ちょっと思いついたことを書いてみたいと思います。ただし、これはフィクションです。

『新九郎、奔る!』というおもしろいマンガがあります。
先日14巻を読んだのですが、思いがけず興味を惹かれたところがありました。

将軍足利義尚の最側近を務める伊勢新九郎の館に、奉公衆の末娘ぬいが、たびたび訪れ、家来たちが見事に手なずけられていく場面があります。ぬいは、饅頭タイムと称して、家来たち一人一人に、饅頭をふるまっていました。

様子を見ていた新九郎が家来たちに詰問します。
<(いい歳をした男たちが 行列して他家のご息女から菓子をもらって喜ぶなど… 

  恥ずかしいと思わぬのか!)>(22頁)
幼なじみでもある家来の太郎が口をもぐもぐさせながら言います。
<(これ本当に旨いんだ。)>(22頁)

聞けば、この饅頭は、足利義政の正室の日野富子からのいただき物であるとのことでした。

私は、数年前に、酒を断って以来、完全に甘党になってしまいました。甘いものと言っても、何と言ってもあんこが入ったものが好きなのです。
私は、これを読んで、さぞや旨い饅頭だろう、と思い、口の中につばきがでてきました。なにしろ、将軍夫人御用達なのです。それはそれは旨いものでしょう。本来は、よほど高位のものでない限り、口にできないもののはずなのです。家来たちが、手なずけられてしまっても…、無理もありません。その気持ちはよくわかります。

しかし、ふと思ったのです。足利義政の時代に、そもそも甘いものなんてあったのかどうか。

Wikipediaの[餡(あん)]の項目によれば、
<日本では当初は塩餡であったが、安土桃山時代になって甘い餡が用いられるように

 なったとも、砂糖が用いられるようになったのは江戸時代中期からで高貴な身分に

 限られていたとも言われる。>

ゆうきまさみ大先生は、饅頭=菓子=甘いもの、と考えて書いていたのではないか、という疑惑が生じます。

いや、塩で味付けした餡で作った饅頭であったとしても、それなりに旨かったでしょう。将軍夫人御用達の希少性からから考えても、家来たちを「手なずける」ことはできる、と言われれば、できない、とは言い切れません。

し・か・し、味についての、なにがしかの説明があればまだしも、私も含め読者は現代人です。私に限らないと思いますが、甘いものに特有の、独特な感覚からすると、甘いもの以外では、家来たちを「手なずける」ことには、無理があるように思います。

やはり、ゆうきまさみ大先生は、筆がすべったのでしょう。書く、ということは、やはり、こわいものです。

 

あんこの入った饅頭、お菓子というと、普通の和菓子の饅頭以外では、どら焼き、羊羹、水羊羹等がすぐ思い浮かびますが、どちらかというと、つぶあんが好きです。
あんこの入ったアイスキャンディーも大好きですね。 井村屋のあずきバーは大のお気に入りです。