第3章・サロン経営の基本心得。

 2,従業員満足が、顧客満足実現の大前提。

 

高級ホテルから始まった「従業員満足が経営体発展の鍵」という考え方は、今や全産業、全業種に広がっています。なぜ「従業員満足」が重視されるようになったのでしょうか。

 

直接的な理由として、まずは昨今の深刻な人材不足が挙げられます。従業員が集まらなければ事業の継続は不可能だからです。

したがって社員が活き活きと働き、前向きに挑戦を続けることのできる職場であることが、今後の厳しい競争を勝ち抜く鍵であることを多くの経営層が認識しつつあるからです。

 

もう一つの理由は、社員の意欲向上こそが、ここ最近の深刻な顧客離れ、業績低迷を打ち破る切り札になるという考え方です。つまり、「サービス・プロフィット・チェーン=働き甲斐の仕組み」の構築です。

 

これは1990年代にハーバード・ビジネススクールから生まれた考え方で、従業員満足度が高まれば、「顧客対応の能力」が高まり、「顧客満足度も高まる」ということです。

 

これと同じ思想が250年も前に日本で確立しています。それが石田梅岩の「商人道」です。石田梅岩は江戸中期の思想家で石門心学の創始者(1685~1744年)です。

 

石田梅岩の「商人道」は江戸中期から幕末に至るまでの150年間、日本全国の商人の心を支え、今なお日本的経営の源流として注目されています。

 

石田梅岩が、『商人道』に記す経営哲学は、『富の主は天下の人々なり』として、利益の公共性を重んじ、『能貯能施』の重要性を説いています。つまり、『よく利益をあげ、公平に利益を施すことが商売の大道である』と説いています。

 

今風に解釈すれば、以下のようになります。

「顧客への真心奉仕によって利益を上げ、共に働く従業員の幸せ実現のために公平に利益を還す。これこそが商売の大道である」との教えです。  

  

 つまり、「従業員満足」が経営体繁栄の核であるとして、経営者としての『心構えの根本』を指しています。しかし、従業員満足度を上げるためには、適切な処方を実施しなければなりません。

 

具体的には「職場環境」や「人事制度」を刷新する必要が生じます。 

つまり「仕事の評価制度」・「働く条件・環境」・「経営体へのロイヤリティー」などに関して、どのようにすれば従業員満足度を高めることができるかにあります。

 

では美容サロン経営では、どのような要素があるでしょうか? 以下のことが挙げられます。

◎「仕事の評価制度」
自分力発揮、達成感、能力向上、評価と処遇など。

 

◎「働く条件・環境」

給与、残業と休暇、職場環境、チームワーク、管理職能力など。

 

◎「サロンへのロイヤリティー」
従業員尊重、理念共有、情報公開、将来性、給与、休暇、職場環境、チームワーク、管理職能力 などが挙げられます。

 

以上のような「仕事の評価」・「働く条件・環境」・「サロンへのロイヤリティー」の各側面から従業員の満足度を向上させる施策を執らなければなりません。

   続く