「見捨てられた青春」~出身者が描くマニラの現実 | ゴダールよりもデ・パルマが好き

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映画監督を目指す大学生、清原悠矢の映画生活

「見捨てられた青春」
2009年・フィリピン・Astig
監督:ジュゼッペ・ベード・サンペドロ

大阪アジアン映画祭にて鑑賞。

ゴダールよりもデ・パルマが好き-見捨てられた青春
















フィリピン映画を見たことがあるだろうか。
ほとんどの人がフィリピン映画など見たことないだろうし、
フィリピンって映画作ってるの?
もっと言えば、フィリピンってどこよ?
という人も多いのではないだろうか。

かくいう僕も今回始めてフィリピン映画というものを見た。
申し訳ないが、釜山国際映画祭コンペ部門
スペシャルメンション受賞作とはいえ、期待値はかなり低かった。
オープニングのクレジット、はっきり言ってダサい。
不安が募った。MTV感覚が強いのかなと思ったら、
実際にジュゼッペ・ベード・サンペドロ監督は
ミュージック・ビデオなどの演出をしていたらしい。



この作品は大きく分けて4つのエピソードから成り立っている。
4つのエピソードは絡むことには絡むが
そこまで大きな絡み方ではなく、
群像劇のように並列し編集されているのでもない。
あくまでもマニラという街の現状を
多角的に捉える為の手法であるといえる。
この作品が訴えかけたいのは、
このマニラの貧困街における悲惨な現状なのである。

1つ目のエピソードは結婚詐欺師の男が学生の女の子に
恋をしたことからその兄に殺されてしまうという話。
2つ目は身重の妻を持つ若い男が金を稼ぐために
ゲイたちが集まる映画館で働く話。
3つ目は都会にある家を売った金で田舎で暮らし始めようとする男が
娼婦とその男に金や所持品を追い剥ぎされる話。
4つ目は1つ目のエピソードに登場した女学生の兄が主人公で、
兄が結婚詐欺師の男を殺したショックで妹が自殺をするという話。



こうやって文字にしてみると、どのエピソードも恐ろしく暗い。
唯一、希望があるのは2つ目のエピソードだけで、
それ以外はバッド・エンドといって差し支えない。
英語タイトルも「Squalor」で、汚さ、や卑しさという意味だ。
邦題「見捨てられた青春」では生ぬるい。

だが、実際に見ている間は、そこまで暗い気分にさせられるわけではなく、
乾いた映像や激しい音楽によって、
一見、明るく見せられてはいるので、比較的見やすい。
一つ一つのエピソードが良くまとまっていて、
20分前後しかないので、飽きることなく見れる。
むしろ、その勢いに圧倒されるほどだ。



この作品が初監督であるジュゼッペ・ベード・サンペドロ監督の
演出は勢いに溢れている。監督自身がこのようなマニラの貧困街で
育った経験の持ち主で、その時のエピソードを基にしているらしい。
これがマニラの現状だ、出身者がそういうのだから間違いないのだろう。
この現状を世界へと伝えたい、そして、変えて行きたいという
熱い思いがひしひしと感じられる。

この作品はわずか6日間で撮られたらしい。
予算も驚くほど少なかっただろう。
ゲリラ撮影しているところも多く見られる。
しかし、撮影の状況など、作品そのものには関係ない。
熱い思いとセンスさえあれば、素晴らしい作品を生み出すことができる。
低予算映画の鏡のような作品だ。
大作ではなく、低予算であるからこそ、
フィリピンという国の実力、潜在能力を見せ付けられる作品である。
次回作に期待したい。そして、フィリピン映画を機会があれば、また見てみたい。

80点