二人で初めて映画を見に行った時、私は彼のきめ細やかさに感動した。
何故だったかわからないが、私たちは菓子パンを持っていて、映画が始まる前に食べようとしていた。でもその菓子パンは、デートのお供には全く不向きな、白い砂糖の塊(アイシング?)がべったり上に塗ってあるもので、お行儀よく食べようとしても、たちまち私は両手がベタベタになってしまった。
途方に暮れていたら、彼が席を立って、しばらくして戻ってきた。手には水で絞ったハンカチを持っていた。
野球のハンカチ王子の出現よりもっと前のことだ。私は(偏見かもしれないが)まず男の人がハンカチを持ち歩いていることに新鮮な感動を覚えた。(私はハンカチ不携帯のことがよくある!)
そしてそのハンカチを水道で絞って来るという。なんという行き届き加減!
そんなことで感動するなんて、よほど私の人間関係は貧しいものだったのかもしれないが、とにかく彼は私から高得点をゲットした。
そのことはよく覚えているが、その時、何の映画を見たのかは思い出せない。
あれから30年近く。
私もハンカチは携帯するようになり、夫がハンカチを持っていても特に驚かない。でもヨソで子どもが何かをこぼしたとき、夫がスッとハンカチを出して拭いてやっていると、あの映画館でのことが脳裏によみがえり、ベタベタだった手の感覚まで思い出す。
あれに懲りて、アイシングベタベタの菓子パンは食べてないけれど、スーパーでそんなパンを見かけると、知り合って間もない頃の新鮮な気持ちが胸に流れる。
これは京都市長選に出馬を表明している福山和人弁護士のパートナーおかねともこ(イラストレーター)が、「家族の目から見たふくちゃん」を綴ったエッセイです。
2018年府知事選のときの「ふくふく家族」と同様、リラックスしてお楽しみください。
前回のシリーズはこちら→http://www.fukuyamakazuhito.jp/fukufukufamily

