事案(ヒヤリングに間違いなければ)
報道によると、台北永康街にある“髙記”という台湾の小籠包などで有名な老舗は、その2階、3階が、用途制限(住宅区であり商業区でない)に違反した違法建築物であるとして、行政から、是正できなければ水道停止の勧告を受け、やむなく閉店した。この店は、40年の歴史があり、2階、3階の店舗としての使用についても、バリアフリーや消防など多額の投資を行ってきた。お客さんは、大変残念に思っている。
これが日本だったら、どんな争い方をするだろうか
1.水道の停止は、正当な理由がなく、許されない
水道契約の締結の申込みは、人々の生活や営業の維持に直結するため、正当な理由がなければ拒めない。このことは、水道契約の一方的解約にも、妥当すると解すべきだろう。現在使用している水道を、建築違反を理由にして、停止することは、直ちに正当な理由があるとは言えないだろう。それでもなお、行政が一方的に水道契約の解約をすることができるのは、判例(最決平成元年11月8日判時1328号16頁)によれば、給水をすることが公序良俗違反を助長するような特段の事情がある場合でなければ、許されない。水道を開通して、違法建築物を利用させることが公序良俗違反を助長するかどうかが、争点になろう。
2.水道の停止は、信義則に反して許されない
この老舗はすでに40年の歴史があり、2階、3階の増改築にあたっては、行政が便宜を供与してきたと考えられる。そうすると、行政は、この老舗に対して、2階、3階を適法に営業しうる地位があるとの公的見解を表明していたといえる。かかる見解に従って、この老舗は多額の費用を投資して営業を営んできたのに、手のひらを返したように、違法建築物にあたるから、水道を停止するということは、行政の信義則に反しないか。水道を停止することになれば、営業を継続することができず、著しく重大な不利益をこうむる。しかし、当初から違法建築物であることを認識し、忠告を受けていたにもかかわらず、あえて敢行したなどこの老舗の責めに帰すべき事由があれば、信義則に違反しないと解される。この点が争点になろう(最判昭和62年10月30日判時1262号91頁参照)。