「……ん ここは…」
俺は上を向いて布団の中にいた。
「…やっと気がついたね…」
布団の横には憑神が居た。
「市さん! ウグッ……」
俺は市さんを探そうとした。
しかし、前進に痛みがきて動けなかった。
「まだ暴れないで。 貴方の体はボロボロななんだから」
なすがままに寝かされた。
俺って………
「それに、市さんはそこに寝てるよ」
反対側を向くと市さんが寝ていた。
さっきまであったことが嘘のように無垢な顔をしていた…
「市さん… 怨念に憑かれてる…」
「怨念に?」
「うん… しかもとても大きな怨念…… 多分戦で死んだ人の怨念だよ」
「何か方法はないの?」
「だめだよ。 もう市さんの魂と交わっていて怨念が消えたら市さんも死んじゃう…」
市さん… 俺はどうすれば…
「今なら逃げられるよ…」
ふと、憑神の口から言葉が漏れた。
もし逃げられるとしても、市さんは……
「いや、俺は逃げないよ。
市さんと約束したんだ今はここにいるって」
あれを約束と考えるかどうかは微妙だが、俺は約束であり、市さんの本音に思えた。
「そう…」
俺の言葉を聞き終わるとどこかに行ってしまった。
分かってくれるかなぁ……

しばらく俺は横を向いたり、上を向いて時間をつぶした。
市さんも、寝息が聞こえて生きているのは分かるが、まだ目覚めていないし……
「はぁ… どうなるんだろうな……」
罰を受ける前の罪人ってこんな気分なんだろうな……
「んー…… 上手いこと吹けませんね」
笛って難しいなぁ…
リコーダーもひどかったし………
「まだ慣れてないだけだよ。 指も分かってるようだし」
分かっているんじゃなく、探しただけです。
音は分かるからただひたすら指を探ったんですよ(笑)
「はぁ… ずいぶんと日が陰ってきましたね」
外を見ると日が綺麗に赤く陰ってきていた。
そろそろ夜になりそうだな………
「そうね。 …ねぇ、今日私の部屋に居てくれない?」
意外な言葉だった。
俺には気が強い人のように見えたが、意外にか弱いところもあるんだな。
「いいですよ。 でもいいんですか? こんな男と一緒で?」
まぁ、安心してもらいたいが…
いきなり今日会った奴をなぜ置くんだろう……
「いいよ… 慎一なら…」
あれ? この人本当に市さんか?
さっきと明らかに人が違う……
「ん?… どうかした?…」
「いえ… 別に…」
「そう…… もっと近くにきて…」
俺は市さんに近づいた。
なんか恐ろしい……
「…可愛いね。 食べちゃいたい……」
だんだん背中がぞくぞくしてきた……
やっぱり市さんじゃねえよ!!

「誰だよあんた!! 本当に市さんか!?」
俺は立ち上がって1mほど離れた。
「え? 市は市ダヨ……」
市さんの近くから黒い何かが出てきた。
一体なんだ!?
「ネェ……市ノコト…キライ?」
黒いなにが俺の体をつかんで持ち上げた。
すごい力で押しつぶされそうだ。
「市さん……私は貴方のことが……」
そのときふっと黒い何かが消えて俺は床に落ちた。
市さんも崩れ落ちるように倒れた。
あれは………
「どうされました!?」
部屋に勢いよく誰かが入ってきた。
助かったようだ……
俺はそのまま意識を失った………