南浦洞のホテルに着いた2020年1月18日(土)19時。とりあえず荷物を置いて、夜ご飯を食べに出かけます。
毎度の釜山滞在でタワーヒルホテルに泊まっているのは、南浦洞のロッテ至近という利便性の良さと、すぐ近くの四つ角にある両替屋さんのレートがいいから。
このあたりに数軒両替店があります。
タクシー料金は前回の旅の余りで払っていたので、ここで日本円を両替しました。私は1万円。
両親を見ると3万円を両替しそうになっていたので慌てて止める。釜山2泊3日ならお土産込みで2人2万円で十分すぎる!
両親は初の韓国。見るものすべてが珍しいようですが、私は土曜の南浦洞なのにこんなに少ない人出なのが気になっています。
今思えば、西暦の正月と旧暦の正月のちょうど中間だったからかなぁとか、コロナのニュースが出始めたくらいだったからかなぁとか思いますが、混んでいない南浦洞の夜は初めてでした。
せっかくだから夜市を経由して、目指すレストランに向かいます。
この雑多な雰囲気と日本ではあり得ない価格で商品を売っている路面店に気もそぞろの両親。
片や下調べをしていたレストランに辿り着くべくGoogle Mapとにらめっこのわたし。
あんまり道は迷わないほうですが、さすがに高齢の両親連れだと、絶対に道を間違えられない(余計に歩かせられない)と地図ばかり見ていました。
迷わずに辿り着いた「クンチッ」。朝食の量が多い。
韓国では「クンチッ」もしくは「クンチプ」と表記するようです。場所はここ。
「クンチッ」は韓国語で直訳すると「大きな家」、日本で言うなら「本家」みたいな意味だそうです。詳しくは釜山ナビをどうぞ。
1階はこんな雰囲気。入店した頃は満席だったので、退店するタイミングでの撮影です。
一食目にここを選んだのは、韓国らしい「韓定食(ハンジョンシッ)」を味わえるから。
オーダーして直後に……
定食についてくるパンチャン(おかず)がずらっとテーブルに並べられました。
チヂミにチャプチェ、キムチ、トッポッキ、カンジャンケジャンの足、そのほか和え物やら炒め物やら。
両親にとっては物珍しい韓定食のスタイル。私にとっても、こんなにパンチャンが並べられるお店は初めてです。
「パンチャンはおかわり自由だよ」と伝えたけれども、完食はしてもおかわりをするまでには至りませんでした。
この後にボリューミーなメインもきているので、70代&アラフォーの胃袋は限界。でも、これだけのパンチャン(父と私にとっては酒の肴)があるのは、とても楽しかったようでした。
せっかくだからとドンドンジュ(韓国風どぶろく、約1000円)を頼んだら、母のほうに置かれてしまい、酒は飲めないのに酒飲みを世話し続ける母。
メインが揃うと、こんなにも皿ばかりのテーブルに。はー、幸せ♡
頼んだのはカンジャンケジャン定食(約3200円)と、桑黄石釜飯定食(約2200円)と、クンチッ定食(約1300円)。
カンジャンケジャンだけでなく、石釜のプルコギはついてくるわ、「これもパンチャンなの?」と驚く白身魚のフライはついてくるわで食べきれないくらい盛りだくさんでした。
チャプチェとプルコギと白身魚のフライは日本人になじみのある味付けで、両親に好評。キムチは古漬けかと思うくらいの酸味がありました。
忘れられないのがカンジャンケジャン(蟹の醤油漬け)。もう残骸に近い。
これが、本当においしかった。生の蟹がまったりとクリーミーで甘い。醤油は蟹の身の繊細な味をまったく邪魔しない品の良さ。そのままでもおいしいけれど……
シメのごはんがたまらないんだ。
石釜のご飯にカンジャンケジャンの身と肝、卵黄、のり、ネギを混ぜ、カンジャンケジャンのタレをかけたらもう、絶品。
なんやこれ。蟹の旨味ってこんなにふくよかだったのか。濃厚な卵黄とごま油のきいた、韓国海苔がまたよく合って……思い出しただけでもヨダレが滝。
夢中になって食べてしまいました。会話はほとんどなし。
直前に友達が釜山に行った時は牡蠣にあたった……と聞いて、生ものには少しセンシティブになっていたのだけれど。
この味わいを知ったら箸を止められませんでした。おなかは全員大丈夫です。
(余談ですが、この友人たちは地元の食堂に入ったら、「よくきた!よくきた!」と他のテーブルから1皿ずつくらい料理をもらってしまい、気持ちがありがたくて残せず、全部食べてたらたまたまあたったそうです)
釜山にまた行きたい理由の一つが、「カンジャンケジャン」になった瞬間でした。いや~これを食べないと帰れない。世界にはおいしい料理がたくさんあるなぁ。
ちなみに、地元・福岡の韓国食材店でカンジャンケジャンを買うと、この量の蟹だけで3000円以上します。高い!
