「彩香ー! 誰待ってるの?」

彩香は話しかけられて相当驚いた。
振り返った顔は少し引きつっていて、笑そうになった。

「なんだ尚人か.... あんたを待っていたのよ」

え? なんで僕を?

「他のみんなは部活のメンバーで帰っちゃったの。で、彩香は一人寂しくここで待ってわけ」

「樹とかは?」

「もう帰ってたよ。 二人とも終わるのが早かったんでしょ?」

へー、まぁ僕の場合はすでに部員扱いだから仕方ないけどね(笑)

「早く帰ろう? 4月って言ってもまだ寒いからさ....」

「そうだね。 彩香は何部に行ってたの?」

俺たちは帰りながも会話を続けた。

「今日は演劇部を見に行ったよ。 久し振りに劇を見て泣いちゃった....」

「そんなに感動的だったの? どんなストーリーだったの?」

「恋愛ものだったよ。 でもあんなことになるなんて....」

彩香は劇を思い出して目に涙を蓄えていた。
そこまですごい劇だったのか!?

「また泣くなよ... 僕は吹奏楽部に行ってきたよ」

「また吹奏楽部に入るの!? あんたも懲りないね」

一気に涙が引いていた。
そんな驚くほどか...

「気がついたら音楽室にいただけだよ! しかも今日は普通に部員みたいだっただけだよ!」

仮入部生が普通に部活に参加って...よく考えるとすごいことやったな...

「へー、今回はどんな感じだったの?」

「結構本格的だったよ。 ハーモニーディレクターも使ってたし、部員はみんなちゃんと返事ができてるし」

「ハーモニーディレクター?」

「電子ピアノみたいなもんだよ。 音合わせとか楽になるから使うけど、そこまでうまくないところは設置が面倒だから使わないんだよ」

「そんなん彩香知らないよ」

「だと僕も思った。 そういえば、演劇部って演劇見ただけだったの?」

「違うよう。 演劇部ではその後、発声練習と演技指導があったよ。 彩香、明日から劇に出るんだって!」

「役は?」

「友人1だよ。 セリフも結構あって楽しい役だよ」

「そんな役やって大丈夫なのかよ。 ミスっても知らないぞ?」

「大丈夫だよ! 彩香、本番に強いから!」

こいつの本番に強いのは本当だった。

前に、学校で劇をした時も練習がひどかったのに、本番では異常な出来を出したことがある。

「本番強いのはわかってるけど、図に乗るなよ?」

「分かってるよー」

はぁ...こういう時ほど分かっていないから怖い。

「ねぇ、明日見にきてよ...」

「え? まぁ、いいけど?」

「彩香頑張るから...絶対だよ?」

「そんな強調しなくても分かってるよ。 明日絶対行けばいいんだろ?」

「そうそう、明日来なかったら焼きそばパンね!」

それだけ言って彩香は帰って行った。
もう空は真っ暗に染まっていて、その表面に宝石みたいな星が飾られていた。

「明日...か.....」