新橋 かま田
開店とほぼ同時に到着。予約してあるとのことだったが、なぜか行列ができていた。カウンターに座るためだろうか。ほどなくテーブル席に案内される。
全席が「おまかせおでんコース」なので、順番に料理が運ばれてくる。
前菜
さしみ
正直なところ、おでん屋の前菜や刺身を食べたいとは思わないが、食べてみると小料理屋のように美味しく、おでんへの期待が膨らむ。
一品ごとに最適な出汁を使うという発想は、言われてみればなるほどと思うが、実装されている店は初めてなので楽しみだ。
三陸わかめ、はんぺん、さつま揚げ
薄味で優しい味。鰹が効いているが、グルタミン酸系はわかめから出る出汁を使っている感じかな。はんぺんが異様に美味しい。出汁を最適化している効果がいきなり。
大根、こんにゃく、ちくわ
こちらも薄味の出汁だが、今度はちゃんと昆布も効いている。
あつあげ、えのき
濃いめ、甘い。なるほど厚揚げは今までの練り物と比べ、中身が詰まっていて出汁が浸み込み難いので、濃いめにしてバランスを取っているのか。
徐々に考え方が分かってきた気がする。
さがみっこ半熟玉子
濃いめだが甘くない出汁。黄身の甘みで全体としてバランスが取れている。
イノシン酸、グルタミン酸の旨み、味醂や砂糖の甘み、そして醤油味。おでん出汁の基本要素はこの4つだが、そのバランスと濃さを適切に合わせているようだ。具材にいずれかの要素が含まれていれば、出汁はそれと同類の要素を控える、いわば「引き算」方式の出汁だ。あとは浸み込みのし易さで濃さを変化させる。
分かってしまえば単純だが、素晴らしいアプローチだと思う。おでん鍋にも小部屋に仕切られたものがあるのでそれを使うか、複数の鍋を使うか、実装するのもさほど難しいことではない。
凄いなと感動しきり。
つみれ
鰯のイノシン酸を頼りに、鰹は控えめに。軟骨は鶏の軟骨かな。
もちきんちゃく
厚揚げとえのきの出汁に近い。コースはここまでだが、折角なのでそれ以外の具も全て頼んでみる。
出汁巻き玉子
甘い出汁巻き玉子なので甘さ控えめ、浸透しやすいので薄味の出汁。なるほど。
たまねぎ天、さつま揚げ、ごぼう天
おでん出汁に少量のご飯と豆腐。〆の一品。
数えてみると、少なくとも5種類。薄味が鰹出汁、昆布出汁、鰹&昆布出汁、濃いめが鰹&昆布出汁の甘めと辛め。これ以上あるかもしれないが、こうして並べてみると理に適っている。
出汁とは何か?をあらためて考える機会となった。旨みの教材としても使える気がする。もちろんおでんは最高に美味しかった。