頸と腰が悪くて、夕方になると脚がカアカアする。神経が触っているのだ。もう何年も。でもこの間は夕方を待たずにカアカアして、しかも痛みもあった。
不安になりやすいネガティブ女子。真っ先に思い浮かんだのは山口百恵ちゃんだ。小さいとき夕方の再放送枠で見たドラマ「赤い衝撃」だったかなんだったかで、百恵ちゃんは事故で三浦友和さん演じる刑事の撃った弾丸に背中を撃たれて下半身不随、車椅子の人となる。「背骨はこわい」と幼い私の頭には強烈にインプットされた。
日頃あまり日当たりのよくない家に引きこもっているから骨の強度も心許ない。日に当たってビタミンDを作らねば。牛乳だけ飲んでてもダメなのだ。不安になって、持病の腰の滑り症が出る度にお世話になる整形のお医者さんに診てもらう。
「圧迫骨折しそうですか?」
「イヤイヤ、あなたの年でそんなに簡単に潰れてもらっちゃ困るんですよ。でもとにかく頸と腰の牽引に通ってください」
「えー、私引きこもってるんですけど」
「いや、してもらった方がいいと思いますよ。道中、日にも当たるじゃないですか」
「はあ」
心配する割りには治る努力を惜しむネガティブ女子。
夫は例のごとく
「不安になりすぎや。心配しすぎ!」
と楽観的だ。でも頸と腰の神経が触っているのよ。「赤い衝撃」なんよ。なんで怖くないのか逆に聞きたい。
「百恵ちゃんやん!」
そう言うと彼は
「背中撃たれたんかい!」
いやぁ、撃たれてないけど。
彼と言えば、相方は、何年か前にソファのひじ掛けに頭を引っかけて一晩寝ていて、朝起きて、首に激痛が走り、借金でなく文字通り首が回らなくなった。
その時も困ってはいたが、彼は別段不安そうには見えなかった。怖くないのか?私はその時彼が車椅子生活になることを想定して、頭の中を様々なシミュレーションが駆け巡った。
仕事はどうなるのだ?どうやって通勤するのだ?事務所は車椅子いけるのか?そもそも仕事できるのか?わが家もどうやってバリアフリーにしよう?またやはりO工務店さんに頼むのか、ローンはどうするのか、とか。
かなり心配した。
けっきょく彼は何日か湿布を貼ったら治ったけれど。私一人肝を冷やしていた。
牽引。電動のアンマ椅子のような腰の牽引機は至福の時。
首を吊られながらじっと床を見る頸の牽引機は思索の時。
めんどくさいなと思いながらも自転車で病院に来るときに日に当たるのがうれしい。
やっぱり通うのはいいことでしょう。
前に、数ヵ月姿勢をよくしていただけで骨の問題が改善されていた実績があるので、今回も「正しい姿勢強化月間」として意識的に頑張っている。今後もずっとか。
まだ骨は潰れていないそうなので自棄にならずに頑張ろうと思う。この一週間は骨と一緒に心配で胸が潰れそうだった。背骨はこわいんだよ。赤い衝撃なんだよ。
こうやって少しずつ、思うに任せなくなっていく体に、納得しながらお婆ちゃんになっていくんだね。私の場合はいちいち「赤い衝撃」だ「青い疑惑」だと大騒ぎしながら。
年をとって生きているのって大変。
毎日「快適でない」時間が増えていく。
長く生きているのが嬉しいご褒美になるような
何かいいことないかなあ。
敬老乗車証?
少しでも重い足腰が軽やかになるように。
映画の割引?
いつまでも文化的であれ。
やはりお年寄りに優しい社会になってほしい。
これは京都市長選に出馬を表明している福山和人弁護士のパートナーおかねともこ(イラストレーター)が、「家族の目から見たふくちゃん」を綴ったエッセイです。
2018年府知事選のときの「ふくふく家族」と同様、リラックスしてお楽しみください。
前回のシリーズはこちら→http://www.fukuyamakazuhito.jp/fukufukufamily

