窓を叩く風が耳打ちをした…
何となく聞き覚えのある声が微かに。
命日が近づくある日の出来事だった。
曾祖父はいつもその風を見守ってくれている。
綺麗に瑠璃色に染まった霧が包み込むように…
炎を柔らかくする。
ゆかりの地に自然とこころが馳せる。
貴方の手を繋ごうと周りが支えてくれていた。
宿した小さな炎がこの世界に無事に手を拡げるように…
あの地に霧雨が煙っていた。
暖冬には珍しく雪化粧をした山裾に自分の運命だと向かった。
これでもかと試練が与えられる。
曾祖父が何十年前歩いて登っていた山道にこころを馳せる。
歩いてみせる。
それが届くなら…
脚が硬直しだした時。
貴方の姿をした霧が脚を軽くしてくれた。
また風が背中を押してくれた。
曾祖父の残像があの御堂に続いていた。
木々から漏れた光が温かく包んでくれた時。
笑顔になった自分がいた。