「ゆきちゃん・・・・・・」
杏梨は雪哉の胸に顔を埋めた。
今まで恐怖におびえていた心がだんだんと温かくなっていく。
「ゆきちゃん、もういい・・・・・・ありがとう」
雪哉の胸から顔をあげて見つめると、自分から雪哉の唇にキスをした。
あんなに悩んでいたなんて知らなかった・・・・・・。
ずっと、ゆきちゃんに支えられてきていた。
「わたし、もう大丈夫だから」
「杏梨 愛している これからどんな事があっても愛し続けるよ」
「わたしも愛してる ずっと側にいてね・・・・・・」
いたわるようなキスが額に落とされる。
そして震える目蓋、頬へキスを落としながら唇へ。
「・・・・・・抱いて」
呟くように言うと起き上がりパジャマのボタンを外し始めた。
「やめるんだ 今日はショックが大きかったんだ もう寝た方が良い」
杏梨の手に触れ、ボタンを外すのを止めようとした。
「ぃや、ぉ願い・・・・・・」
あの男の手と唇の感触を忘れさせて欲しかった。
「杏梨・・・・・・」
雪哉は杏梨のパジャマに手をかけた。
* * * * * *
雪哉の腕がシーツの上を彷徨う。
杏梨?
ハッとしてまたたく間に目が醒めて身体を起こす。
ベッドには自分ひとりだった。
「杏梨!?」
雪哉は心配になり寝室を出た。
「ゆきちゃん!おはよう~」
ダイニングテーブルに朝食の用意をしていた杏梨は顔を上げてにっこり笑った。
「・・・・・・」
頭に手をやり雪哉はため息を吐いた。
「どうしたの?ゆきちゃん?」
黙ったまま雪哉は杏梨に近づくとぎゅっと抱きしめた。
「ゆ、ゆきちゃん?どうしたの?」
痛いくらいに抱きしめられて驚く。
「・・・・・・いなくなったかと思った」
杏梨は笑って雪哉の頬にキスをする。
「ゆきちゃんの所以外に行く所なんてないよ?」
続く