

引用した記事を読むと、

日本の起業家が中心になって広めてる

みたいなことが書いてありますね。

 

日本では、原丈人という人が提唱者だそうで、

岸田首相はこの公益資本主義というものを

「新しい資本主義」と暗に位置づける形で使っているようです。

 

 

 

彼の発言を抜粋すると、

原氏は「株価を無視するわけではない」とした上で「株を持っていない人たちの方もしっかり向いて、買える状態まで豊かにすることが重要だ」と語る。給与が上がれば従業員の意欲が増し、企業の業績も良くなるとして「配当金を若干減らすのが株主にとって損だと思うのは大きな間違い。必ず株価は上がる」と強調。「公益資本主義は株価を上げるのに最も強力なエンジンだ」と話した。

 

・・・。

 

うん、どうなのソレ

 

って感じですよね。

 

 

 

まぁ私なんかだと、

株なんぞ買わなくても貯蓄と社会保障(年金等)で

老後が安心して送れるような社会の方が、

より安心だと思うんですけどね。

 

公益資本主義、

特に岸田内閣が示す新しい資本主義というのは、

要するに、

一億総株主化しよう

っていう話なわけです。

 

 

 

まぁ要するに、こういうことですわな。

 

 

そう、これすなわち

コスト(賃金)カットのための株主化

 

株主、投資(投機)家の世界というのは、

格差が拡大しやすい世界です。

 

カネをより多く持ってる人が圧倒的な力を持ち、

それこそ株価を左右することも可能ですが、

少ないカネしか持たない個人投資家は、

そのマネーゲームに翻弄されて、

破滅する例も少なくありません。

 

当然、

 

補償は一切なし(自己責任)

 

労働法による保護なんぞありませんから、

当然ですよね。

 

そもそも日本人の所得は労働賃金に依存する傾向が強く、

 

肝心の賃金が減らされて、

貯蓄もままならない状況であり、

貯蓄の運用手段である投資なんて、

出来る余裕なんかありゃしません。

 

 

 

 

少なくとも現状の日本社会の所得構造には合わないし、

その所得構造のまま一億総株主化とか、

格差拡大一直線じゃないですか。

 

とにもかくにもこの公益資本主義、

三橋氏のブログなんかでも割と好意的に書いてあるんですが、

 

 

要するに公益資本主義というのは、

株主資本主義(株主至上主義)に対抗する形で、

企業は株主だけのモノじゃなく、

企業に関わるみんなのモノだ!

という発想なわけなんですけど、

 

ここにも落とし穴があるわけですよ。

 

 

会社(企業)を中心に、

社会、社員(従業員)、株主、仕入先、顧客、そして地球()と、

三橋氏のブログでは経営者も含む6~7個の要素に対して、

企業は社会の公器として、

これら全てに有益な存在でなければならない、

という考え方ですね。

 

一見すると、確かに素晴らしい様に思えるんですが、

 

実際のところ、

この6(7)要素の中で、

一番企業に強い影響力を及ぼすのはどれ?

 

って話なわけですよ。

 

株主ですよね間違いなく。

 

企業は株主の所有物とか言われてるわけですから、

当然です。

 

ステークホルダー(企業のあらゆる利害関係者)に満遍なく利益を、

とか言ってても、

結局一番影響力の強い

株主の利益が優先されるに決まってるでしょこんなの

って話なんです。

 

何より、

企業の主体性はどこ行った?

って話にもなりますよね。

 

翻って、昭和の修正資本主義では、

 

この最も影響力の強い株主が、

その影響力をほぼほぼ全く行使しないという、

 

世界的に見ても、歴史的に見ても、

極めて珍しい、そして奇妙な経済風土の上に成り立っていました。

 

昭和日本の資本主義の要点は、

多数派の株主が株主利益を(積極的には)求めない

という特異な経済的風土があった、

という前提があって、

この風土は本来資本主義下では個人(株主)の所有とされる企業は、

文字通り社会の持ち物となっていた、

つまり企業の社会資本化が実現していた、

と言えるのです。

 

昭和の修正資本主義下で株式は、

その発行者側が、

自社株の所有者を

安定株主(自分の利益のためだけに売ったり権限を行使しない)

と認めた場合にのみ、

大量保有を認めていました。

 

つまり、株の持ち合いですね。

 

