「ここが……」
俺は生まれて初めてスタジオを見た。
中は意外に広く、たくさんの衣類が置かれていた。
「んじゃぁ加奈ちゃん。 次はこんな服を着てみようか」
加奈は絶えず更衣室とスタジオを行き来していた。
 
「お? 糸川、こいつは誰だ?」
とあるスタッフが俺を指さして糸川さんに尋ねていた。
まぁ、そうなるよな。
「あぁ……… ぇーっと……」
「加奈の弟の錬哉です! よろしくお願いします」
俺は笑顔で受け答えをした。
「へー、弟いるんだ。 あんな顔して意外にお姉さんなんだな」
スタッフが納得して自分の持ち場に戻った。
 
「そうだ! ちょっと待っててね!」
糸川さんが思いついたように偉そうな人の方へ行った。
なにしに行ったんだろう……
 
ちょっとして糸川さんが笑顔で戻ってきた。
「爛崎くん。 ちょっと撮ってもらえるよ」
へー …… え!?
「なんか雑誌の編集長が爛崎君を見ていて面白そうだって言ってたから撮った写真がどっかで使うってさ」
マジか…… えー、でも怖いな……
 
「爛崎くーん 写真撮るからこっち来てくれ」
俺は呼ばれるままに加奈と入れ替わりでグリーンスクリーンに入った。
「はい、こっち向いてー」
俺は呆気にとられて知らぬうちに撮られてた。
「んじゃぁ、ちょっとあっちに行ってあげて」
カメラマンの指した方向に加奈がいた。
 
 
「どうだった?」
どうやらお昼休憩らしい。
今日は近くの喫茶店でとるらしく、今喫茶店にいる。
「あぁ、いきなり撮るからなんか複雑だな…」
俺はとりあえず腹にたまりそうな物を探す。
この調子だと3時頃にまた腹が減りそうだ。
「さっきのはいきなりだったよね;; まぁ、何かの意図があってなんだよ」
加奈は笑顔でこっち向いていた。
よっぽどまぬけな顔をしていたんだな……
 
「あのぉ、注文はおきまりです…か?」
横から心細そうに店員が聞いてきた。
たぶんずっとそこにいたんだろうな……
「あぁ、すいません。 えっと…私はサンドイッチとアップルティーを レンくんは?」
「俺はハヤシライスとアイスコーヒーで」
注文を言い終わると店員はそそくさと行ってしまった。
 
「何か本当に姉弟みたいだね」
「そうか? 俺は見てみるに、きれいな女子高生と普通の高校生のカップルにしか見えないけどね」
「見た目の問題じゃないの。  なんか……会話の内容とか、雰囲気とか?」
「そこに疑問符をつけちゃだめだろ;;  でも、まぁ姉弟らしくはなったのかな?」
「あ! レンくんも?はだめだよ!」
「え? あぁ、使っちゃったね」
俺は笑ってごまかした。
「別にいいよ。 『姉に免じて』ね」
『姉に免じて』を強調したのが少ししゃくに障ったが、別に気にするほどでもなかったから笑った。
「ありがとうございます。 『加奈お姉ちゃん』」
俺はこれでもかとお姉ちゃんを強調した。
あんまり強調すると嫌みになりかねないけどね。
 
「アップルティーとアイスコーヒーです」
店員が横からすっと横から飲み物をおいた。
さすが喫茶店の店員だなと思う。
『あぁ、ありがとうございます』
何故かハモって言ってしまった。
フフッ ここまで来るとレンくんが弟にしか思えないよ」
「だな。 何か最初はやな奴だって思ってたけどね」
「あれは… 機嫌が悪かったんだよ;;」
加奈が焦って弁解している様は弟に弱みを握られている姉のようだった。
なんか… 単純にかわいいな……
「! なににやにやしてるの…」
気がつくと、俺はいつの間にかニヤついていたらしい。
「あぁ、いや、何か加奈がかわいいなぁ……みたいな?」
「……もしかしてレンくん私に惚れた?」
加奈がニヤニヤしながら聞いてきた。
「もしかしたらそうかもね」
「えっ……」
加奈が驚いたようにこっちを向いていた。
意外にいじられやすいんだな……
 
「さぁ、そろそろランチが来るよ」
俺は流れを分断してまた別の話を話し始めた。
これ以上話すと大変な方向に話しが進みそうだ。
 
気がつくと、朝になっていた。
「ぅ…… は!?」
焦って起きた。
服は…もちろん着ていた。

いや、何もやってないから。
「ん…… レンくん…」
加奈が起きそうになった。
この状況はいくら何でも……

俺は急ぎながらも静かに部屋を出た。
「あら、そのまま寝ちゃったのね」
下では加奈の母がいた。
「えぇ、ちょっとシャワーを借りていいですか?」
「いいですよ。 1階の階段近くにあるわ」
階段近く洗面所を指さして教えてくれた。
俺はその洗面所に駆け込んだ。

駆け込んだ理由は特になかった。
「さて… シャワーでも浴びようか」
俺は服を脱いで風呂場に入った。
もちろん誰もいない。
というより、誰かいる方が少ないと思う。

「はぁ…」
ため息をつきながら軽くシャワーを浴びた。
俺はどうやらため息をよく吐くらしい。
しかし、加奈はなにを考えて抱いていたんだろう。
夢では俺は会えない兄だったのか?
それとも……

俺は加奈に気づかれないように下で待っていた。
別に気づかれてもいいのだが、何となくそうした。
「コーヒーでも飲む?」
加奈の母は右手にコーヒーの入ったカップを持って、俺に勧めてきた。
せっかくだし、貰うことにした。
「ありがとうございます」
俺はありがたくもらった。

「あれ? レンくんもう来てたんだ」
コーヒーをもらってすぐに加奈は来た。
「あぁ、今日は早く起きたから」
加奈より早く起きたから間違いではないよね?
「そうなんだ。 あれ?糸川さんは?」
よく見ると、まだ来ていなかった。
「やぁ、遅れちゃった」
糸川さんが店のドアを開けて入ってきた。
噂をすると意外にすぐ来るんだな。

「あぁ、糸川さん おはようございます」
加奈が頭を下げた。
俺も焦って頭を下げた。
「君たちは本当に兄弟みたいだね」
糸川さんが近くの席に座った。

「んじゃぁ、すぐに準備してきます」
加奈が準備をしにまた2階に行った。
「爛崎くん…… 昨日の加奈はどうだったかい?」
「え? あぁ、なんか姉みたいでしたよ。 『レンくんは弟なんだよ!!』みたいに」
気づくと微笑んでいた。
俺はどうやら加奈のことを姉として好いているらしいな。

「準備が出来ました!!」
加奈はすぐに準備して降りてきた。
しかし、俺を見てため息を吐いた。
「レンくん…… 少しはおしゃれ位しようよ」
おしゃれ? 昨日の格好のなにが悪い……
「そうだね。 今日の仕事はモデルだからそこで服を借りよう」
そして俺たちはあるビルに向かった。