11月18日
先回の犬飼くんに引き続いて今回も当店には珍しい若い常連さん、石田くん。
ボタンスタジャンお買上げありがとうございました。
店に来て、先ずトレーニング。それを終わらせた後、値付けと商品出しを済ませると、早4時半です。身体がだるくなってきたので、少し昼寝をしようと思いながら、小便をしてますと、表でバイクのエンジンが止まる音がしたので『もしや、お客?』と思って売場に戻ると、「オッス」と言って石田くんが入ってきました。ハタチのガキに大層なめられたもんです。が、それがかえって心地よく、コーヒーをつくって世間話に興じます。
ちゃらちゃらした外見してますが、僕は石田くんからは教えられることが多いです。
その後、大学生の石田くんは居酒屋のバイトへ。感心ですネ。そして、僕は、彼が高額なアイテムをお買上げしてくれたので、店を早仕舞いして、夕暮れの巷に出かけてゆきました。
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〜60s ワークカーディガン
薄手のつくりのワークカーディガンです。
色は黒に見えるのですが正確には分かりかねます。
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サイズは42表記ですが実寸はM程度です。
ワークカーディガン特有のポケットのデザインと、
写真では分かりにくいですが、エルポーパッチがつきます。
多少の毛羽立ちがございます。
12800円+tax
11月13日
看板には「タマビカリの業(ワザ)」とある。横に小さく、世界玉光文明教団とあるのは、正式名であろうか。
金メッキのドアノブを掴むと、急にザワザワとした空気の乱れが、僕の首筋から後頭部の方に漂っている。少し開けたドアの内側から、霊気が流れてきたのかとも思ったが、それは背後からのしかかる。振り返ると駅のホームに立った人々の視線が、入りかけんとする僕を見下ろしていた。
教団の構えと看板は、ホームに立つ人を呼び込む具合に建っているのだ。迷える風情の僕は、見透かされたように赤くなり、視線から逃れるためにぐるりと教団の裏道に回り込む。そこから駅に行き、切符を買って、僕を見ていたホームの人々の中に潜り込む。危うく見世物になるところだったと、ため息ついて、入ろうとしていた教団の看板を見つめる。
そこに入信した土井さんの妻を口説き落とすためには、世界玉光の文明指標と闘わなければならない。が、〈タマビカリの業〉とあるところを見ると、向こうは相当の〈業〉を持っている。僕は喉をうるおそうと、ホームの水飲み場に歩む。と、転がったジュース缶を踏んで転倒しかけた。その僕を背後から支えた学生が、「しっかり」と耳元でつぶやいた。振り返ると、詰め襟の四角顔が、転がるジュース缶に、片手を開いて「ハッ」と叫ぶ。転がるジュース缶は、その「ハッ」で、少しカーブしながら、ゴミ入れの方に転がっていく。
「ハッと言わなくとも、あのジュース缶はゴミ箱の方に転がったでしょう。それをハッと言って方向を変えたように見せたのは、僕の未熟なところです。すみません」
言わなくてもいいもの、謝らなくてもいいものをニキビのある学生は、したり顔で言ってのける。
ホームに電車が入ってきた。反対のホームにも電車が入って、待っていた人達はあらかたいなくなる。立っているのは、僕とその学生ばかりで、暫くの間の後に、学生は突然「この世の中をどう思うか?」と言った。
僕は、どうも思わないと答えた。それに対して、どのように、どうも思わないのかと尋ねた。どのようにも、どうも思わないと珍問答があり、「嘘だ」の定言で、互いの顔が見交わされた。学生っぽい早口は柔和な面持ちと一緒に、ゆっくりと噛み締めるように、なにか悩まれているからこそ、あの「タマビカリ」の門を叩かれようとしたのではないかと僕に言った。
こいつ、「タマビカリ」の地回りかと、見抜かれた僕は卑屈に構える。その肩を黄金の片手が撫でて、「友よ、気を抜いて下さい」と告げるのだ。
「僕は、ただ興味があったので」と弁解すると、それからの問答は、もう先程のように尻をまくったもので受けられなくなった。どんな興味かと覗き込む学生に、ともかく、あなた方がやっておられることにと世辞まで言う始末で、それが、相手に「友よ」の自信を与えた。
「友よ、この世の不幸を、どうお過ごしになられるのか」は、最も難しい質問だった。一体、この二十一世紀に、どんな鐘が鳴り渡りやがんのかと言ってやりたいのが本音だが、「なんとか、つましく」と肩をすぼめて、ホームから見える暗雲をちらっと見上げた。友よ、この世の不幸にも、つましく生きられますかと、しつっこいたたみ込みがあって、その一言一言にうんざりしてくる。かろうじて、この世の不幸一般は背負い切れないがと、皮肉まじりに答えたが、それは相手に皮肉として伝わらず、その控えめな態度では、二十一世紀に全滅すると、目が血走り出す。何が全滅するのか、僕はぼんやりしてしまった。「しっかりして下さい。貴方も全滅に入るのです。友よ!」と黄金の手が肩を掴む。
この時間が耐えられないで、僕の目尻は泣きたい気持ちで垂れ下がる。
「友よ、この世の不幸現象は、八十パーセント、気持ちの行き違いです」
の言葉には確かに頷けるところがある。ホーム上で、向かい合うこの不幸は、思いの行き違いなのだから。
「ところで、あなたは、そこの方ですか」
と肝心なことをまだ聞いてないので、〈タマビカリの業〉の看板に目を向け、僕は学生に尋ねてみた。
「はい、そこの者です」