何らかの取引のある相手に大量に保有してもらうことで、

敵対的な株売買を防いでいたわけです。

 

つまり昭和資本主義下では、

株式所有の選択権が買い手側ではなく売り手側にあり、

株式は、

企業経営の安定を担保するための

お守りのような役割を果たしていた、

というわけです。

 

上の図で言うところの、

顧客とか仕入先とかに当たる企業にとって、

下手に取引先の企業が変なところに買収され、

自分の企業に対して値上げやら経費節減やらをされてしまっては、

自社の売上や業績に響いてしまいます。

 

要するに、昭和資本主義における安定株主たちは、

コストカットや利益最大化と言った

姑息な手段で利益を上げるのではなく、

 

保有株の企業が売上を増やして業績を上げ、

株価が上昇することで、

資産価値上昇という利益を得ることの方が重要だったわけです。

 

何しろ、彼らが持っている株式の企業は取引相手。

 

仕入先企業にとっては経費を増やしてもらえば

自社の売上が伸びるし、

 

顧客側企業としては価格を抑制してもらうことで

自社の経費を減らし、

自社製品の価格を抑制して、

より多くの売上を上げることが出来るわけです。

 

下手に株主としての利益を求めて、

コストカットを迫ったり、

売上増加を狙って値上げをされるよりも、

そうした便宜を図ってもらうことの方が、

自社の業績に繋がったわけですね。

 

そしてこうした株主が株主としての利益を求めない経済風土は、

実体経済により多くのおカネを回し、

経済を潤わせ、

活発な経済活動の土台として機能しました。

 

企業経営も、

社会主義国のように国が所有するというものでもなく、

株主による横槍も少ないため、

企業はその直接的な運営者たちの

自主性や独立性が担保される自由な経営が可能だったわけです。

 

結局、企業というのは人間の組織ではありますが、

個人のように何らかの欲望とか、

願望があるわけではありません。

 

その直接的な運営者、

影響力の強い者の影響を強く受けて機能する

ロボットのようなものものです。

 

鉄人28号のようなものですね(古い)。

 

つまり、コントローラーを持った人間の意を受けて動くロボット。

 

株主企業利益を求める者がコントローラーを握れば、

コストカット・利益最大化に邁進して

賃金をカットし、経費をカットして取引先企業にも悪影響を与えますし、

 

企業の売上を上げること、事業規模の拡大を志向する

経営者の手に渡れば、

価格を適切なモノに抑えて売上を伸ばしつつ、

顧客企業にも消費者にも過度の負担を与えず、

賃金を上げてより多くの従業員を雇ってモチベーションを高めつつ

設備投資も同時に行って生産性を高めつつ事業規模を拡大し、

太っ腹に経費を使って取引先企業にも恩恵を与える。

 

結局、“企業自体の利得”というものを最優先で考えたときが、

公益資本主義の建前的理想形に最も近づく、

ということが出来るわけです。

 

企業自体の利得を考えれば、

利害関係のある面々に何か損害を与えるようなことになれば、

それがそのまま自社に跳ね返ってくるわけですから、

当然そうなりますよね。

 

要するに公益資本主義とは、

昭和日本に現出した企業の在り方を

理想として提唱されたモノでしょう。

 

あくまでその原型は、という話ですが。

 

結局、

 

公益資本主義として帰結したものは、

株主至上主義のエッセンスを取り入れ、

企業を社会の公器と位置付けながら、

その内実は株主最優先の資本主義でしかない

 

というのは、

岸田政権のやりようを見ていれば明らかです。

 

結局株主利益を要求する口うるさい株主たちの横槍を受け、

自己資本比率に怯えながら、

ケチ臭い経営をする企業が大手を振って経済を牽引していく。

 

何か、いい方法はないもんでしょうかね?

 

企業が社会資本として、

国民全員に満遍なく恩恵を振りまくような、

そんな経済構造にする良い方法は。

 

これだけ株主至上主義的な風潮が蔓延してしまった今、

それは大変に難しいことのように思えますが、

 

実際、かつての日本では実現していたわけですから、
何とかなりそうなもんですけど、

 

その前に中国に支配されちゃう可能性が高いような気もします。

 

もっとも、

 

今もアメリカの植民地なわけですから、

あまり大差は無いようにも思えますけどね。