050
影武者
カンヌでパルムドールを受賞した黒澤明の代表作の1本、影武者。先日の勝新太郎が降板した原因をドキメンタリーで流れていた。日本映画が好きな人は、この影武者を勝新太郎で見たかった人が多いと思う。ただ、このドキュメンタリーを見ると、2人の個性の強い天才が衝突するのは目に見えていたことではあると思う。たしかに中間に入れる人が必要だったのだろうと思う。私、個人の見解ですけど、その役者が製作に関わっているのであればある程度意見を言っては良いとは思うが、そうでなければ監督の指示通りに役者が演じるべきだと思う。
七人の侍をまだ見てない時に、この影武者を見たのですが、とにかくスケールが大きいのと、撮影がとてもうまいので合戦シーンでも、カメラを引いて遠くの方も合戦しているように見える。スピルバーグのプライベートライアンのオハマビーチのシーンなんか絶賛されるけど、カメラのピントの合っているとこには人がいるけど、数百メートル先はただの海岸であってそこしか戦闘が行われてない。そのスケール感がとても小さく見えてしまう。その点、黒澤監督は当時CGもない中、とてもうまく撮影している。時代劇って、どうしてもセットだなって見えてしまい白けてしまうけど、このへんのセットの作り込みも見事だと思う。なので、映画の世界にどっぷり入り込むことができる。こうして見るだけでも、黒澤組が如何にすごいかわかる。脚本からセットから撮影まで、これだけのプロが集め撮影していたと思うと、日本映画は世界に通用できた時代と思う。
先日の番組である人が勝新太郎が降板しなかったら日本映画は変わっていただろうというけどたしかにそう思う。それに勝新太郎は、この映画によって世界にも通用する俳優になれたかもと思う。けして仲代達矢が悪いとは思わないし、仲代達矢はあの演技が黒澤監督が納得できたから「乱」の主役にも抜擢されたと思う。「乱」なんてもう仲代達矢ありきで作ったようなもんだし。
黒澤映画を数本見ていると、ちょっとしたドラマを見ていると、たまに黒澤監督の映画をすごく勉強しているなと思う人がいる。例えば、NHKの大河ドラマの「龍馬伝」なんか見ていると、黒澤監督が使ったような構図でいくつも撮影されいる。これは監督の大友 啓史なのかカメラマンのかわからないけど、このドラマは本当に構図がうまかった。黒澤映画は、今見てもなんでもないありふれたシーンでもすごいなと思うことが何箇所もある。
カンヌは黒澤にパルムドールをあげたけど、アカデミー賞はあげなかった。「影武者」か「乱」で受賞させるべきだったと思う。なぜに世界の巨匠が模範とした監督が受賞していないのかと思う。
愚痴ってしまうけど「影武者」の第53回アカデミー賞は「普通の人々」でロバートレッドフォード。んーこれは少し納得かな。けど「乱」の第58回アカデミー賞はシドニーポラックの「愛と哀しみの果て」だし。