どですかでん 武満徹曲集/鈴木大介 | もん・りいぶる21(21世紀のレビュー三昧)

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2001年 fontec

黒澤明の映画がNHK-BSで放映されることが多くなり、そんなきっかけで映画『どですかでん』も見直す機会があったのだが、ごく若い頃に見た極彩色の万華鏡の中に見る毒の結晶のようなこの映画のもうひとつの主役が音楽なのだなと、観ながら思ってしまった。

そして、その映画の音楽を思い出すと、鈴木大介の的確な手腕の冴えるこのアルバムを思い出して引っ張り出してみた。

曲目は以下の20曲

1) 小さな空(ラジオ・ドラマ『ガン・キング』)
2) 三月のうた(映画『最後の審判』) 
ギターのための12の歌
3) ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア
4) ミッシェル
5) ヘイ・ジュード
6) イエスタデイ
7) 失われた恋
8) 星の世界
9) シークレット・ラヴ
10) 早春賦
11) オーバー・ザ・レインボー
12) サマータイム
13) ロンドンデリーの歌
14) インターナショナル
15) 訓練と休息の音楽(映画『ホゼ・トレス』)
海へ
16) 夜
17) 白鯨
18) 鱈岬
19) どですかでん(映画『どですかでん』)
20) 青春群像(映画『写楽』)

7つの塊のうちの5つが映像に絡むこの曲集は、クラシックギターの音色が以下に映像喚起的かを思い知らせてくれる曲集であり、また、武満徹の果たして来たこの国の映像文化への貢献の大きさも知ることのできる曲集でもある。

基本的なメロディは平易でありながら、しっかりとした抑揚とダイナミズムが必ずあり、悲の裏の喜、痛の裏にある快がしっかりと音の成分に含ませてあるから、聞くものは映像と音楽との有機結合に酔わされるのだ。

このアルバムではもちろん映像はないのだが、その分を鈴木大介の音色が見事に補ってくれている。
特に映像音楽ではジャズ畑の渡辺香津美がものの見事に音を解け合わせて音に陰影だけではなく色彩的な陰影までを与え、ふっくらとした温かみを感じさせてくれる。

鈴木大介と渡辺香津美とのデュオは、以前生で聴く機会があったのだが、互いのジャンルの違いなどどこ吹く風と、「音楽」をともに奏でる喜びそのものといった演奏で、一方が陽であればもう一方は陰、そしてその入れ替わりが陰陽模様のように滑らかであったことを思い出す。

武満徹の音楽もまた、東洋に生まれたものの身体の中に必ず植え込まれているであろう陰陽模様を表しているのだから、この両者の奏でる音が最高のマッチングをすることは疑う余地もない。

7年前の盤だが、どうやら購入は可能であるようで、クラシックギターの音は単調だという先入観をお持ちの方がこれを聞けば、「否」という答えが響いてくるだろう。