昔の店長の誕生日が忘れられない | 注文の多い蕎麦店

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夏酒充実してます。

ところで以前大阪の某地酒専門酒店の直営店で働いてたときにですね。
店長というか店には出てこないので実質的にはオーナーの誕生日がちょうど昨日だったんですよね。
もうかれこれ10年以上前の話だし特にお祝いメッセージ送る間柄でもないのに
未だに忘れられないでいるのには理由があるんですね。
それは。

店の南京錠の暗証番号が彼の誕生日だったからです。

そりゃ毎朝合わせる数字だから覚えるに決まってる話なんですが。
実際にその誕生日が来たらさりげなさを装いつつ。

あ!今日店長誕生日ですよね?おめでとうございます!
って小芝居を打つと。

なんでお前知ってんねんもう誕生日っていう年でもないけどなガハハ!

と照れくさそうにはにかまれるのですが
本人はその照れを相手に知られるのが気恥ずかしいのでしょう。
で結局毎日のように。

暴飲するんですね

すると彼は陰で暴れん坊将軍と呼ばれるほどの酒乱ぶりを発揮して。
ある時は刺身包丁を突きつけられて。

おいこらお前!
お前のやってることは詐欺や!お前が料理するなんて10年早いわ!!

とか。

ある時は割れたビール瓶を突きつけられて。

おいお前確か京都とか言うてたな!
お前はいつまで寺に入っとるつもりや!お前が料理するなんて100年早いわ!!

とか毎日のように理不尽な理由で罵られて。

いつも着てる服はビリビリに破られるしさすがに刺されることはなかったですが
ド突かれ蹴とばされっていうのは日常茶飯事だったんですけどね。
そんな無茶苦茶な環境だったんですけど彼の言葉が意外と本心を突いてまして。
その時は確かにむかついて絶対やめてやる!って毎回思うんですけど
少し落ち着いてくると結構その暴言が的を得てるんですよね。

詐欺師呼ばわりされたときは確かに小手先のトリックを使ってまずいものを美味しく見せかけてたり。
寺籠りしてると言われたときは確かに自己中な考えに走ってお客さんのことをほったらかしになってたり。
そしてそんな彼にある日突然言われたのが。

お前明日から蕎麦打て

だったんですね。
それまで蕎麦を打つどころか蕎麦自体にまるで興味がなかったので
え?何で??
と思ったんですがオーナーの言うことは絶対なので次の日から見様見真似で蕎麦を打つことになったんですね。

お前の蕎麦なんかで金取ったらあかん
一杯500円で売れ


と言われたとおり一杯500円の極太不揃い蕎麦が僕の蕎麦キャリアのスタートだったわけですが。
あれから10年以上の月日が流れて今つくづく思うんですけど。

何やかんや言ってあの人的を得てたな。

 

人のことは的確に指摘できても自分の言動が伴ってないからムカつくだけだったのかな。

もう少し人格が伴ってたらかなりの人物になってたのかもしれないですね。
人格も風貌も明らかに将軍ではなくて悪党の部類に入るのが非常に残念ですけど。


ちなみに暴れられてかき回されるのが嫌なのでここで蕎麦屋やってるのは内緒にしてますチュー