○感想
幼時に中国の養父母に引き取られ、日本語を全く忘却し、中国人孫玉福として育てられた父親が、日本鬼子といわれる度、にわかに日本への帰属心が燃え上がり、日本への手紙を送り続けた。中国にいて中国人として生きていくという選択を敢えて放棄し、帰国へ奔走する父親の姿は、何がそうさせるのかを読者に考えさせられる。著者の留学中には、中国人から歴史問題について集中砲火を浴びせられる体験もした。両国の若者が歴史認識について、一方では忘却の連鎖に、他方では心の問題として生き続けていることに、私たちがどう向き合うかが問われている。日本人残留孤児の存在は、日本の社会に今尚影を潜めている。一連の裁判闘争と政治的決着の過程から、戦争損害の一言では解消されない、現実の生活及び孤児たちの複雑なアイデンティティーの問題は、今後も残る。
○備考
タイトル『あの戦争から遠く離れて』
副題「私につながる歴史をたどる旅」
情報センター出版局 2007年9月10日
2009年『遥かなる絆』という題で、NHKがドラマ化