「クンチッ」の定食は量が多くて、追加オーダーはなし。お酒はドンドンジュだけで十分でした。お会計は3人でサービス料込みで8000円ほど。9000円にはいかないくらい。
スタッフの方々も感じが良く、初めての韓国での食事には良いのではないかと。
あまりにもおなかがパンパンなので、腹ごなしに釜山の夜といえばのPIFF広場まで行きました。
いろいろ気にしながら来た韓国が、ホテルでもレストランでもPIFF広場でも日本人ウエルカムな雰囲気なのでニコニコです。良かった。
PIFF広場は釜山映画祭のメインの会場です。だから……
路上を見ると映画監督や俳優のサインと手形がたくさんある。今村昌平監督の手形とサインに……
映画監督・北野武さんの手形とサインもありました。
せっかくなので、PIFF広場の名物、ホットックをデザートに購入します。
PIFF広場には有名なホットックの店があるのですが、どこだったかな……。わからないのですごく愛想のいいおばちゃんの店に立ち寄る。
油(マーガリン?)でこんがりと揚げられた生地に、黒砂糖とシナモン、さまざまなナッツやかぼちゃの種をたっぷり入れたのが釜山のホットック。
これが大好きで。
ソウルでホットックを買ったら、黒砂糖とシナモン、ピーナッツのみでがっかりしました。こんなにも具沢山なのは釜山ならではのようです。
ホテルまでの道を歩いていたら、父が「音楽がうるさいね」と呟きます。
父は右耳がほとんど聞こえません。
聴力は左耳だけに頼っているのですが、その左耳だけで「うるさい」と思えるほど、各路面店が爆音で店内BGMをかけています。
私はもう慣れてしまっていましたが、確かに、韓国の繁華街はどこも音楽がうるさい。22時を過ぎていても。
むしろ、22時過ぎからが本番、というかのごとく音楽があふれている。それも韓国らしいなと思います。
あとから「看板もうるさい」と言っていました。確かに。
そしてホテル近くのコンビニへ。
父はレストランでも酒を飲むけれど、1日の終わりには部屋でのんびり酒を飲みたいタイプなので、帰りに酒を買うことにしたのです。
その韓国資本のコンビニの店員の対応が最悪でね……。
私は買い物がないから「釜山の焼酎ならC1だよ」とビンだけ選んで、外でぼんやり待っていたら、すんごいプリプリした両親と再会しました。
そりゃ、えらいことだったね。まぁ、韓国のスタンダードと言える。
韓国は地域ごとに売っている焼酎(ソジュ)が違い、釜山はC1だそうです。
最近、韓国の若者はソジュにカラマンシー(韓国の柑橘)を入れて飲むのが流行っているそうで、私はソジュのカラマンシー割り、父はロックで飲んでいました。
今日は早くも、韓国らしさのオンパレード。
あと1日楽しもうね。
そう言って、早寝の両親を見届けて私は一人、飲み続けましたとさ。