頷く学生は、紙袋から、一冊のパンフレットを取り出し、僕に与える。紫の地に一条の光が射し込む表紙をめくると、目次の横に〈はじめに〉と題されて、こんな文章がある。〈全人類は、長くこの方、将来というものに、心から希望と可能あるべき夢を持ち続けてきました。が、今やその願いは、悲しくも打ちこわされてきたことは、誰の目にもわかることです。食物、飲料水、大自然、薬そして農薬も、あらゆる文明の産物が、我らの肉体と心を犯し始めているのです〉
気持ちの行き違いばかりか、物との行き違いを語るこの文章が、不幸現象の内容だなと、次に目次に目を移すと、〈タマビカリのパワー〉と〈救い〉〈不幸現象をのりこえて〉などの題目が続き、〈テレビに出演したタマビカリの業〉の後に、タマビカリの門をくぐるための勧誘のしおりとやらがある。
先ず、門をくぐる者は、〈三日間の研修〉を修めなければならないという項目を読み進めると、その研修は、男子部と女子部に分けられている。僕が入るためには、男子部の机に三日間しがみつかなければならない。ホーム上の問答さえ、うんざりした自分にその三日間が耐えれるだろうかと、ページをめくると、女子部の部長の能書きがある。その部長のいさめは、「炎の洗礼を乗り越えましょう」というものだ。「炎の洗礼」とは、ハルマゲドンの戦、人類最終戦へと突入しつつある今日の世界のことを言い、これを、炎が燃え盛る大峠である故に、谷間から上がってきた我らが、生きる意志を以って、炎の大峠を越えようと勇めるものだ。まるで大菩薩峠に狩り出された現代人の尻を引っ叩く語り口だが、それを書いた女子部長の名を見ると、土井まさみとある。土井さんの妻であることはほぼ間違いない。それを確認しようと、学生を振り返ると、彼の姿はなく、電車がホームから走り去った。
僕には、三日間の研修の後に土井まさみに近付くのは長く途方もないものに思えた。そこで、以前SMクラブ〈女帝〉とのゴタゴタで知り合った〈伝書鳩〉の元女便利屋さちこを使うことに、作戦を変えた。さちこへの報酬は、土井さんに掛け合うことにして、彼女を女子部に入門させよう。そして、さちこに女子部の部長土井まさみを外に連れ出させ、それから説得すればよいと、何が恐いのか、直線コースのアタックは、便利なように迂回した。
が、どう迂回しようと、「炎の洗礼の大峠を越えて」などと書く土井まさみを説得出来るものかについては、まるで判断中止であった。
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60sコーデュロイジャケット
60年代定番のコーデュロイジャケットですが、こちらは襟と裏地にボアを使い、おしゃれです。
ボアを使うことにより、軽くて暖かいです。
size L 16800円+tax
11月11日
明楽時運の加藤さんと千種の小路にあるwysにやってきました。
wysの伊藤氏を誘って隣のジョゼコーヒーさんに行くのが定例です。
この小路、いいですね。
ジョゼの女将さんも含めて意思の疎通の全くない独特の空気感。
ナポリタン頼んだら大盛りサービスだった。
言葉での疎通はないけど。
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40s ウールシャツ
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つくりの良いウール製のアウターで見かけるブランドです。
40年代らしくロングポイント、綺麗な形の襟です。
ボタンも赤に染めたアジのあるシェルです。
ペンドルトンの40年代製のシャツでも見ます。
ボタン付きフラップポケット
襟台にサテンが貼られているものはよく見かけますが、
前立てにまでサテンが貼られているものはなかなか無いです。
丁寧なつくりです。
着丈は長めですが、古いビンテージの証です。
裾のサイドはマチではなくカンヌキ止めです。
コンディション良好です。
size M程度 16800円+tax
11月7日
純真無垢な青年が、ありもしない幻を求めて冒険の旅に出る。その途中で彼は魔物と出会うが、果たして彼は何かを得ることができるだろうか?というような古着屋を舞台にした幻想冒険小説を書きたいと思いつきました。
このジャニーズのような若き男前は名古屋の中心、栄で古着屋を営む同業者です。
近年の古着のブームで、まるで雨後の筍のように新しい古着屋が出来ているようですが、僕には全く関係も無ければ興味も無いし、うちの店は古着ブームの恩恵も受けてないし、むしろブーム前より売上は落ちてます。変わったことと言えば、物が減って価格が上がったことくらい、それと、うちの店とは無縁の今時の古着を着た若者がちょくちょく入ってくるくらい。それもブームが去れば姿を消すだろう。
彼もまた、その雨後の筍のひとつか?と思いましたが、
実は、彼は純真な勉強家です。
『長く続いている店には、きっと何かあるはずだ』、それを探しにうちの店に来ているようですが、しかし、うちの店にあるのは、商売と無縁のお遊び気分ばかりです。儲かりもしないのに無駄に長く生き続ける気味の悪い店と言われることもありますが、志もヤル気も無い。
そもそも商売の勉強をする為にうちの店に来ること自体、お門違いなんですが、なのになぜか何度も来ます。
でも、もしかしたら君にとっては、何かあるのかもしれないね。
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60sウールジャケット
軽く羽織れて重宝するライトアウターです。
タグ
胸のボタン付きフラップポケット
おしゃれなマーブルボタン
裾のポケットはハンドウォーマーとしてありがたいです。
動きやすいようにサイドの裾にスリットが入ってます。
着たまま車の運転や作業も出来ます。
真冬でも長時間外にいない限り、これでオーケーです。
size S〜M 15800円+tax




































